2025.09.06
8月31日にモンゴルのウランバートルで開幕した『FIBA U16アジアカップ2025』は、9月2日までに予選グループフェーズの全日程を消化した。U16男子日本代表(FIBAボーイズランキング26位)は3戦全勝でグループDを首位通過し、次戦は5日に決勝トーナメント準々決勝を戦う。相手は、4日に準々決勝進出決定戦を行われるチャイニーズ・タイペイ代表対レバノン代表の勝者。ベスト4に進出すれば、来年トルコで開かれる『FIBA U17ワールドカップ2026』への出場権を獲得する。
日本はグループDでカザフスタン代表(同78位)に107-51、サウジアラビア代表(同79位)に78-58で快勝。2戦無敗同士で迎えたイラン代表(同23位)戦も、持ち味である連係の取れた激しいディフェンスと素早いトランジションからのオフェンスで流れをつかみ、86-67で鮮やかに勝ちきった。
予選グループフェーズでの戦いぶりを踏まえ、決勝トーナメントでさらなる活躍が期待される3選手をピックアップする。
文=長嶺真輝

白谷柱誠ジャック(福岡大学附属大濠高校)[写真]=fiba.basketball
まずはこの男を語らずして始まらない。A代表候補にも選出されている身長194センチの逸材、白谷柱誠ジャック(福岡大学附属大濠高校)である。予選グループフェーズのスタッツは16.0得点、10.7リバウンド。絶対的エース、そしてキャプテンとして力強くチームをけん引している。
オフェンスでは「自分はアタックもパスもできる選手なので、状況を読みながらプレーしています」と言う。フィジカルの強さと巧みなハンドリングスキルを兼備しているため、高さ、スピード、パワーのいずれのミスマッチも突くことができる。チームとしても5アウトオフェンスで良好なスペーシングを保ち、白谷の突破力を最大限に生かしている印象だ。白谷のリングアタックに合わせたバックカットやコーナー3ポイントシュートも多い。
ディフェンスでの貢献も目立つ。2戦目の後に「いろんな代表を経験してきて、ディフェンスという一つの武器を見つけることができました。この大会でそれを見せたいです」と語っていた通り、上のカテゴリーの基準が体に染み付いているのだろう。ドライブの正面に入る読みやヘルプのスピードに優れ、簡単に当たり負けしない。初戦は6スティール、2試合目は5スティール、3試合目は3ブロックという圧巻の数字を残した。
メンバーの中でただ一人、2年前のU16アジア選手権(現U16アジアカップ)にも出場し、世界選手権への出場権がかかる準々決勝でフィリピンに惜敗した悔しさも味わっている。「前回よりもチームみんながコミュニケーションを取れていて、試合にアジャストしながら戦うことができています。次の試合も絶対に勝ちきれるように頑張ります」。白谷が“らしさ”を発揮することが、世界への挑戦権を手繰り寄せる最大の原動力になるはずだ。

越圭司(Concordia Lutheran School of Omaha)[写真]=fiba.basketball
チーム一小柄な身長163センチとは思えない程、存在感が大きい。ここまでの3戦でいずれも先発ポイントガード(PG)を務めた越圭司(Concordia Lutheran School of Omaha)は、最大の武器であるスピードと3ポイントシュートで得点を重ね、いずれも二桁得点。初戦の後には「自分の役割はチームが苦しい時に一対一で相手を抜き、味方のノーマークを作ること。ただ、自分がやらないといけない時は、アタックして最後までシュートに行ききろうと思っています」と決意を口にしていた。見事に体現していると言っていいだろう。
試合中は、とにかくよく喋る。「ここ集中するよ!」「ワンストップ!」。声掛けの多さは、コート上でも、ベンチにいる時も変わらない。琉球ゴールデンキングスU15時代にもダブルガードとしてコンビを組んだ宮里俊佑(琉球U18)とともに、チーム内の会話を活発化させている。「コミュニケーションやセットの作り方など、試合を重ねるごとにチームの完成度が上がっている感触があります」と手応えを感じているようだ。
イラン戦では、メンタルの強さもうかがわせた。第3クォーターまで3ポイントシュートを8本連続で外し、第2クォーター残り0.1秒の場面では相手の苦し紛れの3ポイントシュートに不用意なファウルをしてしまった。それでも「自分で取り返すしかないと思っていました」と気持ちを切り替え、第4クォーター頭で遂に3ポイントシュートをヒット。強気を貫き、最終盤で相手を突き放すきっかけをつくった。
大会終了後には高校進学でアメリカに渡る。その前に、国際大会で自分の力が通用することを証明するつもりだ。イラン戦後、不敵に笑い、言った。「まだまだ証明できてないですね。準々決勝、見ていてください」

ホーキンス然(開志国際高校)[写真]=fiba.basketball
3試合の平均得点は18.0点、3ポイントシュートの成功率は脅威の64.3%(14本中9本成功)――。白谷に続く、第二のスコアラーとして躍動しているのが、ホーキンス然(開志国際高校)だ。
ひときわ輝きを放ったのは、予選における最大の山場だったイラン戦。試合序盤こそ相手に前に出られたが、第1クォーター終盤にホーキンスが自身1本目の3ポイントシュートを決め、この試合で初めてリードを奪った。2点差に詰め寄られた第3クォーター序盤には、3ポイントシュートを皮切りに一人で連続7得点。試合を通して5本中4本の3ポイントシュートを沈め、「数字に見える活躍ができて良かったし、チームが勝てたことが何よりうれしいです」と屈託なく笑った。
身長192センチ。高校でのプレーとは異なり、白谷をメインに攻める代表ではコーナーステイなどシューターとしての動きが多い。慣れない役回りではあるが、「モンゴルに来てからシュートの感触が良くて、このプレースタイルも自分に合っているように感じます。自信を持って打てています」と充実感をのぞかせる。「ジャックがエースですけど、彼一人に任せてはいけない。早生まれで代表に入った2年生としての意地もあるので」と続け、上級生としてのプライドも活力の源になっているようだ。
イラン戦では12リバウンドも記録し、±はチームトップの「+27」に達した。ヘルプディフェンスやボックスアウトといった泥臭いプレーに対する意識の高さも見える。「数字に残る活躍をしながら、それ以外のプレーや声掛けもしっかりやっていきたいです」と語るホーキンスのパフォーマンスが、世界への扉をこじ開ける鍵を握りそうだ。

U17ワールドカップ出場権獲得を目指すU16男子日本代表[写真]=fiba.basketball
準々決勝を突破すれば、準決勝ではオーストラリア代表、決勝では中国代表、ニュージーランド代表といった優勝候補と対戦する可能性が高い。チーム力や個々のレベルを上げる上で貴重な経験を積むことができるため、なんとしても勝ち進みたい。
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