2023.02.01
B1リーグの富山グラウジーズは1月26日現在、7勝25敗の成績で総合22位に位置している。同月15日には浜口炎ヘッドコーチ(HC)との契約を解除し、高岡大輔アシスタントコーチがHC代行を務めると発表した。低迷の原因としてチーム内外の意見が一致するのはターンオーバーの多さで、504(平均15.75)はリーグワーストタイとなっている。ミスを減らし、試合の主導権を握るべく、高岡HC代行は「若手ポイントガードの独り立ち」「ピックアンドロールを起点とした攻撃」をキーに挙げた。
文=横田直
「炎さんとご一緒できなくなってしまいました。炎さんの志向するバスケと、ベースの考えは私も同じです。炎さんとつくってきたチームを変えることはなく、新たなテイストを加えたい気持ちです」
高岡HC代行は選手時代、浜口氏がHCを務めていたbjリーグ・仙台89ERSで2シーズンを過ごしている。2011年、東日本大震災の発生で仙台が活動休止したのを機に二人は袂を分かったが、Bリーグの2020-21シーズン、富山で再会した。
今シーズンの富山の平均得点77.4はリーグ15位。かつてはどれほど失点を重ねても、リーグ最強と称された攻撃力でカバーしていたが、そのチームスタイルに陰りが生じた。攻撃時に焦りからターンオーバーを犯し、失点する悪循環が続いている。コーディ・デンプスがポイントガードの中核を担うが、相手のプレッシャーにさらされる時間が長く、ターンオーバー数85はリーグで6番目に多い。ターンオーバー数上位10人のうち、デンプスの平均出場時間(24分57秒)は最も短く、リーグ内でもミスが目立つ存在といえる。
控えポイントガードの新人・浦野泰斗もまたターンオーバー数21を記録した。今シーズン、富山に特別指定選手として加入した大学生は2人ともポイントガードであり、チームの課題について現場とフロントの思惑は一致していると、高岡HC代行は述べる。「誰かにボール運びからゲームメイクまでを完全に任せるというのではなく、デンプス選手の負担を減らしたいという意図です。学生たちの力は未知なので、私にアピールしてほしいですね」。
今シーズン、浜口氏が指揮していた段階から、若手をポイントガード起用する動きはあった。シューターの野﨑由之、ディフェンダーの飴谷由毅らがボールを運ぶ姿は散見されていたが、高岡HC代行は今後、飴谷のポイントガード起用を増やすことを視野に入れている。
飴谷は大東文化大在籍時から今日にいたるまで、いわゆる「2.5番」のプレーを持ち味としてきた。一方で、U-22日本代表での経験などを経て、将来的にはポイントガードを務めることを本人が想定し、ガードスキルも磨いている。高岡HC代行は「飴谷選手のサイズ(身長190cm)は何ものにも代えがたいポテンシャルであり、チーム内で最もポイントガード適正を感じています。彼に責任を持たせて、やるしかないという心境です」。
この試みは、富山のオプションとしてあまり活用されてこなかった、ピックアンドロールを起点としての攻撃にもつながる。「ドナルド・ベックさん(18~20年に富山HC)も炎さんも、ピックアンドロールが少なかったのですが、ジョシュア・スミス選手らを生かすには、起点が欠かせません」と、高岡HC代行は指導に熱を込める。
富山は1月21・22日とホームで戦い、次戦は同月28日・29日、同じくホームに秋田ノーザンハピネッツを迎える。昨今は水曜日の試合開催が多く、練習時間を十分に確保できないジレンマがあっただろう。この1週間は充実した練習が行えたのではないかと高岡HC代行に水を向けると、意外な言葉が返ってきた。
「選手たちには月曜・火曜としっかり休養をとってもらいました。炎さんがこれまで、いかに休養日をつくるかに腐心していたのを見てきましたので、炎さんからの『学び』といえますね。水曜日からはハードに長時間、練習できています」
プレッシャーディフェンスを得意とする秋田は、富山にとって苦手な部類のチームといえるが、高岡HC代行は「ターンオーバーせず、攻撃の流れを生み出します。さらにリバウンドを含め、ボールへの執着心を高めれば、白星も拾えるはずです。目標はB1残留ですが、先ばかり見ていても仕方ありません」と、眼前の1戦で勝利を目指す。
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