2時間前

最高の舞台でつかんだ感覚「カープ、サンフレを追いかけて…」山崎稜が広島を朱色に染めるとき

広島加入2年目のシーズンを迎えた山崎稜[写真]=B.LEAGUE
広島のスポーツライター

■「極限までいけた感覚でした」

 大舞台で決め続けたシュートの感覚はいまも残っている。広島ドラゴンフライズ山崎稜は、昨シーズンのチャンピオンシップ(CS)で3ポイントシュートを量産し、MVPの活躍で初優勝に大きく貢献した。今シーズンはチャンピオンの一員として広島2年目のシーズンに挑む。

 昨シーズン広島に加入した山崎は、シーズン序盤こそ怪我の影響もあって苦しんだが、徐々に調子を上げて終盤やCSで攻守にわたって活躍。CSの全8試合では50本中28本の3ポイントを決めて、56パーセントという驚異の成功率をマーク。チームを優勝に導くパフォーマンスで昨シーズンCSのMVPに輝いた。

 広島を熱狂させた活躍から約4カ月、山崎は当時の好調ぶりを振り返って「自信に満ち溢れていましたね」と笑顔で話す。

「とにかくシュートが入る気しかしなかった。(パスを)キャッチした段階から全てが噛み合っていて、普段ならボールを持ち直す動作があるけど、そういったことを意識せずとも自分の気持ちいい感覚のところに収まっていた。本当に全てがうまく噛み合って、CSの初戦からファイナルに上がっていくまで、ずっといい状態でパフォーマンスできたのが自信になって、極限までいけた感覚でした」

昨季CSファイナル第2戦、中村と山崎による“確信スリー”は広島初Vを代表するシーンとなった[写真]=B.LEAGUE


 日本一の舞台で得たその経験は、いまも山崎の手に刻まれている。「あの時のシュートタッチの感覚は、もう絶対忘れることがないと思うし、今でもあの時ああいう感じだったよなと覚えている。タッチが良くない時もあるけど、基本的には普段の練習からもずっといい感覚でシュートを打ててはいるので、そこはもっと自分の自信にしていきたい」

 ベストの感覚をつかんで迎えた広島2年目のシーズン。「僕は日本人選手の中でも1番年上なので背中で引っ張っていきたい」と話す32歳のシューターは、「もう全部狙っていくぐらいの気持ちでシュートを打っていきたい。自分が打てるっていうタイミングがあれば、どんどん打っていきたいし、それがチームにも伝染して、みんなが思いきり良くプレーができればいいなと思う」と意気込む。

■「今後もずっとあるテーマ」

山崎は2連敗を喫した開幕節GAME1で6得点、GAME2で8得点だった[写真]=B.LEAGUE


 特に今シーズンの開幕戦で悔しい思いをしたぶん、シュートへの意欲はより高い。広島は群馬との開幕節で2連敗を喫した。第1戦は相手の強固なディフェンスに苦しみ、昨シーズン王者は転校初日かのようなおとなしさで完敗。先発した山崎も今シーズンBリーグの初得点を決めたものの、「本来であれば打っていた場面でシュートを躊躇してしまったり、本来持っている思いきりの良さが出せなかったり、自分らしくないと思うシチュエーションがあった」と積極性を欠いたため、「シューターはまずは打たなきゃ始まらないし、打ってなんぼだと思う。そこは自分のひとつの使命でもあるし、チームにもたらせるいい部分でもあるので、どんどんシュートを打っていきたい」と内なる闘志を燃やしている。

 ドラゴンフライズは初優勝を果たしたことで、今シーズンますます地元の注目を浴びている。広島は広島東洋カープやサンフレッチェ広島を筆頭にスポーツ人気が高いところ。試合がある日は、カープの球場がある広島駅周辺はユニフォームを着た観客によって赤く染まり、サンフレッチェの新スタジアムがある街中は紫で染まる。

 山崎が昨シーズンの優勝後に「カープやサンフレに負けたくない」と当時加入1年目ながらも話していたのは、そんな広島の日常を肌で感じ、刺激を受けていたから。「今でこそBリーグは大きくなってきているけど、広島においてはカープ、サンフレッチェの盛り上がりにまだまだ自分たちは及ばないところにある。それを広島に来てからすごく感じていた」と改めて思いを明かす。

昨季CSファイナルでは山崎の3Pに朱色のスタンドが沸いた[写真]=B.LEAGUE


「バスケットでもちゃんと結果を残すことで初めて広島において野球、サッカーに次いでバスケットがあると認知されてくると思っていた。だからこうして(優勝という)結果を残せたことが重要だし、まだまだ肩は並んではないと思うけど、それでも1歩近づけたと思う。いろんなスポーツが強くて、広島が盛り上がるのはすごくいいし、その中で自分たちが引けを取りたくない。カープ、サンフレッチェの背中を追いかけて、追い越していけるような立場でありたいと思うので、それは今後もずっとあるテーマだと思う」

 日本一になって注目される今シーズン、ドラゴンフライズカラーの朱色に染まった光景を増やしていきたい。「僕らも(ブースターが)そういった光景を作ってくれることがうれしいし、ホームゲームですごく力をもらえるので、もっとそういった光景を作っていきたい」。スポーツに熱い街をバスケットボールでさらに盛り上げるために。山崎は最高の舞台でつかんだ感覚を信じ、鮮やかなシュートで広島を朱色に染めていく。

取材・文=湊昂大

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