2026.02.06
大激闘となった韓国戦を終え、開口一番、馬場雄大の口から出てきたのは「バケモノでしたね」の言葉だった。『バケモノ』とは、エースストッパー馬場がマッチアップした韓国代表のエース、イヒョンジュンのことだ。
Bリーグで首位を走る長崎ヴェルカの最強ウイングコンビにして、チームメートであり、日韓のライバル。馬場雄大とイヒョンジュンのマッチアップは、日韓戦の前から一番の話題であり、注目を集めていた対決だ。
「ヒョンジュンはものすごいシュートスキルがありますし、チームの勝利のために尽くしてくれるので、本当に心強い選手です。性格はすごく明るくて、チームにいいムードをもたらしてくれる選手。僕たちはいつも英語でいろいろな話をしているんですよ」と馬場が言えば、ヒョンジュンは「ババ(馬場)のフィジカルなディフェンスと走力は本当にすごい。リーダーシップもあるし、食事の面から自己管理を徹底しているので、学ぶところが多いです」と互いに認め合っている。
また、2人にはたくさんの共通点がある。NBL(オーストラリア)とGリーグ(アメリカ)でプレーしてきた境遇が同じのうえ、NBLでは馬場がメルボルン・ユナイテッド、ヒョンジュンがイラワラ・ホークスをそれぞれ優勝に導いた実績もある。
「僕たちはヴェルカでチームメートというだけでなく、本当に似た環境で成長してきたので、気持ちが通じ合うというか。そんなヒョンジュンと国を代表して戦えることは誇りに思います。でも、だからこそ負けられない。ヒョンジュンの特長は自分がいちばんよくわかっているし、彼を抑えないことには韓国戦の勝利はあり得ませんから」
馬場がこう話していたのは試合前日のこと。そして、迎えたティップオフ――、予想どおり、出足からヒョンジュンに対してマッチアップに燃えるジャパンの18番がいた。

馬場は効果的な3ポイントを決めた [写真]=fiba.basketball
ヒョンジュンは馬場を筆頭とする日本のディフェンスをかいくぐって、3ポイントシュートやドライブで着実に得点を重ね、リバウンドをもぎ取っていった。対して馬場もカッティングからの合わせや好アシストを披露。ともに、長崎ヴェルカで見せるプレーを展開しながらも、ヒョンジュンの場合は韓国代表ではよりエースモードになることから、この日は一段と凄みに磨きがかかっていた。
互いの見せ場となったのは、後半残り5分を切った場面。馬場を目の前にしてヒョンジュンが3ポイントシュートを決めて4点のリードを奪えば、馬場もすぐさま3ポイントシュートをやり返して1点差に詰め寄ったところだ。胸が熱くなるような2人のやり合いに、沖縄サントリーアリーナは興奮のるつぼと化した。
「あの場面は韓国に流れがいってもおかしくないシーンだったので、決め切ることができてよかったです。彼だけに見せ場を作らせるわけにはいかないですからね」と、馬場は笑顔で試合を振り返ったが、「でも、彼にはやられてしまいましたね」とも語った。
馬場はヒョンジュンのことを『バケモノ』と表現したが、その理由は2つ。1つはヒョンジュンからは「国を背負って戦っている覚悟を感じた」ことだ。25歳の選手が国を背負っている姿に「この試合は簡単にはいかないなと、試合の出足から思いました」という。
2つ目は「対策をしてもなお、28点取られたこと」だ。
「彼、結構フィジカルに攻めてきて、28点も取られましたね。スカウティングをしっかりやって対策しても、彼で来るってわかっていてもなお、これだけの点数を取ってくる。そんな選手はあまり見たことがありません。やっぱり『バケモノ』ですよ」

桶谷新HCの指示を受ける馬場 [写真]=fiba.basketball
Window2の韓国はインサイドの主力が負傷で不在だったこともあり、スモールラインナップでどこからでも打てる陣容でスタメンを固めてきた。そのため、日本としてはヒョンジュンをフェイスガードで守りながらも、ほかのシューターたちに対してヘルプを意識したディフェンスをしていた。それに対して韓国は、巧みなスクリーンやセットプレーを使い、馬場のマークからヒョンジュンを剝がすことを徹底してやってきた。
こうしたやり合いのなかで、日本は“バケモノ”を完全には抑えることはできなかったものの、試合の終盤にはディフェンスの修正が効き、相手のミスを誘うことができたのではないだろうか。
ヒョンジュンが馬場の目の前で3ポイントシュートを打ったのは1本。第4クォーター残り7分25秒、フェイドアウェイ気味のタフショットで3ポイントシュートを決め、韓国が6点差をつけ、日本がタイムアウトを取ったシーンだ。これは難しいシュートを決め切ったヒョンジュンを褒めるべきだろう。ヒョンジュンの場合、ほんの少しのすきがあればクイックリリースで打ってくる。馬場としては「バケモノ」というしかない。
ただし、勝ったのは日本だ。試合をやり切った馬場はこう述べた。
「正直、絶対に負けたくなかったです。ヴェルカのチームメートとしても、彼がエースの韓国代表にも。彼に負けるイコール、それは僕が守れなかったということですから。勝ったことで、意地を見せられたかなと。まあ、あれだけ点数を取られたので彼のすごさは証明されたんですけど、勝負は僕らが勝ったということで。次の韓国戦までは冗談で『俺が勝ったからな』ということを彼に伝えていこうかな、と思います(笑)」
日韓戦でヒョンジュンにディフェンスをするにあたり、馬場は決意していたことがある。
「ヒョンジュンの僕に対する言葉や姿勢からは、僕のことを本当にリスペクトしてくれることを感じています。だからこそ、僕も同じ思いで彼に接しているのですが、最近思うのは、その関係性がすごく刺激になっているということ。改めて彼の存在が僕を奮い立たせてくれるというか、もっと成長したいという思いにさせてくれるんです」
韓国戦で馬場が貢献したのはディフェンスだけではない。苦しい時間帯にニュートラルボールやリバウンドに跳び込んだり、パスをつないだり、カッティングをしたり、得点を決めたり。多彩な仕事でチームの勝利に貢献した。馬場もまた、ヒョンジュン同様に覚悟のもとで臨み、意地を見せた日韓戦だったのだ。
2人は試合後のコートで熱い抱擁をかわし、健闘を称え合った。
「お互いに『この場で戦うことができてうれしかった』と伝え合いました。彼は、負けて悔しい気持ちを笑いながらですけどぶつけてきて、僕のことをバンッって押したんですけど…そんな彼の気持ちもわかります。本当にかけがえのない40分間でした。きっと彼もそうだったと思います」と、リスペクトし合う2人だからこその時間を共有していた。そして最後に笑顔でこういった。
「日韓戦が終われば、彼とはまた味方としてプレーできます。これほど頼もしいことはないので、また一緒にヴェルカのチームメートとして進んでいきます」

バイウィークが明ければチームメートに戻る馬場とヒョンジュン [写真]=B.LEAGUE
文=小永吉陽子
2026.02.06
2026.02.05
2026.02.02
2025.11.29
2025.11.20
2025.11.14
2026.03.03
2026.03.02
2026.03.02
2026.03.01
2026.03.01
2026.03.01