55分前

「誰よりも近くで見てくれた」現役生活にピリオドを打ったENEOS・宮崎早織を支えた2人の後輩

ENEOSのファンミーティングで後輩たちと最後の集合写真 [写真]=田島早苗
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■苦悩する宮崎を支えた2人の後輩

ファンにあいさつする宮崎 [写真]=田島早苗

「特別でしたよ。めちゃめちゃ特別。私がイライラしたり、どうしたらいいか分からなかったりしたときに誰よりも近くで見てくれていたので。だからといって彼女たちはどうすることもできないから、そっとしておいてくれていたとは思うけれど。そうですね、特別というか、私自身も大切にしたいなと思う2人でしたね」

 2025-26シーズンをもって現役引退となったENEOSサンフラワーズ宮崎早織が語るのはチームメートの藤本愛瑚星杏璃のこと。ENEOS一筋で12シーズン戦った宮崎だが、そのうち、藤本とは8シーズン、星とは7シーズンをともに過ごした。

 聖カタリナ女子高校(愛媛県/現在は聖カタリナ学園)からENEOSに入団した宮崎は、黄金期を築いていたチームのなかで下積み時代を経ながら力をつけていった。その間に一緒に入団した同期3人はチームを去り、7年目からはスターターに定着したものの、この前後から主力選手の移籍や引退が続いた。

「よく分からない状態でしたね。こんなこと起きるんだって。ましてやリュウさん(吉田亜沙美/三菱電機コアラーズ)、ネオさん(藤岡麻菜美)、リトさん(大沼美琴)、アースさん(宮澤夕貴/富士通レッドウェーブ)、アコさん(石原愛子)にキキさん(林咲希/富士通)と、仲良くしてくれた先輩たちで、私も大好きだったから。常に近くにいた人たちがいなくなる感覚が分からなくて、いなくなってから初めてその大変さや先輩たちが私に言っていたことの意味を理解できるようになりました」

 変わりゆくチームの状況。大きなメンバー編成もあってか苦しい時期も続いた。それでも黄色いユニフォームを着続けたのは、ENEOSへの思い、それと同時に「人の人生、自分の人生ではない」と先輩たちの決断を受け入れたから。

「これもタイミングなんだなって。ENEOSで先輩たちに教えてもらったことを少しずつ後輩たちに教えていかないといけない立場になってるんだと思いながらやっていました」

 こう振り返る宮崎は、チームがどのようなときでも前を向き、引っ張り続けた。その一方で苦労も多かったはずだ。それでも気心知れた同期や先輩はもういない。そんなときに常に宮崎の近くにいたのが藤本と星だったのだ。

「彼女たちは何も聞いてはこないけれど、私が『ご飯行こう』と誘ったら絶対来てくれたし、そういう些細なことを気にかけてくれました。気にかけてくれたというか、彼女たちなりの優しさだったのかな。2人がいたことは大きかったですね。後輩に相談できないことがあることも分かってくれていて、何かを言ってくるというよりは、ただただおもしろいことをして笑うみたいな感じでした」

 藤本も星も高校卒業後入団し、若手のころは勝ち続けていたチームのなかで先輩たちの『勝者のメンタリティ』を感じてきた選手たち。だからこそ「多分、私が考えていることをほかの選手より理解してくれていたとは思います」と、宮崎も強い信頼を置いていた。

「アンリ(星)とテン(藤本)は、私がやりたい、ENEOSってこういうチームだよねというのを理解しながらついてきてくれました。一歩後ろに下がりながらも寄り添ってくれていた存在だったかなと思います」

 2人への感謝の言葉を発した宮崎。ここでユニフォームは脱ぐが、来シーズン以降も選手として戦いに身を置く2人については愛あるゲキを送った。

「テンにとって今シーズンはすごくプレッシャーがあったと思います。今までは若手で後から試合に出ることも多かったけれど、スタメンとして出ることもあったり(11試合にスターター出場)、後輩たちの方が長く試合に出ることがあったりしたので。だから、そういうことがどれだけ大変で苦しいことかを経験したシーズンだったかなと思います。でも、そういうことは限られた人にしか経験できないこと。今後、そこからどう抜けるかが大事だと思います。
 テンのことはよくいじってたけど、本人からも私はいじられるキャラじゃないと言われていました。でも、返しがおもしろくて。先輩感も後輩感もしっかり出せる人でしたね」

