2026.06.13
「Kuon!」
小学校低学年くらいだっただろうか。アメリカ戦後、関係者通路にあるミックスゾーンを通ろうとした佐藤久遠を、外国人の男の子が呼び止めた。サインや記念撮影を求めたのだろう。大会スタッフに制止されて残念そうに客席へ戻って行ったが、180センチという小柄な佐藤が見せたパフォーマンスに感化された様子だった。
トルコ・イスタンブールで開催中の「FIBA U17バスケットボールワールドカップ2026」。U17男子日本代表は6月28日、グループリーグ第2戦で大会7連覇中のアメリカに挑んだ。結果は66-128。地力の差を突きつけられたが、佐藤はチームハイの22得点に加え、4リバウンド4アシストと強烈な存在感を放った。
サイズ差を恐れずに何度もペイントアタックを仕掛け、王者を相手に一歩も引かなかった。

[写真]=fiba.basketball
第1クォーター終盤。鋭いドライブで中央を切り裂いてレイアップシュートを決めると、次のポゼッションでは205センチの相手に体をぶつけながらペイントアタックし、バスケットカウントワンスローを獲得した。その後も相手ディフェンスがアタックを警戒して引いて守っていると見るや、ミドルシュートを沈めるなど、クイックネスを生かして得点を量産した。
狙ったのはサイズ差のハンディを補う低空戦だ。「高さや身体能力では絶対にかなわない部分があるので、別の部分で勝とうという気持ちで挑みました。アメリカの選手たちは背が大きい相手としか戦っていないので、自分みたいな背が低い相手には慣れていない。足元を狙って、どんどんドライブしていこうと思っていました」と振り返る。
とはいえ、自身より20〜30センチほども大きい選手と接触しながらレイアップシュートを決めきるのは容易ではない。何度もアタックしながら、考え続けた。「ブロックが飛んでくるのは分かっていたので、どう交わすか、どう体を当てるかを考えながらプレーしていました。横並びの時に体を当てることで、相手も飛ぶタイミングが分からなくなると思うので、意識していました」

[写真]=fiba.basketball
チーム全体としても、同じ思いがあった。大会前にFIBAが発表した戦力分析の「パワーランキング」では、日本は出場16カ国のうち最下位。佐藤は「相当悔しいランキングだった」と明かす。その悔しさが、チーム全体の反骨心につながった。「自分たちは常にアンダードッグ。噛みついてでも食らいついてやろうというのが、みんなの共通認識であり、マインドです」と語る。
ただ、62点差という大敗は、世界との距離がまだまだ遠いことを見せつけられたのも事実だ。佐藤自身もアメリカ相手の22得点は自信になった一方で、満足感はないに等しい。「ドライブをした後のプレー選択や、ドライブをする場面としない場面の判断は良くなかった。そこは本当に課題です」と自戒を込める。
夢は「A代表に入り、世界の強豪を倒すこと」。逃げずに、コート上で挑戦し続けたからこそ体感できた世界との距離感は、佐藤の視座を高め、成長を加速させるはずだ。
文=長嶺真輝
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