2026.07.22
7月7日(現地時間6日)ロサンゼルス・クリッパーズがフリーエージェント(FA)になっていた八村塁と契約したことを発表した。ESPNによると2年総額2800万ドル(約45億円)。2年目はチームに選択権がある。10日には、八村の背番号がロサンゼルス・レイカーズ時と同じ28番であることが、チームのSNSアカウントで公表された。
New threads, same number for Rui!
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— LA Clippers (@LAClippers) July 9, 2026
クリッパーズは、現時点で来シーズンへ向けた選手編成を終えておらず、カワイ・レナードとトロント・ラプターズのブランドン・イングラム、グレイディ・ディックなどを含めたトレードも保留となっているが、昨シーズン開幕時のNBA最高齢チーム(ESPNなどの情報より)から若手チームへと変化している。
2シーズン前となる2024-25シーズンには50勝、3シーズン前となる2025-26シーズンには51勝を挙げている。しかし強敵がそろうウェスタン・カンファレンスを制することとはできなかった。
2年前にポール・ジョージ(ボストン・セルティックス)がFAでチームを離れ、昨シーズン途中ジェームズ・ハーデンがダリアス・ガーランドらとの交換トレードでクリーブランド・キャバリアーズに移籍した。この夏、レナードの放出も試みているクリッパーズは「再建期に入った」と言える。
だが、ガーランドは優勝候補の1チームであったキャバリアーズから加入したとき、「クリッパーズという組織の基準を少し引き上げたいと心から思っているし、ベンチにいるみんなも同じ思いを抱いている」と話していた。もちろんそのときには、レナードも、有能なセンターとして頭角を現していたイビツァ・ズバッツ(のちにベネディクト・マサリンなどとの交換でコービー・ブラウンとともにインディアナ・ペイサーズにトレードされた)も在籍していたが、かつて「NBAで一番のポイントガードになりたいし、なれると思う」と話していたガーランドにとって、メンバーが変わったからといってその気持ちが変わるはずはなく、むしろクリッパーズの基準をもっと引き上げたいと思っているのではないだろうか。

クリッパーズの司令塔、ガーランド [写真]=Getty Images
八村は昨シーズン、自らのリーダーシップについて聞かれ、このように答えた。「(リーダー的存在の多いレイカーズにおいて)僕はリーダーではない」と断言していたが、クリッパーズでリーダーシップを確立させることで、NBAのキャリアを次のステップへと押し上げる契機となるだろう。
すぐに優勝に届くチームではないかもしれない。だが、クリッパーズでのフレッシュスタートは、八村をさらに飛躍させるチャンスに満ちている。
自らの苗字にちなんで「8」という数字を大切にする八村の「8年目」のシーズンのホームになるインテュイット・ドームは、ロサンゼルス空港に続く「センチュリー大通り」から一本道で約6キロ。コートを包み込んでしまうほどの巨大なLEDスクリーン“4K ヘイローボード”が圧巻で、ハイテクノロジーを駆使したアリーナとして知られている。
選手が座るコートの椅子も温度調節機能、マッサージ機能があり、上下に高さが調節できるようにもなっており、足の長い選手が快適に座れる。レイカーズでは、1?2個しかない分厚いクッションを数選手で取り合っており、八村もレブロン・ジェームズがベンチに戻るとお気に入りのクッションを譲っていたが、これからは自由に自らの好む高さにできる。
レイカーズのファンは華やかで、「ショー」を見に来るかのように試合観戦に訪れる。チケット代も高く、セレブや富裕層が集うレイカーズの試合を観戦することは、大きなステータスだ。一方、クリッパーズはレイカーズに比べるとメディアの数も少なく、それに伴って記事も乏しいし全米中継もほとんどない。それゆえ、過去15年で12度プレーオフ進出、プレーオフを逃した3度のうち2度はプレーイン・トーナメントを戦っているにも関わらず、チームのことを詳しく知ることは難しい。
そんななか、クリッパーズファンは、自ら試合を観戦し、自ら会場に足を運んで見ることでクリッパーズを知り、応援する。情報が少ないだけに、ファンにとっては「自分は知っている」と自負できるチームなのだ。そういったファンたちが、まるで草の根活動のように一体となって応援するのが、クリッパーズ。インテュイット・ドームには、「ザ・ウォール」というクリッパーズファンが熱い応援を繰り広げる場所がある。みんなで声を合わせて応援する姿に高貴なレイカーズとは、また違った良さを感じる。
クリッパーズは、今年のドラフトで全体の5位という高い指名権を得てイリノイ大学のキートン・ウォグラーを指名した。そしてその翌日の指名会見では、「ザ・ウォール」の中心となる「ザ・スウェル」のメンバーを集めて、ウォグラーを歓迎する応援を披露させた。
レイカーズの陰で、独自の地位を模索してきたクリッパーズにとって、これらのファンは、「誇り高き存在」なのである。
余談になるが、19日に幕を閉じたサマーリーグでクリッパーズの若手たちは、それは楽しそうで、サマーリーグチームながらすっかりケミストリーができあがっているという感じだった。ベンチにいる誰もがチームメートを応援し、勝ち試合のあと、オクラホマシティ・サンダーさながら、テレビのインタビューを受けているチームメートの頭にタオルを重ねるなど、笑顔が溢れていた。こういった若手が元気いっぱいのなかで、八村がどのような一面を見せるのか、今から楽しみでならない。
昨秋、米大リーグ、ロサンゼルス・ドジャースのオーナー、マーク・ウォルター氏に売却されたレイカーズは、フロントオフィスの役職が増えるなど強豪チームを目指して新たな一歩を踏んだ。一方、クリッパーズは、オーナーのスティーブ・バルマー氏が、クリッパーズの試合に来るのが楽しいと思える空間をインテュイット・ドームで提供し続けている。もちろんそのなかには、これまで同様、強いチームへの構築も含まれる。

「ザ・ウォール」でマイクを持つパルマ―オーナー。“4K ヘイローボードも見える [写真]=Getty Images
文=山脇明子
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