2018.12.30

前監督の長渡氏が用いたゾーンDFを切り札に携え、準優勝に輝いた大阪薫英

岐阜女子に敗れるも、ウインターカップ準優勝をつかみ取った大阪薫英[写真]=大澤智子
中学や高校、大学などの学生バスケットをはじめ、トップリーグや日本代表と様々なカテゴリーをカバー。現場の“熱”を伝えるべく活動中。

「Softbankウインターカップ平成30年度 第71回全国高等学校バスケットボール選手権大会」で準優勝となった大阪薫英女学院高校(大阪府)。 決勝戦後の記者会見で安藤香織コーチは、「昨年、大阪の決勝で敗れてウインターカップ出場を逃しました。チームとして辛い思いをしましたが、私が長渡(俊一)監督から引き継いで4年目、もう一度ゼロからいろんなことを見つめ直していこうと、今年は主体性をテーマにチーム作りをしてきました」と、この1年間を振り返った。

 全国屈指の名門チームへと作りあげた故・長渡俊一氏からチームを引き継いだ安藤コーチだが、大阪薫英の卒業生ではない。以前は大阪府立の豊島高校の指揮官として2012年にはインターハイ出場を果たすなど、府内のライバルチームのコーチだった。だが、国体で長渡氏とともにスタッフを務めるなど、兼ねてから深い親交があり、生前、長渡氏が後任に安藤コーチを指名していたことから、現在のアシスタントコーチで奥様の由子さんがコーチへと誘った経緯がある。

 伝統校を引き受けることは簡単なことではない。だが、安藤コーチは長渡氏の築きあげた「大阪の財産をなくしてはいけない」という思いで決意。そして大阪薫英に奉職した2年目はインターハイとウインターカップでベスト4となったが、3年目となる昨年はウインターカップ出場を逃すという憂き目にあった。

安藤コーチは2015年から大阪薫英を率いている[写真]=大澤智子

 そんな悔しさを抱えてスタートした今年、チームの武器となったのがディフェンスだ。1対1やヘルプディフェンスなど堅い防御は今大会も健在で、準々決勝では圧倒的な攻撃力を持つ八雲学園高校(東京都)に容易に得点を許さず。そして昭和学院(千葉)との準決勝ではマンツーマンに加えて、10点ビハインドの場面でゾーンディフェンスを敢行。これが効を奏した。

 実はこのゾーンディフェンスは、かつて長渡氏が用いたもの。ユニチカ(日本リーグ/現Wリーグ)の監督だった尾崎正敏氏(元日本代表監督)から長渡氏が教わった際のメモが出てきたことがキッカケとなり、当時ユニチカでプレーしていた大阪薫英のOGの方々にも指導を仰いで、“切り札”として身に付けたのだ。

 智将と知られ、マンツーマンとゾーンとを駆使したチェンジングディフェンスで幾度どなく白星を挙げてきた長渡氏。準決勝で見せたゾーンディフェンスからの逆転劇は、その長渡氏の采配と重なる。

チームの武器となったゾーンディフェンス[写真]=加藤誠夫

 今大会、卒業生の1人であり、日本代表でもある栗原三佳(現トヨタ自動車アンテロープス)は、大会前にソックスを送っていた。これに対し「決勝で履こう」と決めた選手たちは、その言葉どおり、ファイナルの舞台で赤いソックスを誇らしく身に付けた。

 卒業してもなお現役生を思うOGたち。そして継承されていく“長渡イズム”。“伝統の力”が18年ぶりの銀メダル獲得を後押しした。

決勝戦では栗原三佳から送られたという赤いソックスを身に付けた[写真]=大澤智子

文=田島早苗
 

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