「アンリは、(ワールドカップ予選の)日本代表候補には選ばれなかったけれど、それをきっかけにパフォーマンスが上がったと思うので、彼女にとってはすごく大事な時間だったのではないかと思います。日本代表に入り続けることも大切だけれど、外から見て分かることもあると思いますね。
 アンリは圧倒的後輩キャラ。永遠に20歳という感じはするけれど、もう25歳。いろいろな感情と向き合っていると思います。チームの顔になってからも大変だけど、頑張ってほしいですね」

■受け継ぐ思い「今度は自分が」


後輩の藤本(上)と星(下)から花束を贈られる [写真]=田島早苗

 対して藤本、星も宮崎についてはそれぞれに特別な思いがある。

「ユラさんとの8シーズン、徐々に一緒にプレーする機会も多くなったなか、ユラさんのラストシーズンである今シーズンは自分のプレータイムが減ったので、あまり一緒にプレーできなかったことは正直すごく寂しい気持ちがあります。私がもっと成長してユラさんを助けたいなと思っていたので、それができなかったことが残念です。でも、ユラさんから学んだことを次につなげていきたいです。
 最初、ユラさんはしゃべる人だと思っていたのですが、全然しゃべらなくて。意外と人見知りだったらしく、それで怖いイメージを持っていました。それでも話すようになってからは過激で(笑) どんなときも声をかけて元気づけようとしてくれているというのは分かっていました。だけど、ふざけていることも多かったですね。
 今まで私はいじられる経験がなかったので、ユラさんにいじられたのが初めて。いじられ役みたいな意識を作ってくれたことは私が変わったことの一つだと思います。
 たくさん怒られてきましたが、後でケアしてくれるし、期待してるからだよとたくさん声もかけてもらいました。だから私も怒られている意図を理解していました。それでも、年を重ねるごとにほめてもらえることも増えてきて、言われることのレベルも上がってきたというのは感じていました。常に気をつかって、私に対して声をかけてくださったことが一番の印象です」(藤本)

「(来シーズンから)試合でユラさんがいないのは想像つかないです。ユラさんはフリースローを打った直後に、「あぁ!」とか叫ぶんですが、(レギュラーシーズン最終戦でも)それをやっていて(笑) でも、これも聞けなくなるんだなって思ったら涙が出そうになりました。

 今シーズン、ユラさんから言われたことで心に残っているのが、『アンリが打って負けたら仕方がない』という言葉。ディフェンスにきつく守られているなかでユラさんがつないでくれたからこそ、貴重な1、2本を私も絶対に決めたいという気持ちで3ポイントシュートを打っていますが、ユラさんの言葉を聞いてそう思ってくれているんだと感動しました。

 入団したころから落ち込んでいるときなどに気づいてくれるのはユラさんで、目につかないところでゆっくり話を聞いてくれたり、アドバイスしてくれたりしました。これは私だけでなく多くの選手が経験をしたと思います。私も何度も救われて、もう一回頑張ろうという気持ちになった7年間でした。本当に感謝しています。

 ユラさんと2人でキャプテンをやらせてもらった今シーズンは、たくさん学ぶことがあったし、一緒に優勝したいという気持ちだけで突っ走りました。今の自分があるのはユラさんが話を聞いてくれたことや一緒にプレーしてくれたおかげ。存在に感謝ですね。ユラさんがつないでくれたものを今度は自分が。ENEOSの伝統や勝ちへの意識などを変えずに、新しくつなげていければと思っています」(星)

 コートにひまわりが咲いたような華やかさで12シーズンを駆け抜けた。チーム最年長となった今、特別な感情を抱く藤本と星に対して宮崎は、最後にこの一言で結んだ。

「どの選択をしても別に間違いはない。自分の心に素直に生きてほしいですね」

文=田島早苗

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