2024.02.09

茨城ロボッツ「バスケの力で水戸の街を元気に」(前編)

2018年6月9日に地域のこどもたち100人とロボッツの選手たちが一緒に芝生はりで汗を流しました©︎IBARAKI ROBOTS
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株式会社茨城ロボッツ・スポーツエンターテインメントでは『M-HOPE ~みんなの希望~』と題した地域貢献活動に取り組んでいます。どのような経緯で立ち上がり、どのような未来を思い描いているのか。2021年7月から茨城ロボッツの代表取締役社長を務める西村大介氏、官民連携で開設された「まちなか・スポーツ・にぎわい広場(M-SPO)」を運営する株式会社M-SPOの代表取締役社長、川﨑篤之氏にお話をうかがいました。
※本インタビューはB.LEAGUE HOPE(https://www.bleague.jp/b-hope/about/)に掲載された記事を転載したものです。

【インタビュー対象者】
・株式会社茨城ロボッツ・スポーツエンターテインメント:代表取締役社長 西村 大介氏
・株式会社M-SPO:代表取締役社長 川﨑 篤之氏

(左)西村大介氏(右)川﨑篤之氏

――西村さんは2021年7月に茨城ロボッツの社長に就任されました。他クラブでの経験も踏まえて、茨城ロボッツにおける社会貢献活動をどのように捉えていましたか?
西村 私が思うロボッツの最もユニークなところは、まさに社会貢献活動だと思っています。スポーツクラブと地域の関係は、まずは競技が好きな人たちがクラブを作り、そこからクラブの発展のために地域との協力を模索していくという流れが一般的だと思います。

ロボッツの場合は逆で、先に『水戸ど真ん中再生プロジェクト』が動いていました。シャッター街になっていた街を元気にしたいというプロジェクトで、応援することでみんなが心を一つにできるという点から、スポーツに力を入れることが決まりました。そのタイミングで、ロボッツの本拠地がつくば市から水戸市に変更となり、支援を受けることで関係がスタートしていきました。

そういった成り立ちですから、街を元気にすることが我々の存在意義です。単なるお題目ではなく、地域社会への貢献は我々のミッションだと思って取り組んでいます。

――川﨑さんは当時の状況をどのように振り返りますか?
川﨑 『水戸ど真ん中再生プロジェクト』が立ち上がり、地方を元気にするためにわかりやすいキーコンテンツが必要とされ、プロスポーツに注目をしている状況でした。ロボッツが水戸にやってくることになり、県央地域の一つのコンテンツに育てようと議論が進みました。『水戸ど真ん中再生プロジェクト』に関わる行政の方や企業の方の思い、座長である堀義人氏(現茨城ロボッツオーナー)の熱意が一致してスタートしたのが我々の特徴だと思います。

©︎IBARAKI ROBOTS

――2021年12月には地域貢献活動を『M-HOPE(エム-ホープ) ~みんなの希望~』として打ち出しました。
西村 これまで単体での情報発信となっていたものを、我々と手を組む企業や団体の情報発信を兼ねて、一つの事業としてやっていこうとスタートしました。実際に意味があること、本当に社会にプラスになることをやっていくプロジェクトにしていきたいです。また、我々の掲げるものを見て、「一緒にやりたい」という人が増えたらいいなと思っています。

川﨑 我々が「地域とともにやりたいことはこれだ」と旗を掲げたのがM-HOPEです。西村社長が言ったように、バラバラになっていたものを一つのブランドにまとめました。この旗を立てることによって、我々が地域に企画を提案することもそうですが、地域から「ロボッツとこんなことをやりたい」という声が届くようになってきたのは大きな変化の一つです。また、M-HOPEを掲げたことで、社会貢献活動をしたい企業のニーズに応えられるようになってきました。ロボッツを通じて社会に貢献できるというように、企業と活動の橋渡しの役割を担えるようになってきたのも良かったと思います。

――M-HOPEの活動を通じて、特に印象に残っていることはありますか?
西村 ロボスケパンが毎回完売、それも即完売になるのはうれしいですね。これは福祉施設の方々に作っていただいているのですが、「本当においしくてかわいいから買うんです」といった声をいただいています。これはすごく意味のあることだと感じていますし、作っている方々にとっても誇りに思ってもらえるはずです。

社会貢献活動としてではなく、おいしくてかわいいパンだから人が集まる。皆さんとタッグを組んで、こういった商品開発、売出し方ができていることをうれしく思っています。

――川﨑さんは印象に残っている活動はありますか?
川﨑 私が印象に残っているのは、なかなか会場に来られない人たち向けの施策です。昨年は小児がんを患っている子どもたち向けのゴールドリボンのプロジェクト、あるいは高齢者向けの施設への訪問に力を入れました。

このプロジェクトをやっていて良かったと思うのが、施設にいる人や子どもたちが未来を語るようになったこと。「明日試合だよね」「ロボッツは今度勝てるかな」といった会話が生まれたり、施設で流れているロボッツの試合を見ているうちに、おじいちゃんやおばあちゃんに推し選手ができて、「◯◯選手に会いたいね」といった会話も生まれたりしています。スポーツは未来を語り、前に向かって生きる力を生み出せるのだと強く実感した出来事でした。

