2024.11.19
昨シーズンチャンピオンが開幕4連敗の厳しいスタートを切った。広島ドラゴンフライズはB1リーグ第2節で佐賀バルーナーズをホームに迎えて対戦。12日の第1戦は、序盤からシュート精度を欠いて流れを作れず。第3クォーターで6点差に追い上げたが、終盤に突き放されて64-81で敗れた。13日の第2戦は、立ち上がりからアグレッシブに戦って点を取り合ったが、最後に力尽きて81-90で競り負けた。開幕節に続く連敗を喫し、4連敗スタートとなった。
後半に追い上げるも、最後は力尽きる展開が続いている。昨季の終盤は後半に強く、たとえ流れが悪くても粘り強く戦って優勝を果たしたが、今はその王者の姿はない。攻守にミスが目立ち自分たちで勢いを作れていない印象だ。佐賀との第1戦では第3クォーター終了時にニック・メイヨが3ポイントを決め切り、6点差に迫って逆転への期待が高まったが、第4クォーターの立ち上がりに課題でもあるターンオーバーから失点を重ねてしまい、自ら勢いを手放していた。
山崎稜は第2戦後、「シーズンが変わって、新しいヘッドコーチにもなったので、もちろん(昨シーズンとは)違うものになる。この4試合は後半に崩れたので、そこはもう考えを改めないといけないし、自分たちは後半弱いことを捉えて、弱い部分をどうしていくかを詰めていかないといけない」と話し、まずは「マインドを鍛える」必要性を説く。
「最後の最後で自分たちが気を抜いてしまったり、イージーなミスで相手に簡単にリズムを与えてしまう部分を自分たちの弱さだと認識し直さないといけない。そこは僕が1人で変えられることではないので、みんなで練習の中から1個1個の反省点や改善点をしっかり直していって、最後の詰めの部分までやり続ける意識をもっと持っていけるようにしなければ」
王者に輝いた昨シーズンもすべてが順調ではなかった。シーズン後半戦に調子を上げ、終盤には堅守からリズムを作るスタイルを武器に粘り強く戦って快進撃。チャンピオンシップ(CS)ではワイルドカードから勝ち上がり、最後まで低かった下馬票を覆して下剋上を達成した。昨シーズン光ったチームの粘り強さは、自分たちのスタイルを信じ、離脱者が出てもチーム一丸で戦って、自信を積み重ねてきたからこそ勝ち取ったもの。昨季王者としての「HIROSHIMA PRIDE」は日本一の強さというよりも、這い上がってきたその過程にあるはずだ。
その成功体験すらも忘れてしまう必要はない。山崎は9日の練習後、昨シーズンを振り返って「強豪しかいないCSで勝ち切って次に進んでいったのは、自分たちの底力を1つ高めてくれたと思う。悪いムードや流れがあっても、あの時を思い返して、もう1回我慢して戦い続けることができると思っている。今後自分たちが長いシーズン戦っていく上で、『自分たちはできるよね』とわかったのは今後も生かせるはず」と話していた。
厳しいスタートだが、チームは前進の意思を示している。今シーズン鍵になる3ポイントシュートの試投数は開幕戦が19本だったが、その後の3試合は30本以上を記録。朝山HCが掲げる積極的にシュートを打ち切る姿勢を体現している。ただ、佐賀との第1戦で第1クォーターに13本全ての3Pシュートを外したように、決め切る部分は明確な課題。指揮官は試合後、「入らなかったからといって消極的になってしまうではなく、僕は続けてほしい。そこから自分たちがまたステップアップしていくものに目を向けてやっていくべきだと思う」と強気の姿勢を求めている。
また、今シーズンは若手の成長が不可欠な中で、22歳のロバーツ ケインの躍動が光った。第2戦で高い身体能力を活かし、体格差ある相手のゴール下へ果敢にアタックして9得点をマーク。爪痕を残したロバーツは、「他の選手よりもクイックネスに自信があるので、相手が日本人だろうとビッグマンだろうとシュートを決めに行く気持ちだった」と振り返り、「自分の持ち味が出せた試合だった。これからも目標を高く持ってベストを尽くしてやるだけ。勝てなかったけど、この試合から学べることも多かった」と高い意欲を口にした。
朝山HCは「出だしから思いきりよくやってくれたのが非常に良かった。それを1つ自分の自信につなげてほしい」とロバーツを称え、若手全体に対しても「本当に失敗を恐れずにどんどんトライしていってほしい。そこをコントロールするのは僕の仕事なので。全員にチャンスを与えたいし、その中で1つでも何かをつかんで成長してほしい」と常にチャレンジすることを期待している。
山崎も9日の練習後に今シーズンの目標について「若いチームになって、簡単に勝てるような試合は全然ない。自分たちがどんなに劣勢でも、流れが悪くても、最後まで諦めない姿勢や、粘り強く我慢し続けながらプレーすることを掲げている以上、それ体現できるチームになっていきたい」と力強く語っていた。
チャンピオンとして悔しい開幕4連敗。それでも、この厳しいスタートから少しずつ自信を積み上げて、今季もまた這い上がっていく。シーズンを通じて「HIROSHIMA PRIDE」を示す戦いは始まったばかりだ。
取材・文=湊昂大
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