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「14位」は変わらずも、変わり始めた日本…U17男子W杯で見えた育成スピードを上げるカギは

世界トップクラスの強豪と対峙したU17男子日本代表[写真]=fiba.basketball
スポーツライター

 6月27日〜7月5日にトルコ・イスタンブールで開催された「FIBA U17バスケットボールワールドカップ2026」。U17男子日本代表(FIBAボーイズランキング24位)は1勝6敗、16カ国中14位で大会を終えた。

 8連覇を達成したアメリカ(同1位)をはじめ、フランス(同4位)、イタリア(同3位)、リトアニア(同6位)といった強豪国に挑み、敗れた6試合はいずれも20点差以上。高さ、スピード、フィジカル、そして40分間戦い続ける遂行力。あらゆる面で世界との差を突き付けられた。

 それでも、この結果は決して悲観すべきものではない。むしろ価値があったのは、日本の未来を担う選手たちが世界基準を肌で感じ、自分たちの現在地を知ったことだ。

 2大会連続でオリンピックに出場するなど、日本バスケットボールが着実に前進している一方で、世界もまた激しい競争のなかで進化を加速させている。強豪国ほど育成スピードも速い。日本がその差を縮めるためには、育成環境の質をどう向上させていくかが問われている。

■徐々に浸透した「One More」の発想

1勝6敗の14位で大会を終えた日本[写真]=fiba.basketball


 2010年に創設され、2年に一度開催されるU17ワールドカップ。日本の出場は2014年、2022年に続いて3回目で、いずれも14位だった。

 順位は変わらない。それでも、2014年大会でヘッドコーチを務め、アンダーカテゴリー男子代表強化部会長として今大会に帯同した井手口孝氏(福岡第一高校監督)は「12年前は世界大会に出ただけで『おめでとう』という時代でした。でも今は、トップの国にどう勝つかを考えられるところまで来た。それはすごい進歩です」と変化を語る。

 それは、U17ワールドカップで12年ぶりに対戦したアメリカ戦にも表れていた。2014年大会は38-122で敗れ、25得点を挙げた八村塁以外は0〜2得点。一方、今大会も66-128で大敗したものの、佐藤久遠の22得点を筆頭に、白谷柱誠ジャック、今野瑛心、イヘツグットラックチネドゥの4人が二桁得点を記録した。得点源が一人に偏らなかったことは、育成が前進している証しだろう。

 高さやフィジカルで勝る相手にスイッチされ、ズレを作るのが難しく、最後は一対一を強いられる場面が多かった。それでもファストブレイクから21点を積み上げ、ペイントアタックや3ポイントシュートで積極的に攻め続けた。

アメリカ戦で最多22得点を挙げた佐藤[写真]=fiba.basketball


 今大会、日本が目指したのは「80〜90点を取るオフェンス」だった。高さで劣る日本が世界と渡り合うため、速い展開の中でペイントアタックし、相手ディフェンスを収縮させ、そこからさらにパスや再アタックを仕掛ける。チームは「One More」の発想を掲げ、追求していった。

 その形が表れた一例が、第5戦のニュージーランド戦である。83-104で敗れたものの、大会を通じて初めて80点台に到達。片峯聡太ヘッドコーチは「前半のペイントタッチは各クオーターで19回と22回。これまでの試合は11〜13回でした。ドリフトやドラッグで人もボールも動くようになってきました」と手応えを口にした。

 世界の強度を相手に40分間続けるまでには至らなかったが、日本が目指すべきオフェンスの方向性は、確かに形になり始めていた印象だ。スピードやボールムーブを軸にしたスタイルは、近年、国際舞台で前進を見せている最上位カテゴリーの日本代表に通じる戦い方であり、方向性に間違いはないだろう。

■組織力向上に必要な「個」の引力強化

日本を指揮する片峯ヘッドコーチ[写真]=fiba.basketball


 もちろんリバウンド争いやディフェンスの収縮、クローズアウトの速度など、依然として課題は多い。ただ、チームとして目指すべき戦い方が見え始めた今、育成面でより注力すべきは、「個の力」をどう底上げするかにある。

 戦術理解と状況判断に優れたリトアニアとの一戦後、片峯ヘッドコーチは日本の理想像について、「リトアニアのような遂行力は、日本が目指すべき部分の一つです。それに加え、アメリカのような一対一の力を磨ければ、両方の要素を兼ね備えたバスケットができる。白谷のような個も育つアンダーカテゴリーにしていきたいです」と展望した。

