2025.10.06
日本バスケットボールの次世代を担う若い力が、2大会ぶりに世界への扉をこじ開けた。
8月31日〜9月7日にモンゴル・ウランバートルで開かれた「FIBA U16アジアカップ2025」。U16男子日本代表(FIBAボーイズランキング26位)は4位に入り、ベスト4のチームに付与される「FIBA U17ワールドカップ2026」(来年トルコ開催)の出場権を獲得した。U17ワールドカップへの出場は2014年、2022年に続いて3度目となる。
最大の目標を達成した一方で、格上と対戦した準決勝以降は世界レベルと戦う上での課題も見えた。大会を総括する。
取材・文=長嶺真輝

(左から)宮里、越、高橋[写真]=fiba.basketball
共通するのは、自分から率先してよく喋ること。「ノースリー!」「我慢我慢!」「ボックスアウト頑張ろう!」など、時には手を叩きながら味方に声を掛け、司令塔としてチームの共通認識の維持に努めた。
この3人を中心にチーム内のコミュニケーションを活発にしたことが大きな勝因になったのが、83-72で勝利した準々決勝のチャイニーズ・タイペイ代表戦だ。ピックを起点にハンドラーがプルアップの3ポイントシュートを多投する相手に対して「スイッチ!」「前出ろ!」と小まめに意思疎通を図って距離感やマークマンが入れ替わるタイミングを調整していき、後半に決められた3ポイントシュートは2本のみ。7試合中3試合で100点以上を記録したチャイニーズ・タイペイにとって、72点は大会最少得点だった。

司令塔として存在感を示した越[写真]=fiba.basketball
これから高校進学でアメリカへ渡る越。大会最終日の記者会見では、NBAで活躍する河村勇輝についてどう感じているかを問われ、「今は憧れている状態ですが、これからアメリカに渡り、もっとバスケットを学んで、いずれは河村選手を超えられるプレーヤーになりたいです」と力強い決意を述べた。大柄な選手が多い国際大会でも持ち前の高い得点力を発揮できたことは、渡米を前に自信につながったはずだ。
一方、ガード陣のターンオーバーの多さは大きな課題として残った。アレハンドロ・マルチネスヘッドコーチ(HC)は大会中に「ドリブルを突き過ぎてミスが多いので、もっと顔を上げて、パスができる時はパスをするのが一番いい」と指摘し、宮里も準々決勝の後に「ドライブをしてオープンな選手にパスを出したり、ファウルをもらえたりした部分は良かったのですが、まだコントロールできていないところが多いです」と反省を口にしていた。より高いレベルの国と対峙するU17ワールドカップに向け、ガード陣の状況判断や視野の広さはさらに磨いていきたいポイントだ。

大会終盤は欠場した白谷[写真]=fiba.basketball
ただ、課題も残った。世界への挑戦権がかかった準々決勝は前半でファウルが三つとかさみ、第4クォーターの終了間際に退場。16得点、14リバウンドと要所で存在感は見せたが、他の主力級が30分以上コートに立った中、出場時間は22分55秒と伸び悩んだ。
マルチネスHCは「必要のないファウルもありました。試合に集中していない証拠です。チームにとってすごく大事な選手ということを、彼自身が理解しないといけません」と指摘。「彼にとって学びになったと思います」とも。厳しい言葉は、期待の大きさの表れだろう。

貴重な経験を積んだ16歳の有望株[写真]=fiba.basketball
飛び級でのU18日本代表選出、A代表候補入りを果たし、逸材であることは間違いない。それでも、まだ16歳の高校1年生。大舞台での悔しい経験は、さらなる成長の糧になるはずだ。

違いを見せつけられたオーストラリア戦…常見はFG7本全て失敗に終わった[写真]=fiba.basketball
日本代表でただ一人の身長2メートル超の選手だった202センチの常見寛章(国際アート&デザイン大学高等課程)は、23分39秒の出場で得点、リバウンドともにゼロ。「日本ではあまり体負けしませんが、オーストラリアはみんな大きくて、走れて、飛べる。レベルの違いを感じました」と、自身初の国際大会でいきなり世界トップクラスの力を体感した。「本当にいい経験になりました。もっと体を強くして、スピードを上げていきたいです」と今後を見据えた。
3位決定戦で当たったニュージーランド代表も高さと強さのあるチームだったが、日本は17本もの3ポイントシュートを決めて1点差の接戦を演じた。195センチのイヘツグットラックチネドゥ(開志国際高校)は「普通にシュートを打ったらブロックされるけど、中を攻めてキックアウトすればフリーのシュートも作れる。状況判断が一番大切だと感じました」と話し、体格で勝る相手と戦う上で一定の手応えをつかんだようだった。

イヘツはニュージーランド戦で自己最多9得点を挙げた[写真]=fiba.basketball
来年に大舞台が設定されたことは、彼らが日々のトレーニングに向かう上で大きなモチベーションになるはず。それは、今回代表入りできなかった同世代の選手たちも同様だ。来年6月27日にトルコ・イスタンブールで開幕するU17ワールドカップ。日本の将来を担う有望な若手にとって、さらなる成長の糧になることは間違いない。
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