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【B1前半戦レビュー】2シーズン連続で三遠が全体1位で折り返し…後半戦の注目チーム&ポイントは?

三遠は司令塔でエースの佐々木隆成(左)の活躍でリーグ全体1位の成績[写真]=B.LEAGUE

■CS争いは混戦濃厚、下位チームにも光明あり

 昨シーズンの王者・広島ドラゴンフライズが相次ぐ故障者の発生で出遅れた中、西地区は昨シーズン地区6連覇を逃した琉球ゴールデンキングスが首位(リーグ全体で2位)。今村佳太ら主力数名がチームを去ったにもかかわらず、攻守に高い水準を維持しているのは、桶谷大ヘッドコーチの手腕によるものだ。リバウンドの強さは相変わらずで、1試合平均45.4本という数字は他を大きく引き離している。

 開幕ダッシュに成功した島根スサノオマジックが中盤戦に入ってやや調子を落としている一方で、昨シーズン地区最下位の京都ハンナリーズが上向きつつあり、大阪エヴェッサの健闘も光る。広島も前半戦最後の節に寺嶋良がカムバックし、役者は揃った。マーク・スミスが無類の得点力を発揮している長崎ヴェルカも決して侮れず、チャンピオンシップの枠を巡る争いは昨シーズン以上に混迷を極めるだろう。

 東地区は、昨シーズンリーグ全体の首位でレギュラーシーズンを終えた宇都宮ブレックスが堂々のトップ。新たにケビン・ブラスウェルHCが就任したが、例年通り戦力の変動はほとんどなく、比江島慎D.J・ニュービルの存在感も不変。欠場が続いていたギャビン・エドワーズも戦列復帰を果たし、後半戦はさらにギアが上がりそうだ。

 渡邊雄太の加入で一際注目度の高かった千葉ジェッツは、その渡邊が開幕節に負傷し、戦線離脱を強いられた影響が大きかった。ただ、復帰した渡邊は前半戦最後の試合でBリーグ自己最多の30得点をマーク。現在地区3位のチームとしても、ここからエンジン全開といきたいところだ。なお、千葉Jを上回る地区2位には、昨シーズン広島を頂点に導いたカイル・ミリングHC率いる群馬クレインサンダーズがつけている。

 最後は、アルバルク東京名古屋ダイヤモンドドルフィンズの地区移動に伴い、今シーズンの最激戦区との前評判が高かった中地区。現時点でリーグ全体のトップに立っている三遠ネオフェニックスは、昨シーズンも同様にリーグ全体首位で折り返しており、地力は確固たるものとなっている。前半戦最後の仙台89ERS戦では129得点の圧勝。2シーズン連続地区優勝に向けて視界は明るい。

 ただ、三遠が頭一つ抜けている印象もあるとはいえ、中地区のレベルはやはり高い。それを物語っているのが、5位の名古屋Dまでが勝率5割を超えている点だ。6位のファイティングイーグルス名古屋も“借金”は2つしかなく、後半戦はCS進出争いに割って入る可能性が十分にある。昨シーズンも最終盤の順位争いは中地区が最も熾烈だったことを思い返すと、最後まで目の離せない戦いが続くに違いない。

期待の若手コンビとともに巻き返しをはかる川崎[写真]=B.LEAGUE


 一方、CSの常連だった川崎ブレイブサンダースニック・ファジーカスの引退によって変革期に差しかかり、現在はわずか8勝で地区最下位に低迷している。しかし、特別指定選手として加わった米須玲音山内ジャヘル琉人は早速活躍を披露しており、後半戦の逆襲を期待したいところだ。

 昇格組の2クラブでは、越谷アルファーズに向上の兆しが見られる。開幕からの11試合で1勝とB1の壁の高さを思い知らされたが、12月に入ると3試合連続で100点ゲームを演じ、その後も千葉J、三遠、宇都宮、三河に3点差以内の接戦。そして、前半戦最後には千葉Jをオーバータイムの末に撃破した。9勝21敗とCS圏内にはまだ遠いが、百戦錬磨の安齋竜三HCがここからチームをどのように導くかという点は大いに注目していきたい。

 滋賀レイクスはいまだ2勝と苦しんでいるが、その2勝は琉球とサンロッカーズ渋谷から挙げたものであり、強豪を破る力は持っている。得点ランキング1位のブロック・モータムの安定感も抜群。インジュアリーリストに登録されたハビエル・カーターの想いも背負い、後半戦はいかなる強敵にも立ち向かっていく姿を披露できるか。

■今シーズンも日本人PGが躍動! 後半戦は“復帰勢”にも期待

得点ランキングで日本人トップ、京都の岡田侑大[写真]=B.LEAGUE


 選手個人を見てみると、好調の三遠を引っ張るガード2人の活躍が凄みを増している。ここまで全試合スターターの佐々木隆成が1試合平均6.6アシストで個人ランキング1位を走れば、シックスマンの大浦颯太も5.0アシストで8位。チーム全体でリーグトップの22.8アシストを記録しているのは、佐々木と大浦のゲームコントロールが冴えているからこそと言える。そして、B1での初ダンクも披露した佐々木が1試合平均11.5得点、ディープスリーを連発している大浦が同11.3得点とスコアリング能力も高い点が、他チームにとってはこの上ない脅威だ。A東京から移籍してきた吉井裕鷹も大幅に出場時間を伸ばし、存在感を高めている。

 得点といえば、昨シーズンのように日本人選手がランキング上位を占める状況ではないが、17.0得点で9位につける岡田侑大(京都)はスコアラーとしてさらに一皮むけた感がある。ここまで29試合に出場し、1ケタ得点は4度だけ。勝敗を左右する存在としては、富樫勇樹(千葉J)と肩を並べる領域に突入している。他にも齋藤拓実(名古屋D)や岸本隆一(琉球)など、今シーズンも日本人ポイントガードの活躍は目覚ましい。

 外国籍選手と帰化・アジア特別枠選手に関しては、例年に比べると移籍や新加入がやや少ない印象があり、昨シーズン以前から各チームの基盤となっている選手が個人ランキングでも上位に名を連ねる。その中で、移籍先のチームを大きく引き上げているのが島根のジェームズ・マイケル・マカドゥコティ・クラーク。島根がペリン・ビュフォード(現・信州ブレイブウォリアーズ)という絶対的存在を失いながらもCS返り咲きに向けて好位置につけているのは、この2人の貢献が大きい。

 後半戦の大きな見どころとしては、故障者の復帰、または故障者に代わる新戦力の働きが大きなポイントとなるだろう。千葉Jは渡邊が復帰したとはいえ、ジョン・ムーニーが未だインジュアリーリストに登録中のまま。緊急補強したジョナサン・ウィリアムズが良い仕事をしているが、昨シーズンリバウンド王のムーニーはやはり不可欠な戦力だ。

 名古屋Dも、ルーク・メイの早期復帰が望まれるところ。戦線離脱者が続出している佐賀バルーナーズは、アレン・ダーラムの加入で巻き返しを図りたい。1つの勝敗が明暗を分けていく後半戦は、選手のコンディション管理も含め、チームの総合力が問われる戦いとなる。

文=吉川哲彦

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