2022.10.06

プロの第一歩を踏み出した高橋快成…開幕節での悔しさとともに前進する

プロとしての第一歩を記した三遠の高橋 [写真]=B.LEAGUE
1981年、北海道生まれ。「BOOST the GAME」というWEBメディアを運営しながら、スポーツジャーナリストとしてBリーグを中心に各メディアに執筆や解説を行いながら活動中。「日本のバスケの声をリアルに伝える」がモットー。

 三遠ネオフェニックス――このオフシーズンの話題を集めたチームがBリーグ2022―23シーズンの開幕節、強豪の川崎ブレイブサンダースを浜松アリーナに迎え撃ち、新たな船出をした。

 そのチームの中で、プロとして新たな歩みをスタートさせた若干19歳の司令塔がいる。特別指定選手として加入した高橋快成だ。岐阜県の富田高校時代にB3の岐阜スゥープスでデビュー後、中京大学に進学し、2022年7月に開催された全日本大学バスケットボール新人戦(プレ大会)では優秀選手賞とアシスト王の個人タイトルを受賞。さらにはその後、A東京や琉球の練習に参加していたが、9月7日に三遠への加入を電撃的に発表した。

 両日4000人を超える観客が集結したアリーナで、高橋自身は2日間ともにコートに立ち、プロデビューを果たす。開幕戦となった10月1日は9分30秒の出場で4得点1アシストとスタッツを残すも、一方で3つのターンオーバーを犯してしまう。翌日は第1クォーターの終盤から出場するものの、相手に厳しいプレッシャーに同じくターンオーバーを犯してしまうと、その後すぐに交代を告げられた。この日は、わずか1分46秒の出場時間にとどまった。

 チームも川崎相手に一歩も引かず、最後の最後までクロスゲームを展開するも勝利を収めることはできず、連敗スタートとなってしまった。10月2日での第2戦終了後に大野篤史ヘッドコーチは「あきらめない気持ちで最後まで戦い、そして選手の気持ちが出た、良いゲームだった。だからこそ、本当に勝たせてあげたかった。それに尽きます」と悔しさをあらわにする。その中で高橋に対して、冷静な分析をしつつも、期待に溢れる言葉を残した。

「何も失うものがない中で少し上手くやろうとし過ぎちゃっているかなと……昨日も9分間で3つのターンオーバー、それだとPGとしては辛いし、ゲームを任せられない。特別指定選手だろうが、プロなので関係ない。彼のいい部分はアグレッシブなディフェンス。そこを表現して練習はもちろん、ゲーム序盤で自分はこれだけできるという部分を見せて、今いるポイントガードの中でプレータイムを実力で勝ち取ってくれたらと思います」

 高橋自身はチームが連敗を喫したことに対して「すごく悔しい」と言葉を残した上で、自分自身がもっとプレーで貢献したかったという想いを吐露した。

「もう少し自分がメインでコートに立つつもりで、試合に出たかったのはあって……でも、シーズンは長いから切り替えて、まずはチームの勝利に貢献することを目標に、そして自分がメインでプレーできるように日々過ごしていきたいです。今、他の大学生とかにはできない経験をしている中で、この時間を大切にしたい。この機会を与えてもらって本当に感謝していて、その部分は結果で恩返ししていきたいから、自分の良さをしっかり見せて頑張りたい」

 この開幕節で高橋自身の持ち味が発揮できなかった部分に対しては「大野さんのバスケットを遂行しなきゃという想いが強くて、色々と悩んでいた」という葛藤があった中で、自分の良さを思い切り出していけば、自ずとチームの勝利に繋がるという答えを導き出した。その答え合わせは、彼自身がシーズン通して表現するプレーでしか表現できない。答え合わせで正解し続けた先に、心に決めている将来の目標を達成させることへと繋がるはずだ。

「現時点で自分自身の目標は『Bリーグを代表するPGになる、そして日本代表として世界と戦うこと』です。周囲からは何言っているのかと思われるかもしれないけど、自分は信じています。その目標を叶えられるように継続して成長していくだけです」

高橋は「Bリーグを代表するPGになる、そして日本代表として世界と戦うこと」と目標を明確に持つ [写真]=B.LEAGUE


「実はすごく楽しみでした」という気持ちの中で戦った川崎は、高橋の地元・神奈川のチーム。加えて中継の解説がプロの世界を全力で後押ししてくれた中京大学の松藤貴秋HCであった。コーチとは当日は会うタイミングは無かったものの、3日前に電話で「頑張れよ」とエールを送られたことを明かしてくれた。

 色々な想いを抱いて臨んだプロデビューとなった2連戦。夢への道はここから、ポテンシャルと成長しかない高橋の姿から目が離せない。

文=鳴神富一

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