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高校3冠を目指す福大大濠…“背番号13不在”と“10名遠征”に込めた片峯コーチの思い

福大大濠を率いる片峯聡太コーチ[写真]=アウトナンバー編集部
沖縄バスケットボール情報誌『アウトナンバー』

 2026年3月21日と22日に沖縄で開催された「おきなわカップ」において、福岡大学附属大濠高校(福岡県)が圧倒的な実力を証明した。

 全国の強豪が集う大会で、リーグ戦から決勝まで一度も主導権を渡さず優勝。しかし、チームを率いる片峯聡太コーチの視線は、単なる優勝という結果には留まっていない。今年の福大大濠が提示するハイレベルなスタンダードは、非常に興味深いものとなっている。

 片峯コーチ、エースの白谷柱誠ジャック、キャプテンの永善元希の言葉を交えながら、新チームの福大大濠が目指すバスケットボールの全貌を紐解く。

取材・文=アウトナンバー編集部

■指揮官から選手へのメッセージ

 今大会、福大大濠が沖縄遠征に帯同させたメンバーはわずか10名だった。全国レベルの強豪校が12名から15名程度の選手を遠征に連れていくことは珍しくないが、片峯コーチはこの人数に明確な「競争」の意味を持たせている。

「チーム内での競争を促すためです。招待していただいた大会であっても、ユニフォームを着る場所やポジションは自分たちの手で勝ち取らなければならないということを選手に伝えたかった」

 “なんとなく”遠征に参加する状況を排除し、夏のインターハイに向けてチーム全体のスタンダードを引き上げるための厳しさだ。

 この徹底した実力主義を象徴するエピソードの一つとして、今大会ではエースガードが受け継いできた背番号13を誰も着用しなかった。片峯コーチは、現在のチームにおいて技術面だけでなく人間性も含め、この番号を背負うにふさわしい選手がまだ現れていないと考えている。少しでも気を抜けば次はユニフォームを着られないという危機感が、チーム全員に植え付けられている。

 この方針に対し、キャプテンの永善も強い責任感を持って応えている。

「この2日間、高い強度で試合に臨めたことは良かった」と手応えを口にする一方で、「脇を固めるロールプレーヤーたちが、いかに得点やディフェンスで貢献できるかが今後の課題」と分析。キャプテンとして、個々のレベルアップがチーム全体の底上げに直結することを誰よりも理解している。

U18日本代表にも選出されている白谷と櫻井照大[写真]=アウトナンバー編集部

■ポジションレスで突き抜ける個の力

 今年の福大大濠の最大の特徴は、サイズとスキルを高い次元で両立させた「ポジションレス」なスタイルにある。片峯コーチは、白谷、本田蕗以、中村文哉といった190センチ前後のサイズを持つフォワード陣を、今年の「売り」として挙げている。

 指導方針は一貫している。

「ドライブ、3ポイントシュート、オフボールの合わせ。これらはどの選手も高いレベルでできなければならないレベルまで引き上げる」。

 全員が一定以上の水準を保ちながら、そのうえで「2人ディフェンスが来ても突破できる」といった突き抜けた武器を融合させることが、今年のチーム作りの肝となっている。

 その威力が遺憾なく発揮されたのは、今大会のスコアにも表れている。21日の初戦で土浦日本大学高校(茨城県)を93-45で一蹴すると、2戦目では興南高校(沖縄県)を相手に102-62と大勝。84-61で快勝した決勝の柳ヶ浦高校(大分県)戦では、前半に3ポイントシュート成功率約60パーセントを記録した。どのポジションからも得点が狙えるオフェンスの厚みは、対戦相手にとって大きな脅威となる。

最終学年を迎える本田[写真]=アウトナンバー編集部

■U18代表組の合流…問われるアジャスト能力

 主力選手の多くが世代別の日本代表活動に参加していることも、今年の福大大濠を語るうえで欠かせない要素だ。代表に選出されている白谷や本田ら主力選手は、頻繁に合宿や遠征を繰り返しており、チーム全員が揃って練習できる時間は限られている。

 今大会は久しぶりにチームが一つになる場だった。片峯コーチは、個々が磨いてきた力を認め合いながら、チームとしての「関係性」を再構築することを今大会のテーマの一つに掲げた。この点について、白谷はこう語っている。

「チームとして揃うのが久しぶりで、分かれて練習している期間が長かったです。全員が揃う時期に試合をすることで、コミュニケーションの大切さや試合中でのアジャストが非常に大切になってきます」

 白谷は代表での経験をチームに持ち帰る一方で、福大大濠という組織の中での自らの役割を再確認することの重要性を再確認している。代表でのプレースタイルとチームでの役割を、自身のコンディションに合わせてどう融合させるか。エースが直面するこの「アジャスト」のプロセスそのものが、チームの成熟度を測る指標となっている。

■注目される大器の成長

 チームの核として、そして日本バスケットボール界の未来を担う逸材としても注目を集める白谷。身長194センチの有望株は新2年生ながら、プレーのバリエーションを飛躍的に広げているが、片峯コーチは白谷に極めて高い要求を突きつけている。

「これまではU15などのカテゴリーで高さやフィジカルで通用していたプレーが多かった。しかし、世界になれば205センチの選手たちが同じようにプレーしてくる。その時にどう勝つか。足技でズレを作ったり、自分でスペースを生み出したりといった技術のブラッシュアップが不可欠です」

 白谷自身も将来を見据えている。4月に予定されるU18男子日本代表のドイツ遠征について触れ、「ヨーロッパの強豪を相手に自分が何ができるかを突き詰めたい」と意気込みを語る。世界基準のサイズとスキルを備えた“新しい日本代表”の先駆けとなるべく、日々進化を続けている。

日本バスケ界“屈指の逸材”として注目される白谷[写真]=アウトナンバー編集部

■足元を固める名門のプライド

 今シーズンの福大大濠が掲げる目標は、インターハイ、U18日清食品トップリーグ、そしてウインターカップ3連覇を含む高校3冠だ。永善は「特に、この2年悔しい結果で終わっているインターハイでは絶対に優勝したいです」と、夏の日本一への強い思いを言葉に込めた。

 一方で、片峯コーチは名門校としてのプライドを持ちつつも、数字に囚われない独自の哲学をチームに浸透させている。インターハイ4回、ウインターカップ5回の全国優勝を誇り、今年は夏冬通算10回目の全国制覇がかかっている状況にあっても冷静だ。

「連覇や10回目という数字はあまり意識していないです。目の前の勝負、1回1回の練習で毎日自分自身に勝ち続ければ、その結果がチームの勝利につながり、最終的に3連覇や優勝に結びつくだけだと考えています」

 目標を意識しすぎて手段や目的を誤ることなく、日々の研鑽の積み重ねこそが真の強さを生むという信念だ。

 圧倒的な強さで制したおきなわカップは、福大大濠にとって長いシーズンの序章に過ぎない。白谷という世界基準の才能、そして常に繰り広げられる熾烈なチーム内競争。これらが融合した時、福大大濠は再び全国の頂点へと駆け上がるだろう。

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