2023.04.08

今季初先発のA東京・平岩が奮起「みんなの力が後押ししてくれました」

今季初の先発起用にこたえたA東京の平岩 [写真]=B.LEAGUE
バスケットボールキング編集部

 4月5日、アルバルク東京がホームに宇都宮ブレックスを招いての一戦は、前節のシーホース三河戦に連敗していただけに、絶対に落とせないゲームだった。しかし、藤永佳昭安藤周人小酒部泰暉ライアン・ロシターはベンチ入りはしていたものの、試合には出られない状況だった。

 2009年からコーチとしてのキャリアをスタートさせ、母国リトアニアの代表ヘッドコーチの経験を持つ百戦錬磨のデイニアス・アドマイティスヘッドコーチにとっても、実際にコートに立てるメンバーが8人のみという状況は初めての経験だったという。そんな緊急事態の中、今シーズン初先発を任されたのが平岩玄だ。

 実際に平岩には先発起用は告げられなかったというが、「昨日の練習の5対5のラインナップで察しました」と、試合後の記者会見で明かしてくれた。そして「あんまり気負わずにしっかり相手の映像を見て準備しようと心がけていました」ともコメント。

 限られたメンバーでの試合だけに、プレイングタイムのシェアを含め、綿密なゲームプランを準備して臨んだこの試合、第1クォーターは0−6のランを食らうほど、決していい出だしではなかった。A東京ベンチは開始2分31秒に早々とタイムアウトを請求、立て直しを図る。

「慌てず仕切り直しをしようと、ゲームプランを確認して送り出した。直後、選手たちが対応。タイムアウト後は自分たちの流れに持っていけたことは大きかったと思う」とアドマイティスHCが振り返る。落ち着きを取り戻したA東京はマンツーとゾーンのチェンジングディフェンスで宇都宮のオフェンスを抑えてリズムをつかんでいく。そして第3クォーターから第4クォーターにかけて、この試合でゲームハイの27得点をマークしたセバスチャン・サイズのインサイドプレーを中心に12−0のランで宇都宮を突き放すことに成功。

 最終スコア81−67でA東京が勝利。対象チームがこの日敗れたことで、CS出場のマジックナンバーを「1」とし、4月8日の試合に勝てば、昨シーズンに途絶えたリーグチャンピオンへの戦いに2シーズンぶりにコマを進めることになる。

 平岩は25分46秒の出場で、7得点3リバウンドのスタッツを残している。その平岩のパフォーマンスについてコメントを求められたアドマイティスHCは表情を緩ませた。

「(平岩は)素晴らしい仕事をしてくれた。特にスタッツに表れない泥臭い仕事をしてくれたと思う。平岩選手のように毎日がむしゃらに練習している選手が結果を出すのはうれしい」(アドマイティスHC)

 この試合でベンチ、アリーナが最も盛り上がりを見せたのが4クォーター残り8分9秒、平岩がジャンプシュートを沈めてバスカンを決めた場面。ベンチは総立ちになり、ファンからの拍手もなかなか鳴り止まなかった。平岩はボーナススローも決めて、66−50とリードを広げたが、この得点が試合の行方を決定的とするビッグプレーだったと言えるだろう。

 歓喜に湧くコートの中で一番感情を爆発させていたのは実は決めた平岩ではなく、吉井裕鷹だった。大きくガッツポーズを繰り返し、チームメートのビッグプレーを自分のことのように喜んだ。

 その場面を平岩は、「うれしかったです。うれしかったし、僕だけの力じゃなくて本当に応援してくれるベンチの選手とか、ワークアウトしてくれるコーチとかトレーナー、本当にみんなの力が後押ししてくれて、普段の僕もより力が出たので、良かったと思います」と振り返った。

 さらに吉井のリアクションに質問が及ぶと、「吉井とは2年前から同じチームでプレーするようになり、ポジションも似ています。お互い悩んだりとか試行錯誤しながら毎日練習をしてきている仲なので、僕も吉井が活躍するとうれしいですし、そうやって喜んでくれて良かったです」と笑顔を見せた。

 またファンの歓声について聞かれると、それはしっかりと耳に届いていると感謝の言葉を述べた。「ファンの方の応援はすごく感じているし、(A東京に)入団してからの頑張りをずっと見てきてくれていると思います。ですので、サイドラインに立っていても『頑張れ』という声聞こえますし、なんか良いなと思いました」。

この一戦で最も盛り上がったシーン。バスカンを決めた平岩にベンチが熱く迎えた [写真]=B.LEAGUE


 シーズン終盤、A東京にとって苦しい状況はまだ続いていくだろう。ただこれを乗り越え、そしてメンバーが戻ってきたとき、さらにチーム力がアップ。CSに向けて勢いを増すに違いない。

取材・文=入江美紀雄

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