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沖縄水産高校が強豪相手に示した進化の形…U18日本代表に選出されたエースも「一歩ずつ」成長中

U18男子日本代表にも選出されている沖縄水産のマクミラン[写真]=アウトナンバー編集部
沖縄バスケットボール情報誌『アウトナンバー』

 沖縄水産高校が、新たなスタイルで全国に存在感を示した。

 2026年3月に沖縄県で開催された『おきなわカップ2026』で、沖縄水産は全国の強豪校を相手に堂々とした戦いを披露。身体能力の高さと組織的な戦術を融合させた“現代的なスタイル“で進化の兆しを見せた。

取材・文=アウトナンバー編集部

■組織的な「約束事」を徹底…指揮官が目指す新しい沖縄水産

 沖縄水産に「組織的な規律」という新たな息吹を吹き込もうとしている嘉陽コーチは、今大会の反省点として「約束事(システム)」の重要性を強調した。

「ボール運びの約束事を伝えているのに、それが徹底できなかったところが課題です。バスケットボールを約束事でやることの大切さを、生徒たちに勉強させています」

 特にマッチアップゾーンなどの特殊なディフェンスへの対応は、沖縄県内の対戦では経験しにくい課題だ。沖縄水産は単なる1対1の力勝負ではなく、ハーフコートで戦略的な得点パターンのバリエーションを構築することを追求している。

 実際に62-60で競り勝った正智深谷高校との一戦では、最終クォーター残り8.5秒の場面で選手たちが自ら戦略を判断し、逆転勝利を収める場面が見られた。

■司令塔として成長するブリティン…エースとのツーメンゲームが鍵

 組織的なバスケットボールへの転換において、鍵を握るのがポイントガードのブリティンジェレド琉貴だ。

 沖縄水産は今春の『スプリングマッチ2026』で早稲田大学などの大学生チームと対戦し、高いレベルでの経験を積んできた。そこでの手応えについて、ブリティンは次のように振り返る。

「相手を抜く技術は通用しましたが、ペイントエリア内のフィジカルの強さには課題を感じました」

 そうした経験を踏まえ、司令塔としてチームをどう動かしていくかが今後の課題の一つとなる。

沖縄水産の司令塔を担うブリティン[写真]=アウトナンバー編集部


 エースのマクミランアレックスとのツーメンゲームには、嘉陽コーチも一定の手応えを感じている。ブリティン自身も、ポイントガードとしての自覚を強めている。

「もっと自分が積極的にチームを引っ張らなければいけません。相手を抜く技術に磨きをかけ、シュートとアシストの両方ができる選手として幅を広げていきたいです」

 ブリティンがコート上でいかに「約束事」を遂行し、周囲を動かせるか。それが今年の沖縄水産の完成度を左右する重要なポイントになる。

■U18日本代表マクミラン…エースに求められる「タフさ」

 チームが組織力を高めるなか、勝負どころではエースのマクミランに期待がかかる。

 U18日本代表に選出されているマクミランは、今大会では相手チームからの厳しいマークに苦しみながらも、随所でその高い得点能力を発揮した。

 U18日本代表ヘッドコーチも務める福岡大学附属大濠高校の片峯聡太コーチは、197センチの長身で3ポイントシュートも武器にするマクミランのポテンシャルを高く評価している。

 代表チームの指揮官という立場から「マクミラン選手のポテンシャルの高さは素晴らしいです。しかし、世界と戦うためには、コンディションや環境が悪い中でもやり返せる強いマインド、すべてにおいてタフな人物になることが必要」と語り、さらなるレベルアップへの期待を口にした。

 日々マクミランを指導する嘉陽コーチも、その成長を温かく見守っている。

「本音ではガツガツやってほしい部分もありますが、彼は一歩ずつ階段を上がっています。足りない部分ばかりを見るのではなく、まずは今頑張っている姿を認めてあげたい。本人が課題に気づいたときにサポートするのが一番ですし、それが彼の成長につながると信じています」

 マクミラン自身も、今大会で自身の精神的な課題を認めつつ、次のように語った。

「一歩一歩進んでいる実感はあります。今後は相手が二人来ても味方を生かせるように頑張りたい」

■チームのテーマは「自立」…選手主体のチーム作りが進む沖縄水産

沖縄水産を指揮する嘉陽コーチ[写真]=アウトナンバー編集部


 2026年度の沖縄水産が掲げるテーマは「自立」だ。

 これまではコーチの指示を待つことが多かった選手たちが、今大会では自ら「こういうプレーをしたい」と意見を出し合い、コート上でコミュニケーションを取る姿が増えた。

 自立の精神は、ベンチメンバーの成長にもつながっている。57-59で惜敗した土浦日本大学高校(茨城県)戦では、第4クォーターに控え選手が得点に絡むなど、選手層の厚みが増していることが示された。

 嘉陽コーチは精神面の成長を高く評価する。

「代表活動で抜けているエースをリスペクトしつつ、残されたメンバーが走り込みなどでチームを支える。お互いを尊重し合えるチームになってきました」

■「大きい選手をやっつけろ!」挑戦の精神

 おきなわカップで得た収穫は、個の力に頼るバスケットボールからの脱却の兆しだった。身体能力という武器に、洗練された約束事と選手たちの自立が融合したとき、沖縄水産は戦術的にも完成度の高いチームへと進化する。

 しかし、嘉陽コーチは“沖縄バスケ”の原点も決して忘れていない。

 土浦日大戦で、沖縄水産の小柄なガードが3ポイントライン上で190センチを超えるビッグマンと一対一になった。スピードのミスマッチが生まれている状況で3ポイントシュートを放った瞬間、嘉陽コーチの檄が飛んだ。

「簡単な選択をするな!アタックして大きい選手をやっつけろ!」

沖縄水産の末吉青空[写真]=アウトナンバー編集部


 沖縄バスケは常に「高さへの挑戦」だった。平均身長の低い沖縄の選手たちが、県外の高さにどう対抗するか。速さで圧倒し、必死にボールを追いかけ、何より気持ちでは負けない。沖縄県を代表する名将である嘉陽コーチの檄には、“沖縄バスケの矜持”が込められていたのではないだろうか。

 世代を代表する選手への成長が期待されるマクミランの爆発力と、ブリティンが操る組織的なゲームメイク。そして「小さい選手が気持ちで負けない」という沖縄バスケの精神。その融合が、チームの大きな武器となりつつある。

 2月に行われた「第56回 全九州高等学校バスケットボール春季選手権大会」では、福岡第一高校(福岡県)を破るなど快進撃を見せベスト4進出も果たした沖縄水産。全国の舞台で注目される日も、そう遠くなさそうだ。

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