2022.05.10

【中川聴乃が川崎優勝のカギを語る】「手堅いディフェンスから素早い展開へ」

5年連続でチャンピオンシップ進出を果たした川崎ブレイブサンダース[写真]=B.LEAGUE
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 5月12日から戦いの火蓋が切って落とされる「B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2021-22」。5大会連続5回目のCS進出を果たした川崎ブレイブサンダースは、悲願の初優勝を目指して戦うこととなる。CSでは名だたる強敵が待ち受けているが、優勝するためには何が必要なのか。Bリーグで解説を務める中川聴乃氏に話を聞いた。

インタビュー・文=岡本亮
取材日=2022年4月14日

――川崎ブレイブサンダースの今シーズンの戦いぶりについてどんな印象を持っていますか。
中川 チームの核だった辻直人選手が広島ドラゴンフライズへ移籍しましたが、新戦力がうまくハマったと思います。昨シーズンから本格的に取り組んでいるビッグラインナップも機能していますし、これまで積み上げてきた基礎に新戦力が加わったことでより強いチームになりました。

――川崎は今シーズン連敗が一度のみと安定した戦いぶりを披露しています。
中川 やはりここ数年の積み上げが大きいと思います。主力の選手が大きく変わらずに戦力がアップしていますし、チームとしての方針もブレることなく強化できている状況ですので、戦いぶりも安定しています。

――今シーズン新たに加わった新戦力の評価を教えてください。
中川 マット・ジャニング選手はポイントガードの要素がありながら、3ポイントシュートという武器を持っています。川崎のシュートアテンプトが増えたのは彼の影響が大きいと思います。

 前田悟選手もアウトサイドシュートが非常に上手で、ディフェンスもしっかりしている。どんな試合でも安定して活躍できる選手ですし、ジャニング選手と前田選手というタイムシェアできる選手が加わったのはチームにとって大きな存在ですね。

――藤井祐眞選手は今シーズンほとんどの試合で先発を務め、日本代表にも選出されました。
中川 藤井選手はチームの心臓だと思っています。彼がコートにいることで周りの選手の機動力がアップするので流れが作りやすいですし、出だしから勢いを持って入れるのは非常に大きいです。バスケットボールは特に出だしが重要なので、そういう意味でも藤井選手は大きな役割を果たしてくれていると思います。

藤井は今季ほとんどの試合で先発出場し、チームにエネルギーを与えた[写真]=B.LEAGUE


――藤井選手と入れ替わる形で篠山竜青選手がシックスマンとして起用されるようになりました。
中川 昨シーズンは少し調子が落ちているのかなと感じていましたし、本人も後から出てくる難しさというのを感じていたと思うのですが、今シーズンは力を抜いた状態で自分のパフォーマンスに全力で集中できるようになったのかな、と。役割を徹底できるようになったので、流れを変えたりエネルギッシュにチームメートを引きこんだりということができるようになりました。

 今シーズンから藤井選手がキャプテンに就任しましたが、篠山選手のキャプテンシーはチームになくてはならないものですし、要所でリーダーシップを発揮してくれているのが大きいですね。

「チームとして連動し続けることが重要」

――今シーズン最も成長した選手を教えてください。
中川 増田啓介選手です。辻選手が移籍したのは大きなインパクトでしたが、今ではそれを感じさせないくらい成長したと思います。ディフェンスやルーズボールなど数字で表しにくい部分が彼の良さだと感じていて、チームが少し崩れた時にリバウンドやルーズボールなどで頑張ってくれる。自分の得点につながらなかったとしても周りを生かしてくれるので、今シーズンは非常に大きな成長を遂げたと感じています。

中川氏は増田の献身性を高く評価した[写真]=B.LEAGUE


――シーズン終盤ということもあり選手には疲労が溜まっていると思いますが、疲労度はどのように見てとれますか。
中川 佐藤賢次ヘッドコーチは、シーズンを戦う中で各選手のコンディションを整える難しさを感じながらもタイムシェアをしっかりと意識していると思います。疲労は当然あると思いますが、どの選手が出ても力の差がないチームですし、各選手が与えられた役割を担って戦えています。

――川崎は新型コロナウイルスの感染者が出たり、直前で試合が中止になったりとさまざまな影響を受けました。
中川 試合が直前に中止となると、やはりガックリ来ますよね。新型コロナに感染すると隔離期間があるのでコンディションを戻すのに3週間くらいかかりますし、その中ですぐに試合に出ないといけないので体がなかなか追いつきません。プロスポーツ選手は日常的に激しい運動をしているぶん一般人より免疫力が落ちており、少しのことですぐ体調を崩してしまうので、各選手ギリギリのラインでやっていると思います。

――川崎のBリーグでの最高成績は準優勝。チームとしてもう一段階上に行くために必要なことは?
中川 一番重要なのはディフェンスです。手堅く守ってスピーディーな展開に持ち込んで流れをつかむチームなので、選手が孤立するような状況になると良さが出ません。ですので、チームとしてディフェンスを徹底すること、そこから機動力を生かして素早い展開につなげるのがすごく大事になると思います。

――どんな状況になってもチームとして戦うことが重要ということですね。
中川 そうですね、チームとして連動し続けなければいけません。今シーズン敗れた試合ではチームとしてうまく噛み合わずに選手が孤立してしまうケースが多かったので、うまくいかない時こそチームでオフェンスし、チームでディフェンスする。これができれば優勝できるだけの力はあると思っています。

――Bリーグ制覇へのキーマンは?
中川 藤井選手とニック・ファジーカス選手ですね。藤井選手は激しいプレッシャーディフェンスから流れを変えられますし、チームの熱を高められる。ファジーカス選手は安定したパフォーマンスを見せてくれるうえに爆発的な得点力もあるので、この二人の力がうまく組み合わさると相手にとっては難しい状況になるのではないでしょうか。

ファジーカスはBリーグ初制覇の原動力となれるか[写真]=B.LEAGUE

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