2026.03.01
張り詰めた空気のまま、大一番の試合は第4クォーターの残り5分を切った。
3月1日、沖縄サントリーアリーナ。「FIBAバスケットボールワールドカップ2027 アジア地区予選」を戦う男子日本代表(FIBAランキング22位)は、この瀬戸際で61-64と韓国代表(同56位)を追う立場にあった。
リードして前半を折り返しながら、終盤でビハインドを背負っていた要因のひとつは、後半から韓国が頻繁に使い出した“ハードショー”に手を焼いたことが挙げられる。ハンドラーに圧をかけられてオフェンスの流動性がたびたび停滞し、スティールから速攻につなげられるなどして主導権を握れずにいた。
桶谷大ヘッドコーチ(HC)が就任後、初めての試合だった3日前の中国代表(同27位)戦も第3クォーターにリズムを失い、手痛い逆転負けを喫していただけに、不安が脳裏をかすめたファンも少なくなかったはずだ。
しかし、この土壇場で相手の激しいディフェンスをほぼ無効化してしまうポイントガードが現れた。齋藤拓実だ。
「桶さんの体制になってから、中国戦で負けてしまったので、チームとしてなんとしても勝ちたい気持ちがありました」。その決意を、圧巻のプレーで体現した。

[写真]=fiba.basketball
この時点で66-67。依然として追う展開。研ぎ澄まされた状況判断と広い視野で、さらにコート上での支配力を強めていく。
同じハードショーのシチュエーションになると、今度は圧をかけてきたディフェンダーの足元にバウンドパスを通し、ピックからダイブしたジョシュ・ホーキンソンに絶妙なアシストを送る。その後もペイントタッチから馬場のカッティングにパスを合わせたり、西田優大との素早いパス交換で簡単なスコアを演出したりして、味方を生かし続けた。
極め付きは残り約1分の場面だ。トップの位置でボールを持つと、ホーキンソンがピックの瞬間にスクリーンをかける方向を反対に変え、相手がハードショーに出づらい状況をつくって齋藤がドリブルでフリーになり、自らプルアップで3ポイントシュートを沈めた。吠える齋藤に呼応するように、この日一番の大歓声がアリーナを包む。勝負の大詰めで75-69とリードし、息詰まる熱戦に終止符を打った。
第4クォーターの10分間でコートに立ち続けた齋藤。試合を通したスタッツは9得点4アシストと突出した数字ではないが、勝利への貢献度の大きさは計り知れない。汗ばんだ顔で「選手が交代しながら、何度も何度も我慢の時間帯を乗り越えてきた試合でした。クロージングでコートに立って試合を終えられたことは、ポイントガードとしてすごく良かったと思います」と語る姿からは、充実ぶりがうかがえた。

[写真]=fiba.basketball
それでも、ハードショーへの対応をはじめ、終盤に圧力の高い韓国のディフェンスを攻略できた要因は何だったのか。
「僕だけでなく、西田選手やほかの選手がハンドラーになる時にどこで手詰まってしまっているのかを含め、相手がどういうディフェンスをしているのかを見ながらプレーできていました。ショーに来ている選手にしっかりアタックをして、そこから(ホーキンソンに)ポケットパスを送るなど、裏の3対2のシチュエーションをつくれたことが良かったと思います」
数的有利をつくる確かな観察眼と、クラッチタイムで脳内イメージを体現できる勝負強さ。桶谷HCも「最後に拓実とジョシュがアンストッパブルなプレーを何個も見せてくれた」「拓実がBリーグの中で一番ペイントタッチに優れている選手だと思っている」と厚い信頼を寄せる。

[写真]=fiba.basketball
B1リーグで西地区2位を走る名古屋ダイヤモンドドルフィンズでエースガードを務め、ここまで11.8得点5.5アシストを記録し、3ポイントシュート成功率は個人ランキング8位の40.1パーセントという活躍を見せていることを鑑みれば、代表戦におけるパフォーマンスに多少の物足りなさを感じていたファンも少なくなかったのではないか。
当の本人も「代表の試合を何度か経験させてもらっていて思うのは、普段チームでやっているような感覚で試合に入るのがすごく難しいということです。シュートの感覚や攻めるタイミングが普段と違うので、前回の試合を含めて、そこにアジャストするのに少し時間がかかってしまったと感じています」と率直に語る。
もどかしさがあったからこそ、韓国戦での活躍は代表戦でのプレーに自信を深めるきっかけになったようだ。「あの時間帯で味方のオープンシュートをしっかりとつくれて、自分もシュートを決められたので、リズムに乗ることができました。僕とジョシュのピック&ロールが効いていたことも、コート上で分かっていました」という手応えにあふれたコメントからも、それが伝わるだろう。
キャプテンの富樫勇樹やコーチ陣からは「もっと自分がファーストオプションとしてプレーしていい」と言われているという。それを念頭に、まわりを生かすことも意識しながら「消極的になり過ぎないように気を付けたい」と今後を見据える。7月にはアウェーで再び中国、韓国と対戦する桶谷ジャパンにとって、齋藤が存分に“らしさ”を発揮することが、再び大一番を勝ち切る原動力になるはずだ。
文=長嶺真輝
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