2025.05.08
広島ドラゴンフライズの三谷桂司朗がマッチアップしたのは、自分の道を照らしてくれた憧れの選手。
「僕が筑波大学に入学したいと思ったのは、馬場雄大さんのプレーを見たことがきっかけなので、同じコートでプレーできているのはすごくうれしかった。かっこいいとずっと思っている選手だけど、でも試合が始まったらそこは忘れて、『絶対に勝つ』という気持ちで戦いました」
1月10、11日に行われた長崎ヴェルカ戦で、23歳の三谷は筑波大学の6つ先輩である馬場雄大とマッチアップを繰り広げ、大きな刺激を受けていた。
「日本人離れの能力を持つ選手なので、守っていてスピードで置いていかれることも経験して、やっぱりとんでもない選手だなと思った。チームとしては勝ったけど、パフォーマンスはまだまだ全然及んでいなかったので、そこはこれからの糧にして、いつか馬場雄大さんと対等に戦える選手になりたいです」

第17節に憧れの先輩とマッチアップした三谷[写真]=B.LEAGUE
昨年末の宇都宮ブレックス戦では昨シーズンMVPに輝いたD.J・ニュービルのマークについて奮闘。「技術は僕よりもはるかに上手だけど、体の強さやフィジカルなプレーは戦えるなとも思ったので、そこは自信につながった」と手応えを得たが、「駆け引きや相手の技術への対応力はつけないといけない」と実力差を肌で感じていた。

先発起用される試合も増えてきた三谷[写真]=B.LEAGUE
「自分の中でもっとできるはずなのにプレーでどんどん悩んでしまった。自分はもっとやりたいけど、試合を重ねるたびに迷いのあるプレーになってしまう矛盾があって悶々としていた時期だった。だから、どこかで一発スッキリするようなパフォーマンスをしないと次に切り替えられないと思っていた」
ターニングポイントは、昨年11月のバイウィーク直前に行われたアルバルク東京戦。広島は開幕前から主力選手を怪我で欠く中、チームを引っ張っていたケリー・ブラックシアー・ジュニアもコンディション不良で欠場となり、日本人選手を中心に戦った連戦だった。特にGame2はニック・メイヨも開始早々に負傷退場となり苦しい状況で連敗を喫したが、その中でも若手の奮起が光った。三谷もチーム最多タイの11得点、5リバウンドと気を吐き、苦境の中できっかけをつかんだ。
「チームとして失うものはなかったし、どんどん積極的にトライしていこうという状況だった。自分も悩む暇もないような状況だったので、思い切ってプレーすることができたし、そこで自分らしさを出せると感じました」

A東京とのアウェーゲームで奮闘した三谷[写真]=B.LEAGUE
今シーズンのリーグ前半戦30試合を終えて、広島は13勝17敗で西地区5位につけている。29試合に出場した三谷は、1試合平均で20分30秒間プレーし5.6得点を記録。「ディフェンスは昨シーズンからチームに評価してもらっているけど、今シーズンはそこにプラスでオフェンスでも日本人選手で得点を取れるところをアピールしていきたいので、後半戦でもっと集中して取り組みたい」と、より攻守での活躍を目指す。

広島をけん引する中村拓人と三谷[写真]=B.LEAGUE
地元で活躍するプロ選手として小学校訪問などで子どもたちとの交流も行なってきた。バスケットボール選手に憧れた三谷も、いまでは憧れられる存在。「前までは僕も子どもたちの立場だったので最初の頃は不思議な感じがしたけど、いまは子どもたちの目標の選手になりたいという思いでやっているし、地元出身の選手として地元に貢献したいので、これからも積極的に取り組みたい」と話し、将来を見据えてさらなる飛躍を誓う。

広島市出身の三谷はホームタウンへの思いも強い[写真]=B.LEAGUE
コート上で自信に満ちた三谷のプレーがまた新たな夢や憧れを生むはずだ。広島の期待の星は自分らしく輝き、バスケでつながる風景を明るく照らす。
取材・文=湊昂大
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