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12月23日。7日間におよぶ激闘「SoftBank ウインターカップ2019 令和元年度 第72回全国高等学校バスケットボール選手権大会」が幕を開けた。
武蔵野の森総合スポーツプラザ(東京都調布市)では、女子1回戦が行われ、高知中央高校(高知県)と八戸学院光星(青森県)が第1試合で激突。高知中央はガードの井上ひかる、センターのンウォコ マーベラス アダクビクター(共に2年)を軸にボールムーブとドライブを効果的に駆使して点を重ね、リードを奪っていく。
一方の八戸学院光星は、吉田華、小笠原佳澄、畠山遥凪(いずれも3年)を中心に点差を詰めにかかるも、その差はなかなか縮まらず、前半を終えて49-32で高知中央が17点をリード。高知中央は後半に入っても、ベンチ入りした選手たちが交互にコートへ立ち、前半のリードを活かして98-75で八戸学院光星を下して初戦突破した。
「ウインターカップ初戦の入りということで、動きが硬く、ちょっと緊張もあったと思います。故障明けの選手が何人かいましたので」と高知中央の吉岡利博コーチが初戦を振り返っていたのだが、高知中央は井上と池口祐可(1年)というガード陣がアグレッシブにボールをさばき、高得点を挙げて白星を飾った。
マーベラス アダクビクターが188センチの高さを最大限に活かし、25得点12リバウンドでチーム最多の数字を残したのだが、コート上で最もインパクトを放っていたのは井上だったのではないだろうか。
ボールを手にしたら自らドライブ、あるいはロングパスで積極的にプッシュし、井上はディフェンダーをものともせずにリングへの道をこじ開けて得点へとつなげる好プレーを連発。ボールを持った後の判断について「ほとんど本能的ですね」と笑いながら明かした井上は、ハーフコートでも緩急をつけたドライブやビハインドザバックドリブル、スピンムーブでディフェンス陣を切り崩し、レイアップあるいはファウルを獲得してフリースローへと持ち込むなど、チーム最多の22分58秒コートに立って22得点。
2年生ながら自信満々にプレーする光景は、やはりコート上でも異彩を放っていた。ドライブから決めるフィニッシュが一番得意という井上は「自分のドライブには自信しかないので、最初から飛ばしていきました」という印象的な言葉も残していた。
八戸学院光星は、ボールを持った井上に対して2人がかりでプレッシャーをかけにいく場面もあったのだが、「だいたい『こっちに来るだろうな』っていうのは分かってたんで。それの裏をつくようにはしてました」と井上は鮮やかにディフェンス陣を突破し、高知中央へ何度もチャンスをもたらしていたことも見逃せない。
もっとも、1年生として出場していた昨年のウインターカップは「パス優先のガード」だったという井上。「ドライブに関しては今年に入ってから磨きをかけてきた部分です。先月くらいからやっと成果が出始めてきたかな」と吉岡コーチ。
その転機となったのは、先月和歌山県で行われた「第95回天皇杯・第86回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会」皇后杯2次ラウンドだったという。紀陽銀行ハートビーツと戦った高知中央は、73-99で敗れたものの、吉岡コーチは「その試合でけっこう行けたことで、本人もちょっと自信がついたかなと思います。でもそれまでは、そこまで自信はなかったですね」と明かしている。
また、吉岡コーチは「キックアウトのタイミングとか、もう少し周りを活かせるようになれば、さらにドライブが綺麗に決まり出すんじゃないかな、っていうのはあります」と井上への課題を挙げていた。
そんな井上が参考にしている選手は福岡第一高校(福岡県)の河村勇輝(3年)。「あのスピードからのパスとか、動画とかも見たりしてます」と口にしており、吉岡コーチからの課題を克服する意味でも、すばらしいお手本と言っていいだろう。
「目標は岐阜女子高校(岐阜県)に勝ってベスト4に入ること」と語った井上は、今大会の意気込みについて「3年生も最後ですし、応援してくれてる人たちへ感謝の気持ちを持ちながら、自分がチームを引っ張って勝ちに行きたいです」と意気込んだ。
高知中央は24日に行われる女子2回戦で、東海大学付属福岡高校(福岡県)と対戦する。コート上における振る舞いと同様に、質問に答えている時も、表情どころか全身から自信がみなぎっていた井上。高知中央をリードする2年生ガードには今後も注目だ。
取材・文=秋山裕之