2026.09.08

神社の階段を駆け上がり、体育館を探す日々…「絶対戻ってやる」阿部友和が過ごした“無所属の1年間”

三重を代表してTIPOFF CEREMONYに参加した阿部[写真]=B.LEAGUE
バスケ情報専門サイト

■約1年ぶりに戻ってきたBリーグの舞台

 選手たちがひっきりなしに行き交うミックスゾーンで、「おかえりー!」と抱きつかれていた選手がいた。40歳の阿部友和だ。

 昨シーズンは無所属だったが、2026-27シーズンを前にBネクストヴィアティン三重と選手契約。待望の“Bリーグ復帰”を果たした。

 9月1日に増上寺で開催された『りそなグループ B.LEAGUE 2026-27 SEASON TIPOFF CEREMONY』に三重を代表して参加した阿部は、「帰ってこれたなという実感がありますね。特にこうやって昔の仲間じゃないですけど、皆が集まるこういう場に来れたということが本当にうれしいです」と率直な思いを口にした。

 喜びをかみ締めると同時に、「ちょっと身が引き締まるというか、やんなきゃいけないなというところも出てきた」と気持ちを新たにする阿部。取材翌日の9月2日には誕生日を迎え、2026-27シーズンは41歳でコートに立つ。ここにたどり着くまでには、長い1年間があった。

■亡き母との約束を胸に「絶対戻ってやる」

[写真]=B.LEAGUE


 2008年にレラカムイ北海道(現レバンガ北海道)でキャリアをスタートし、その後は千葉ジェッツ富山グラウジーズライジングゼファー福岡でプレー。2024-25シーズンはバンビシャス奈良に所属したが、2025年4月に契約満了となってからは新たな所属先が決まらない状況が続いた。

 それでも、現役復帰を諦めることはなかった。その思いの根底にあったのが、2025年3月に亡くなった母親との「40歳までやりきる」という約束。昨年12月には自身のSNSを通じて、「カッコ悪くても、もがいてもがいて、プロバスケット選手を最後まで自分らしく120%でやりきりたい」と現役続行への決意を示していた。

 文字通り、一人でもがく日々を過ごすなかでも、「絶対戻ってやる」という気持ちは揺らがなかった。奈良でチーム練習に参加する機会もあったが、シーズンが始まってからは一人でトレーニングを続ける日々が中心になった。

「その時間も自分と向き合いながら、自分が今何をしなきゃいけないか、どうやったらBリーグに戻る道筋に向かえるのか、というのを毎日毎日考えていました。かなり長い期間、自問自答はありましたけど、やってきたことが無駄じゃなかったなという思いはあります」

■自ら体育館を探し、神社の階段を駆け上がった日々

[写真]=バスケットボールキング


 長いプロキャリアの中でも、これほど自分自身と向き合う時間はなかったという。「逆に大切な時間だったんじゃないかな」と、今ではこの1年間を前向きに捉えている。

 所属チームがなければ、練習環境も自ら整えなければならない。実家のある福岡に戻った際には、市内の体育館へ自ら電話をかけ、空いているコートを探した。

「『空いていたらラッキー』ぐらいの気持ちで。やっぱり福岡は体育館がなかなか空いていないので、空いている体育館があったらそこに行って、毎日毎日違う場所で一人で練習していましたね」

 年配者がバレーボールやバドミントンを楽しむ隣で、一人でスキルトレーニングに励むことも。さらに体力を維持するために体育館を走り込み、近くの神社の階段を駆け上がるなど、試行錯誤しながら準備を続けた。

[写真]=バスケットボールキング


 中でも難しかったのが、単純な走力とは異なる「バスケット的な体力」を維持することだったという。

「バスケットってただ単に走るだけじゃなくて、相手と体がぶつかって、走って、ディフェンスをやって、フットワークをやって…という繰り返しなんです。やっぱり5対5の対人プレーをできる環境はなかったので、“ただの体力”とはまた違う“バスケット的な体力”が落ちないようにしなきゃいけなかった。そこはすごく考えながら、いろいろなトレーニングだったり、ラントレを入れながら、強度を落とさないようにしていましたね」

 いつチャンスが訪れてもいいように、「準備だけはしなきゃいけない」と体を動かし続けた。

■全てを懸ける覚悟「でも、まだ上には圭さんとかがいるから(笑)」

 その積み重ねが実り、今年5月に三重との契約が決まった。6月下旬からチーム練習に参加し、奈良で練習に加わっていた時期から数えると、約8カ月ぶりに本格的なチーム活動へ戻った。

 再び仲間とバスケットボールができる日々を前に、阿部の言葉からは充実感がにじむ。

「Bリーグが新しくなる年を、僕もプレーヤーとして迎えられることが本当にうれしいですし、もう僕個人としては、楽しむだけなのかな」

[写真]=B.LEAGUE


 充実感をかみ締める阿部は、三重が掲げる「ALL IN」というスローガンに、41歳で迎える今シーズンへの思いも重ねている。

「チームも『ALL IN』というテーマを掲げているので、僕個人としてもそれを掲げながら、“全てを懸けた”先に見える景色をまだ見たいなと思っています」

 無所属の1年間を乗り越え、再びプロバスケットボール選手として迎える新シーズン。その覚悟について尋ねると、阿部は笑いながら、自身より長く現役を続ける大ベテランの名前を挙げた。

「でも、まだまだ上には(五十嵐)圭さんとかがいるから、何も言えないですけどね(笑)。“粉骨砕身”とかではないですけど、でもその気持ちで行った先に見える景色があるのかなとは思っています」

「絶対戻ってやる」と自問自答を続けた1年間。亡き母との約束を胸に歩みを止めなかった阿部は、再びプロバスケットボール選手としての日々をスタートした。41歳で迎えるシーズンの先に、どんな景色が待っているのだろうか。

阿部 友和の関連記事

B.NEXTの関連記事