2025.05.15

オンコートインタビューでは涙をこらえきれず [写真]=伊藤大允
「優勝ってこんなにうれしいんだな、というのを改めて感じました。何回も優勝したことはありましたけど、こんなにうれしくて、うれしくて、涙が止まらない優勝は初めてだったので……」
デンソーアイリスとの決勝は76−62で完勝。3年ぶり28度目の皇后杯を制した主役は、心の底から溢れ出す笑顔と涙で喜びを表現した。それほど今回の優勝は、名門ENEOSサンフラワーズを率いる宮崎早織にとって、特別なものだったのだ。
近年のWリーグは活発な移籍市場によって戦力が分散しているとはいえ、昨年の皇后杯では、実に48大会続いたベスト4入りを逃す悔しさを味わっている。また、今季限りでの引退宣言をしているだけに『最後の皇后杯』という特別な思いもあっただろう。ただ、そうした事情以上に、チーム全員でつかみ取った日本一がとてつもなくうれしく、そして誇らしかったのだ。
正直に言えば、今大会のENEOSは優勝候補にあげられていたわけではない。今シーズンのWリーグでは発展途上のチーム力ゆえ、現在の順位はプレーオフ圏外の5位。実際、皇后杯に入ってからも苦戦をしいられ、準々決勝の日立ハイテク戦と準決勝のトヨタ自動車戦では、負けてもおかしくないような不安定なゲーム運びをする時間帯が多かった。それでも終盤になればビッグプレーを連発し、劇的な逆転勝利を収めてきたのだから、その底力には驚くばかりだった。

笑顔でネットカットする宮崎 [写真]=伊藤大允
準決勝で対戦した日立ハイテクの柏倉秀徳ヘッドコーチは「終盤、シュートを落とさなかったところにENEOSの底力を感じました」と語り、トヨタ自動車の大神雄子ヘッドコーチは「最後に相手に気持ちや意地を出されました」と言い、決勝で敗れたデンソーの髙田真希は「『自分がやる』っていう気持ちを持つ選手が一人でも多くないと、こういうゲームでは勝ち切れない」と相手のほうが気持ちでまさっていたことを認めている。
事実、決勝でのENEOSは、準決勝までとは打って変わり、出足から気迫みなぎるゲーム運びを展開している。宮崎は決勝を前に、一発勝負のトーナメントを勝ち上がる鉄則をこのように語っていた。
「トーナメントは短期決戦で、対戦相手も毎試合変わるから修正するのが難しいんです。だからこそミスを引きずらないで、今この瞬間にどれだけ集中して前に進んでいけるかが大事。コートに出ている5人が我慢をして、自分たちのやることに対してブレずに次のプレーにつなげられるか。それがトーナメントでは一番大事です」
「意地」や「底力」という言葉で勝因を語るのは簡単なことだが、決勝ではディフェンスとリバウンドに、宮崎の言うブレない姿勢が現れていた。決勝の前半、相手のエースである髙田真希と赤穂さくらを無得点に抑えたばかりか、リバウンドでも20−9本(トータル39−27本)と圧倒。一戦ごとに激闘を制することでチーム内に自信が深まり、ディフェンス力が高まっていくのが目に見えてわかったほどだ。
宮崎自身、決勝では16得点7アシストのスタッツを叩き出しているが、流れを引き寄せるファインプレーをしたのは、46-46の同点で迎えた第4クォーターの出足。第3クォーターの中盤から攻めあぐんだデンソーのゾーンディフェンスに対して、「ペイントアタックが少なくなっていたので」と2連続となるドライブで切り裂き、相手に傾いていた流れを断ち切った。そこから、馬瓜エブリン、プレッチェル アシュテン、田中こころの3ポイント攻勢で畳みかけ、自身のコーナースリーの一撃でトドメを刺した。両手で拳を握りしめながら、ピョンピョンと飛び跳ねて喜ぶその姿からは、バスケットボールを心の底から楽しんでいることが伝わってきた。

盟友の馬瓜エブリンと喜びを噛み締めた [写真]=伊藤大允
試合後の優勝会見。一戦ごとにチーム力が高まっていった要因について聞くと、宮崎はためらいなくチームメイトたちを讃えた。その言葉は、今大会の勝ち上がりを表現する思いが込められたものだったので、全文を紹介したい。
「負けたくないという気持ちが全員全面に出て、そこが勝ちにつながったと思います。私とかエブリンの活躍を皆さんがお祝いしてくれるのはすごくうれしいんですけど、でも何より、ベンチメンバーが出たときにしっかり点を取ってくれたことが、この大会を通してすごく成長したところだと思います。
(日立)ハイテク戦もトヨタ戦も三田(七南)がすごく頑張ってくれましたし、樹奈(梅沢カディシャ)に関しては、見えないところでずっとリバウンドをタフに頑張ってくれました。彼女がいなかったら何度もリバウンドを取られていたところがあったので、そこはアシュ(プレッチェル)、樹奈、(オコエ)桃仁花にすごく感謝しています。
八木(悠香)とこころ関しては、本当に素晴らしい選手がENEOSに入ってくれたなと、うれしい気持ちばかりです。八木はさっき、『何もできなかった』と言ってましたけど、彼女は当たり前のことを当たり前にやり続けることができる。リバウンドだったり、ルーズボールだったりをずっとやり続けてくれる。これは目立たないことですけど、本当にチームを救ってくれます。そういう選手たちがこの大会を通して出てきてくれたことが、勝ちにつながったと思いました。
最後に、星(杏璃)は(もう一人の)キャプテンとしてすごく成長してくれました。この成長は、ただ成長したよね、ということだけではなくて、『私がやる』『私が勝利に貢献する』という、その覚悟が大会を通して見られたと思っているので、若い子たちがたくさん成長し続けてくれたことが、この勝ちにつながったんじゃないかなと思います」
これまで、何度も壁にぶつかりながらも成長し続けたからこそ、優しくも頼れるチームリーダーになった姿がそこにはあった。ENEOSを皇后杯優勝に導いたキャプテン、宮崎早織がラストダンスを終えるのはまだ早い。これから佳境を迎えるWリーグにおいても、もう一つ大きな“ひまわりの花”を咲かせるチャレンジが待っている。
文=小永吉陽子
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