©︎IBARAKI ROBOTS

――2017年9月に官民連携で「まちなか・スポーツ・にぎわい広場(M-SPO)」を開設しました。
川﨑 M-SPOで我々がやりたかったのは「街の真ん中で子どもたちの記憶に残る空間と体験を作りたい」ということでした。M-SPOは水戸の商店街のど真ん中にあります。M-SPOを作ったことによって、25年近く空き地で、誰も歩いていなかった場所に人が集まるようになりました。選手たちもそこで個人練習をしているのですが、近くを散歩する地元の幼稚園生や保育園児が「あそこにはかっこいいお兄ちゃんがいるよね」と自然に感じられる場所に変わってきています。地元の子どもたちと一緒に芝生の広場化するプロジェクトも実施しました。また、パブリックビューイングなどのイベント時には1000人近くが集まることもあります。街中に人を集める機能として、ロボッツが役割を大きく果たせていると感じますし、最もロボッツらしい側面がある施策だと思います。

©︎IBARAKI ROBOTS

――様々な施策を実施してきましたが、現状の手応えをどのように感じていますか?
川﨑 まだまだ道半ばで、これを継続していくことが大事です。先ほどロボスケパンの話がありましたが、そちらの施設に限らず毎回様々な施設の方が来て、イベントなどをやっていただいています。そういった人たちのためにも、当たり前の場所として存在し続けることが地域貢献につながると思っています。一足飛びにはいかないですけど、プラットフォームとしてそこに存在し続ける環境作りをしていきたいです。

西村 なにかを継続的にやろうとすると、お金が必要になるのは避けられない事実です。今までこういった社会貢献活動は、はっきり言うとお金を生み出すものではありませんでした。ですから、スポーツクラブが本気でこれに取り組むことはあまりなかったと思います。その中で、我々は一緒にやりたいという企業に対して、様々な取り組みを商品として提供できるようになってきました。

企業としても何をしていいかよくわからないということが多いですし、素晴らしい取り組みをしても、ホームページに掲載するだけだとなかなか認知されないという課題があります。我々はそういった企業の要請に応えられるような、提案のラインナップをそろえられるようになりました。また、我々と組むことで、次の日の新聞やテレビに取り上げられ、皆さんにも認知してもらえることもあります。M-HOPEとして活動の柱を明確に打ち出しているので、企業としても賛同する活動をスポンサードしやすくなっていると思います。タッグを組む企業は、これからますます増えていくと思います。

――カラフルな社会づくりについても聞かせてください。
川﨑 私たちは過去2回、試合に合わせてダイバーシティのセミナーを開催し、様々なジェンダーの方にも来ていただきました。スポーツには、壁を乗り越えられる力があると思っています。

この取り組みは人種の問題にも同様なことがいえます。例えば、人によっては外国の方に対して身構えてしまうことがありますが、ロボッツをはじめプロスポーツには日本人選手とともに外国籍選手、帰化選手、様々な肌の色、異なる言語を話す人が力を合わせてプレーしているのが当たり前です。その一人一人を誰もが壁を感じず声をからして応援しています。そもそも壁なんてないよねと感じられるのがバスケットボールだと思っていますし、スポーツだと思います。それはこの先も大事にしていきたいことです。

©︎IBARAKI ROBOTS

――今後の展望を聞かせてください。
川﨑 何かしらの社会貢献活動が求められているのはわかっているけど、何をしたらいいのかわからない、という企業や団体に対して、我々はこれからもいくつも選択肢を提示していく必要があると思っています。地域の企業がロボッツと組むことによって、自らの価値が高まるのだと認めてもらえるまでアクションを打っていく。その結果、少しでも地域社会が良くなっていけばうれしいです。

また、我々が茨城の地域で生きていくためには、社会や地域から本当に必要とされることが重要だと思っています。例えばB.LEAGUE PREMIERに向けた来場者数、売上、アリーナの参入条件は、地方であろうと大都市であろうと、容赦なく我々に求められます。それを30人前後のスタッフで達成するのは難しい。達成のためには、どれだけ地元の皆さんに自分ごととして考えてもらえるかが大事になると思います。

ロボッツのためなら一緒に頑張ると思ってもらえるような存在にならないと、この地方でクラブの運営は成り立たない。地域の皆さんにこの船に乗ってもらうには、我々自身が汗をかいて、必要とされる存在であり続けないといけません。その発露の一つがM-HOPEだと思っています。

西村 私は隠れ茨城県民を立ち上がらせたいと思っています。以前、関西で水戸出身の人に出会ったのですが、その人は最初に「関東出身です」と話したんですよね。茨城出身ではなく。「私はロボッツのある茨城県で生まれ育った」と、誇って言えるようにしたいです。それができたら、一番の地域貢献になるんじゃないかなと思います。

地方に引っ越していった人たちが、茨城出身であることを誇りに思って、試合に行くようになってほしい。我々ロボッツが「スター選手がいる日本一のクラブ」と認識されることで、茨城県を盛り上げられたらと思います。

©︎IBARAKI ROBOTS

本インタビューは後編(2月下旬ごろ公開予定)に続きます。

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