2023.10.04

【B1シーズン展望】王者所属の西地区は昨季以上に大混戦…24クラブの頂点に立つのは

昨シーズン王者の琉球ゴールデンキングス [写真]=B.LEAGUE
スポーツライター。前英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者。Bリーグ、男女日本代表を主にカバーし、2006年世界選手権、2019ワールドカップ等国際大会、また米NCAAトーナメントも取材。他競技ではWBCやNFLスーパーボウル等の国際大会の取材経験もある。

 8年目を迎えるBリーグの2023-24シーズン。「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」における日本代表チームの躍進を受けて、高揚感がアリーナに漂う。

 今シーズンのB1は、10月5日に先出しで行われる佐賀バルーナーズvs琉球ゴールデンキングスの対戦で幕を開ける。

 選手の移籍が活発になったことで、優勝や順位の予想は年々難しくなっているが、2023-24シーズンを展望していきたい。

 8チームずつに分かれる地区ごとで見た時に最も混戦で面白くなりそうなのが、西地区だろう。ここには昨シーズン王者の琉球ゴールデンキングスを筆頭に、島根スサノオマジック広島ドラゴンフライズ名古屋ダイヤモンドドルフィンズといった好選手をそろえるチームが所属。それに加えて京都ハンナリーズも戦力アップをしており、かつ馬場雄大と契約した長崎ヴェルカとB2王者の佐賀バルーナーズもいて、最も「星の食い合い」が起こりそうだ。

 それでも、琉球が優勝候補の上位にいることに変わりはない。2022-23シーズンに攻守における万能さで千葉ジェッツの準優勝に寄与したヴィック・ローが加わり、桶谷大ヘッドコーチが追い求めるポジションレスなスタイルがさらに進化を見せそうだ。

 東地区は、千葉J、アルバルク東京宇都宮ブレックスを中心とした争いになるだろう。昨シーズンはB1史上最高勝率(53勝7敗)を記録した千葉Jはロー、クリストファー・スミスなどに代わって入ったディー・ジェイ・ステフェンズや帰化枠のアイラ・ブラウン(前大阪エヴェッサ)、ワールドカップ事前合宿で日本代表候補だった金近廉などがどれだけチームにフィットできるかは見どころだ。

 また、千葉Jのジョン・パトリックHC、A東京のデイニアス・アドマイティスHC、宇都宮の佐々宜央HCの3氏はいずれも所属の指揮を執って2年目に入る。戦力の変更はあっても彼らのアイデンティティがより浸透したことで、どれだけチームに安定感がもたらされるかも長いシーズンで大事なポイントとなる。

 それぞれ選手がかなり入れ替わってはいるものの、過去に優勝経験があり「勝つ文化」があるのはやはり強い。ここに辻直人(前広島)とコー・フリッピン(前琉球)などを加えた群馬クレインサンダーズがどこまで割って入れるか。

 中地区からも、目が離せない。この地区の、というよりはB1全体で最も眩しいスポットライトを浴びているのは横浜ビー・コルセアーズではないだろうか。その中心は無論、昨シーズンのMVPや新人賞など「6冠」に輝き、ワールドカップでも活躍した河村勇輝だ。

リーグMVPとして新シーズンに挑む横浜BCの河村勇輝 [写真]=B.LEAGUE

 横浜BCはジョシュ・スコット(前宇都宮)やジェロード・ユトフ(前京都)、杉浦佑成(前滋賀レイクス)などの補強で選手層は厚くなり、初の地区制覇とその先のリーグ優勝も視野に入れる。

 この地区はジョシュ・ホーキンソン(前信州ブレイブウォリアーズ)や田中大貴(前A東京)など大幅な補強を施し、元A東京HCのルカ・パヴィチェビッチ氏を新指揮官に据えるサンロッカーズ渋谷も注目だ。ただ戦力が多いと「交通渋滞」を起こしかねず、必ずしもすぐに勝敗に直結するわけではない。チームが機能し始めるまでには、ある程度時間がかかるのではないか。

ルカ・パヴィチェビッチHCと田中大貴がSR渋谷で再タッグ [写真]=B.LEAGUE

 3地区制の年には3度の中地区優勝を果たした川崎ブレイブサンダースは、中心戦力の年齢がかさむ一方で、若手の新戦力が出てきていない。ニック・ファジーカスが今シーズン限りでの引退となり、チームに結束力は出るだろうが、横浜BC、SR渋谷に比べると戦力がやや落ちると言わざるを得ない。

 全体的に選手移籍が盛んだったということもあって、どう転ぶかわからないチームが多いというのが実情だが、その中でリーグの台風の目になる可能性を感じるチームがいくつかある。1つはシーホース三河。28年という長きにわたって指揮官を務めた鈴木貴美一氏の勇退を受けてワシントン・ウィザーズでアシスタントコーチの経験がある34歳のライアン・リッチマン氏を新HCに据え、チームだけでなく組織に新たな息吹を吹き込んでいる印象だ。

 あまり大きな注目を浴びることは少ないものの、秋田ノーザンハピネッツも面白いのではないか。固いディフェンスで安定感のあるチームだが、今シーズンは熊谷航(前信州)が加入した。新加入した外国籍選手2人の活躍次第ではオフェンスでもスピード感が生まれ、上位の相手に対しても伍して戦えるのではないか。

 総じてチーム間の差が縮まり続けるBリーグの新シーズンは、シーズンの後半までより多くのチームにポストシーズン進出の可能性がある1年になると予想される。

文=永塚和志

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