 実際、引力のある選手が増えていかなければ、組織力の向上が頭打ちになるのは目に見えている。全試合で100点以上を挙げて勝利したアメリカは、1試合平均34.1アシストで断トツ。圧倒的な個の力で複数のディフェンダーを引き寄せ、パスをさばき、次々とフリーのシュートを演出していた。

 個の力で言うと、日本はシュート力の向上が優先的な課題だろう。64-93で敗れた初戦のイタリア戦では、キックアウトや素早いトランジションでいい形は作れていたものの、3ポイントシュートの成功は31本中4本(成功率12.9パーセント)のみ。片峯ヘッドコーチは「大きな舞台で勝つためにはシュート精度が必要です」と語り、決定力強化の必要性を口にしていた。

■「日常の意識」と「W杯に出続けること」の大切さ

大会5位となる平均23.9得点を挙げた白谷[写真]=fiba.basketball


 シュート力に加え、ハンドリングやフィジカル、体の当て方など、高さや身体能力で劣る日本の選手が強豪国と伍して戦うために強化すべき要素は多い。しかし、国内で同世代と戦うだけでは、世界基準を日常的に体感することは難しい。だからこそ、持ち帰った経験をどう還元するかが重要になる。

 白谷は「コーチ陣、そして選手12人には、日本でプレーする選手たちに世界基準を伝える責任があると思います。同年代や下の年代に、自分が経験したことをプレーと言葉で伝えていきたいです」とコメント。宮里俊佑も「『このプレーは世界に通用するのか』『強豪国の選手はどうプレーしていたか』を日常から意識することが成長につながると思います」と、求めるレベルを引き上げる決意を示した。

 肌で感じた世界基準を身体と脳に刻み、それを日々の標準に変える。意識を変えるきっかけを増やすためにも、井手口氏は育成スピードを上げながら、「日本は世代別のワールドカップに出続けないといけません」と強調する。U17とU19ワールドカップは毎年交互に開催され、継続して出場できれば、世代を超えて高いスタンダードが共有されていく。

 今大会にはNBAやNCAA、欧州クラブなどから140人以上のスカウトが来場した。大会関係者によると、白谷や佐藤らの名前もスカウトの間で挙がっていたという。個人としてより高いステージへの扉が開かれる可能性もある場なのだ。

 一方で、昨年の「FIBA U16アジアカップ2025」では、韓国やイラン、フィリピンなどはU17ワールドカップの出場権を逃した。アジアのライバルに経験値で差をつける意味でも、出場し続ける価値は極めて大きい。

■指導者も刺激、育成環境の改善に

中学卒業後からアメリカ留学している越[写真]=fiba.basketball


 大きな刺激を受けたのは選手だけではない。指導者も同様だ。最終戦後、片峯ヘッドコーチは「国内でやっているレベルだけでは、世界でおもちゃにされるだけ。この経験を発信し、自分にも常に言い聞かせながら、コーチングの質を高めていきたいです」と決意を語った。

 日本バスケットボール協会が発表した大会後コメントでは、「今後、U12〜U18までの育成を計画的にやっていく必要性を感じました」とも提言している。指導者らには、育成環境をどうアップデートしていくかが問われている。

 世界では190〜200センチ台でもスキルが高く、ガードを担う選手も多い。日本もポジションレスの発想で、高身長だとしても早い段階からドリブルやパス、シュートといった基礎スキルを徹底させることは必要だろう。白谷のように、世代で突出した選手は上位カテゴリーの代表合宿やプロを含めた試合を経験させる機会も増やしたいところだ。

 近年は大学進学後だけでなく、高校年代から海外挑戦する選手も増え始めた。今大会のメンバーだった越圭司はアメリカ、直前合宿に招集された竹内楓翔はセルビアの高校に通う。

 ポジションレス育成、飛び級、海外挑戦。日本全体として育成スピードを上げていくためにも、選手たちの未来を見据えた柔軟な後押しができる環境づくりが求められている。

 8月には、今度はインド・アーメダバードで開催される「FIBA U18アジアカップ2026」に出場する若き日本代表。国際大会から持ち帰った教訓を育成環境の改善につなげ、次の世代が、またアジアや世界に挑んでいく。その循環を繰り返し、着実に全体のレベルを底上げしていくことで、最上位カテゴリーの日本代表の強化につなげたい。

文=長嶺真輝

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