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「楽しもうと思って決めた挑戦」…日本代表でも活躍した今野紀花が新天地・ENEOSでの飛躍を誓う

ENEOSに移籍した今野紀花に新シーズンへの意気込みを聞いた [写真]=ENEOSサンフラワーズ
フリーライター

■Wリーグ初制覇を経て新天地へ…「新しい環境での挑戦が自分の成長に必要」

ユナイテッドカップでENEOSのユニフォームに袖を通した今野 [写真]=Wリーグ

「本当にたくさん、いろいろあります」

 そう切り出した彼女は、移籍に至った理由や思いをゆっくりと語り出した。

 今野紀花。179センチのシューティングガードは昨シーズン、シックスマンとしてデンソーアイリスのWリーグ初制覇に貢献。これまでの3シーズンで着実にレベルアップを図ってきた。だが、今シーズンよりデンソーを離れ、活躍の場をENEOSサンフラワーズへと移すことになったのだ。

「ガードとしてレベルアップしたいという思いが強くありました。アメリカから帰ってきてトップチームのことは何も分からず、気持ちの面も十分ではなかったところからリツさん(高田真希)やダンさん(馬瓜エブリン/現ENEOS)、ヒマさん(赤穂ひまわり)、そしてリュウさん(川井麻衣)たちも加入して、すごいメンバーのなかで3年間、デンソーではもがきながらやらせてもらいました。そして(昨シーズンは)優勝し、3年間をやり切れた。そこから次にまた新しい環境で挑戦したい、それが自分の成長に必要なのではないかと考えるようになりました。相当に迷いましたし、何が正解かは分からないけれど、(決めたことを)正解にしようという気持ちです」

 悩み抜いた末の決断。それこそ、昨シーズンのデンソーでのパフォーマンスを見れば、これからデンソーの主軸として活躍し、よりチームを引っ張る存在になっていくのだろうと想像した人も多かったのではないだろうか。それについて今野はこう話す。

「私はデンソーが大好きだったし感謝もしているので、デンソーに長くいて信頼を勝ち取って、新たに入る選手たちを引っ張るという挑戦も選択肢としてあったと思います。でも、それと同じくらい新しい挑戦にも価値があって。例えば世界だったら(所属チームから)カットされてほかのチームに行って、またカットされて別のチームでということが当たり前に行われていて、選手の流動性も高い。どんどん環境が変わっていくなかに、(選手は)必要なものが絞られ、どのチームに行っても自分の力を発揮することを求められていく。そういう世界線もあると考えると、いろいろなところに身を置いて、それでも自分のやり方を見つけながら成長することも1つのあり方なのかなと考えました。今回の挑戦に恐怖はなく、興味があったしやらずにはいられなかった。『やってみよう』というような考えでした」

 今野は地元宮城県の聖和学園高校卒業後に渡米。NCAAディビジョンIのルイビル大学でプレーし、その後デンソーへと入団した経緯がある。アメリカ時代のチームメートや対戦相手などの多くがWNBAやヨーロッパなど各国のチームでプレーし、そこで生き残りを懸けた争いや移籍を繰り返している。それを大学時代から近くで見てきた影響もあるのだろう。「みんながそうやってバスケットをしているのを見ていると、もちろん1つの場所にとどまることもいいのですが、それだけではない生き方もあるなと思って。(所属を移して)挑戦することも価値があると考えました」と言う。

■悔しさと確かな手応えを得たワールドカップ…「チーム1」の数字もマーク

日本代表の一員として9月にはワールドカップに出場 [写真]=fiba.basketball

 9月には女子日本代表としてドイツ・ベルリンで開催された「FIBA女子バスケットボールワールドカップ2026」に出場。チームは準々決勝決定戦で敗れてベスト8という目標には届かなかったが、今野自身は1試合平均10.0得点2.5リバウンドをマーク記録。加えて、1.5スティール、試合中の貢献度を表すEFF(Efficiency/効率性)では11.0と、2項目でチーム一となる数字をマークした。

 世界との対戦を終えた今、今野はワールドカップをこう振り返る。

「ワールドカップ前まで調子が悪く、自分のリズムや形を模索する時間が続いたのですが、(国内合宿の)最後にコーリー・ゲインズヘッドコーチ(HC)にもう一度自分の役割を聞き、コミュニケーションを取ったことで自分のなかでも整理することができ、(ドイツ入り前の)ベルギー遠征からはアグレッシブになって徐々にリズムをつかめるようになりました。ワールドカップでも一度スッとなったというか、集中できるようなタイミングがあって、そこから力を発揮し始めたように感じています。でも、個人的にはそれまで以上の力が発揮できたとは思いますが、結果としてチームが勝てなかったので本当に本当に悔しいです。勝てない…、むなしい…。マリにしか勝てていないですからね。日本としての悔しさはすごく大きいです」

 ただ、最終的には日本は12位で終わった大会も、その戦いに身を置いたからこその手応えもつかんだ。

「代表期間ずっと取り組んできた相手に体を当ててフィニッシュすることやオフハンド(の使い方)などは、それを実際に世界の舞台でやることができ、得点につなげられたという実感はありました。それが自信にもなりましたし、ディフェンスでも意外とアグレッシブにできたかなと感じています」

 一方で「まだ私にはゲーム中の全体を理解する力が少ないなと感じています。今何が起こっていてゲームの流れ的にどれが効いているのか、ここがうまくいってないといったことなど、コーチに言われた以上の判断をコートでして、相手を倒すという力が足りないと思いました」という課題や気づきもあった。加えて、他国のなかでもアメリカの戦いを見て大きな学びと刺激もあったようだ。

「セットプレーに対してアメリカの『遂行』は点を取るまでが遂行なんですよね。だからセットプレーのなかのスクリーンの1つを取っても、相手が絶対にスイッチしなくてはいけないようなスクリーンをする。私たちはセットプレーを遂行したけれどオープンにならなかったという判断になったこともあったけれど、アメリカはいかに相手が嫌だと感じることをするかという直感やクオリティがすごく高いと思いました。だからコート上で相手を倒すことを実行するという頭の使い方、発想の転換もまだ足りなかったと思いますね」

 こうしたかけがえのない経験を経て、10月からは新天地での戦いが始まる。その新たなシーズンに、「リバウンドもそうですが、ワールドカップで学んだゲームのなかでどうやって全体を理解して自分で判断してゲームに影響を与えるかというのは今シーズンの自分のチャレンジにしたいと思っています。それがいい方向に働いてチームの力になればいいですし、自分の成長になるとも感じています。でもやっぱり、今シーズンは得点面を期待されていると思うので、そこはずっと取り組んできてワールドカップで実際できたことをWリーグでもしっかりやり続けたいです」と、抱負を語った。

「きついなと思ってしまうときもあるのですが、そのたびに我に返って、いやこれは楽しもうと思って決めた挑戦だ、というところに帰るようにしています。その都度1歩引きながら、帰るところに帰りながら。でも総じて今はスタート地点だと思っていて、ワクワクしています」

 大学進学に際し、「アメリカという選択肢が与えられたのなら挑戦しないと後悔しちゃうなと思って決めました」と、目を輝かせたときから8年が経つ。常に向上心を持ち、そして何よりチャレンジを楽しもうとする姿はあのときも今も変わらない。今野は自分らしく、己が決めた道を突き進んでいく。

文=田島早苗

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