2026.03.26
沖縄水産高校が、新たなスタイルで全国に存在感を示した。
2026年3月に沖縄県で開催された『おきなわカップ2026』で、沖縄水産は全国の強豪校を相手に堂々とした戦いを披露。身体能力の高さと組織的な戦術を融合させた“現代的なスタイル“で進化の兆しを見せた。
取材・文=アウトナンバー編集部
沖縄水産に「組織的な規律」という新たな息吹を吹き込もうとしている嘉陽コーチは、今大会の反省点として「約束事(システム)」の重要性を強調した。
「ボール運びの約束事を伝えているのに、それが徹底できなかったところが課題です。バスケットボールを約束事でやることの大切さを、生徒たちに勉強させています」
特にマッチアップゾーンなどの特殊なディフェンスへの対応は、沖縄県内の対戦では経験しにくい課題だ。沖縄水産は単なる1対1の力勝負ではなく、ハーフコートで戦略的な得点パターンのバリエーションを構築することを追求している。
実際に62-60で競り勝った正智深谷高校との一戦では、最終クォーター残り8.5秒の場面で選手たちが自ら戦略を判断し、逆転勝利を収める場面が見られた。
組織的なバスケットボールへの転換において、鍵を握るのがポイントガードのブリティンジェレド琉貴だ。
沖縄水産は今春の『スプリングマッチ2026』で早稲田大学などの大学生チームと対戦し、高いレベルでの経験を積んできた。そこでの手応えについて、ブリティンは次のように振り返る。
「相手を抜く技術は通用しましたが、ペイントエリア内のフィジカルの強さには課題を感じました」
そうした経験を踏まえ、司令塔としてチームをどう動かしていくかが今後の課題の一つとなる。

沖縄水産の司令塔を担うブリティン[写真]=アウトナンバー編集部
「もっと自分が積極的にチームを引っ張らなければいけません。相手を抜く技術に磨きをかけ、シュートとアシストの両方ができる選手として幅を広げていきたいです」
ブリティンがコート上でいかに「約束事」を遂行し、周囲を動かせるか。それが今年の沖縄水産の完成度を左右する重要なポイントになる。
チームが組織力を高めるなか、勝負どころではエースのマクミランに期待がかかる。
U18日本代表に選出されているマクミランは、今大会では相手チームからの厳しいマークに苦しみながらも、随所でその高い得点能力を発揮した。
U18日本代表ヘッドコーチも務める福岡大学附属大濠高校の片峯聡太コーチは、197センチの長身で3ポイントシュートも武器にするマクミランのポテンシャルを高く評価している。
代表チームの指揮官という立場から「マクミラン選手のポテンシャルの高さは素晴らしいです。しかし、世界と戦うためには、コンディションや環境が悪い中でもやり返せる強いマインド、すべてにおいてタフな人物になることが必要」と語り、さらなるレベルアップへの期待を口にした。
日々マクミランを指導する嘉陽コーチも、その成長を温かく見守っている。
「本音ではガツガツやってほしい部分もありますが、彼は一歩ずつ階段を上がっています。足りない部分ばかりを見るのではなく、まずは今頑張っている姿を認めてあげたい。本人が課題に気づいたときにサポートするのが一番ですし、それが彼の成長につながると信じています」
マクミラン自身も、今大会で自身の精神的な課題を認めつつ、次のように語った。
「一歩一歩進んでいる実感はあります。今後は相手が二人来ても味方を生かせるように頑張りたい」

沖縄水産を指揮する嘉陽コーチ[写真]=アウトナンバー編集部
これまではコーチの指示を待つことが多かった選手たちが、今大会では自ら「こういうプレーをしたい」と意見を出し合い、コート上でコミュニケーションを取る姿が増えた。
自立の精神は、ベンチメンバーの成長にもつながっている。57-59で惜敗した土浦日本大学高校(茨城県)戦では、第4クォーターに控え選手が得点に絡むなど、選手層の厚みが増していることが示された。
嘉陽コーチは精神面の成長を高く評価する。
「代表活動で抜けているエースをリスペクトしつつ、残されたメンバーが走り込みなどでチームを支える。お互いを尊重し合えるチームになってきました」
おきなわカップで得た収穫は、個の力に頼るバスケットボールからの脱却の兆しだった。身体能力という武器に、洗練された約束事と選手たちの自立が融合したとき、沖縄水産は戦術的にも完成度の高いチームへと進化する。
しかし、嘉陽コーチは“沖縄バスケ”の原点も決して忘れていない。
土浦日大戦で、沖縄水産の小柄なガードが3ポイントライン上で190センチを超えるビッグマンと一対一になった。スピードのミスマッチが生まれている状況で3ポイントシュートを放った瞬間、嘉陽コーチの檄が飛んだ。
「簡単な選択をするな!アタックして大きい選手をやっつけろ!」

沖縄水産の末吉青空[写真]=アウトナンバー編集部
世代を代表する選手への成長が期待されるマクミランの爆発力と、ブリティンが操る組織的なゲームメイク。そして「小さい選手が気持ちで負けない」という沖縄バスケの精神。その融合が、チームの大きな武器となりつつある。
2月に行われた「第56回 全九州高等学校バスケットボール春季選手権大会」では、福岡第一高校(福岡県)を破るなど快進撃を見せベスト4進出も果たした沖縄水産。全国の舞台で注目される日も、そう遠くなさそうだ。
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