2025.08.20

「おりづるリレー」でつながる平和への願い…広島の三谷桂司朗「バスケの力でよりたくさんの人に笑顔や感動を」

競技の垣根を越えて平和への願いをつないだ[写真]=湊昂大
広島のスポーツライター

 被爆80年を迎えた広島に全国から平和への願いが込められた折り鶴が集まった。

 広島ドラゴンフライズは8月6日から15日にかけて「おりづるリレー」を実施。毎年夏に平和への想いを発信する「おりづるリレー」は、Bリーグクラブなどの参加者がそれぞれ折り鶴を折り、メッセージ動画をリレー形式でSNSに投稿して平和への願いをつなぐ活動だ。

 初日は広島ドラゴンフライズ寺嶋良三谷桂司朗が担当。寺嶋は、「私にとって平和は、スポーツを通じてたくさんの笑顔を作ることです」と話し、三谷は、「広島県出身としてバスケットボールを通じて多くの方に平和を伝えていきたいです」との思いを込めてリレーをスタートさせた。

「おりづるリレー」は2021年の「全国高校生 SDGs 選手権 2020」で武田高校(広島県)が提案した「折り鶴プロジェクト」をきっかけに創設され、今年で5年目となった。第1回はBリーグの選手やスタッフが参加していたが、今では他スポーツのチームや地域団体、アーティストなどBリーグを超えた広がりを見せている。

 被爆80年を迎えた今年は、Bリーグから島田慎二チェアマンやB1の24クラブ、B2の14クラブ、B3の16クラブが参加。Wリーグからはトヨタ自動車アンテロープス、富士通レッドウェーブ、ENEOSサンフラワーズも加わった。

 プロ野球からは地元の広島東洋カープをはじめ、東北楽天ゴールデンイーグルス、東京ヤクルトスワローズ、福岡ソフトバンクホークスから広島出身選手が登場。Jリーグのサンフレッチェ広島など広島を拠点とする他スポーツのチームや、塚本恋乃葉さん(ホリプロ)、HIPPYさん、STU48といった広島にゆかりのあるアーティストなども参加し、過去最多の74団体がリレーで平和への願いをつなげた。

 15日に登場した女子プロサッカーチームのサンフレッチェ広島レジーナに所属するMF柳瀬楓菜は「おりづるリレー」の動画で「スポーツができる平和に感謝し、日々全力で取り組むことが大事だと思っています」とコメント。16日の練習後の取材では改めて平和への思いを語った。

「レジーナに加入して初めて平和記念資料館に行って原爆のことを知って、より広島の街のために頑張りたいという思いが強くなりました。2度とこういうことが起こらないでほしいと思いますし、広島でサッカーをやっているからこそ、自分たちにできることがあると思うので、ピッチに立って、もっとレジーナのサッカーや自分のプレーで、勇気や希望や元気を与えられるチーム、選手になりたいと強く思っています」(柳瀬)

20日の報告会に浦伸嘉代表取締役社長と三谷が出席[写真]=湊昂大


 広島ドラゴンフライズは今年の「おりづるリレー」の締めくくりとして20日に報告会を開催し、浦伸嘉代表取締役社長と三谷が出席した。さらに今年はリレーに参加したSTU48や広島を拠点とするスポーツチームの選手たちも登場。広島サンダーズの井上慎一朗と金子聖輝、中国電力陸上競技部の山口和也、ヴィクトワール広島の久保田悠介、イズミメイプルレッズ広島の山本春花、広島ガスバドミントン部の小田菜摘が参加した。

 報告会の前には参加者一行が広島市の平和記念公園を訪れ、原爆死没者慰霊碑に献花し、千羽鶴が捧げられている原爆の子の像に今回の企画で集まった折り鶴を寄贈した。

 地元出身の三谷は、「広島で生まれて、平和について学習する機会も多く、いろんなことを学ばせていただきました。こうして思い入れのある地に帰ってくることができて、バスケットボールをプレーできる環境が当たり前ではないということを実感することができたので、バスケットボールの力でもっとたくさんの人に笑顔や感動を届けられるような存在になれるよう努めていきたいです」と思いを明かした。

 初参加のSTU48からは広島出身の岡田あずみさんと長崎出身の尾崎世里花さんが参加。キャプテンを務める岡田さんは、「広島出身で普段は瀬戸内を拠点に活動しているアイドルとして、こういう素敵な企画に参加できて光栄に思います。私も小さい時から平和学習で折り鶴を折ったり、8月6日は学校に行って黙祷を捧げたりと、平和について小さい時から身近に考えてきました。これからもより平和について深く考えながら、アイドルという活動を通してたくさんの人に平和の思いを届けられるように頑張っていきたいです」と笑顔で話した。

[写真]=湊昂大


 広島ドラゴンフライズは「おりづるリレー」の他にも、「平和があるからこそのスポーツ」、「スポーツがあるからこその平和」をテーマに2018-19 シーズンから「ピースプロジェクト」を続けてきた。試合では「おりづる交換」や「おりづる賞」を創設し、相手選手へのスタンディングオベーションなど「リスペクト」と「平和の大切さ」を伝える取り組みを実施。また、チームスローガンの「HIROSHIMA PRIDE」には「屈しない魂」や「歴史に学び未来を切り開く情熱」といった被爆から復興を遂げた広島の思いが込められている。

 原爆ドームの横にある「おりづるタワー」で開催された報告会では、浦社長がそうした平和に関する取り組みやクラブの思いなどを説明。今回の「おりづるリレー」でつないだメッセージを集めた総集編の動画も上映された。

 報告会の最後に三谷は、「Bリーグの垣根を超えて、いろんな方々に企画に参加していただいていることをうれしく思います。広島にはたくさんスポーツチームがありますが、バスケが引っ張っていける存在になれるように、これからも『HIROSHIMA PRIDE』を胸に頑張っていきたいです」と話し、バレーボールチームの広島サンダーズに所属する金子聖輝は、「バレーボールを通じてたくさんの方々に勇気、希望、感動を届けられる存在でありたいと思います。そして、ドラゴンフライズさんと同じ『HIROSHIMA PRIDE』を背負って今シーズンはしっかり戦いたいと思います」と力を込めた。

 今後も広島ドラゴンフライズから羽ばたく折り鶴が平和への思いをつなげていく。浦社長は、「広島にあるプロクラブとしてスポーツの力で平和を追求していくことをさらに発展させていきたいと思っています。さらに今後この活動の幅を広げて、広島から素晴らしいメッセージを世界中に発信できるようにしていきたいです」と力強く語った。

文・写真=湊昂大

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