2023.05.18
かつてインターハイで激闘を繰り広げたBリーガーにインタビューを実施。当時の思い出とともに、彼らにとってインターハイがどのような舞台だったのかを伺う本シリーズ。第六弾は川崎ブレイブサンダースの前田悟(山形南高校出身)と納見悠仁(明成高校出身)による対談形式のインタビューをお届け。大会期間中、U17日本代表として出場した世界選手権(現ワールドカップ)についての話も聞いた。
インタビュー=酒井伸
写真=須田康暉
ーインターハイでの思い出を聞かせてください。
前田 僕の高校は進学校なので、3年生の大半がインターハイを最後に引退するんです。ウインターカップまで続けるのは2、3人程度。1年生、2年生の時は先輩たちのおかげでインターハイに出場できましたが、3年生の時は山形県予選で負けてしまいました。1年生の時から起用してもらっていたのに、同級生や後輩をインターハイに連れて行くことができなかった。そういう悔しい思いが残っています。
納見 1年生の時は試合にあまり絡めませんでした。試合に出られず、先輩たちが負けた姿を見て、悔しさが重なりました。2年生になると、自分たちの学年だけで試合をこなすことが多かったのですが、「だからといって、1学年上の選手たちに負けないぞ」という気持ちで取り組んでいました。インターハイ前に行われた東北大会の決勝では自分のラストショットが外れて、負けてしまいました。その後、インターハイ本番では世界選手権に参加するため、チームを途中で抜けることが決まっていたんです。チームを決勝進出に導くことができましたけど、結果は準優勝。フルメンバーで戦えなかった悔しさが残ってしまいました。3年生の時は3冠を目標に掲げていたので、インターハイで優勝でき、次の大会にステップアップできたと思います。
ーインターハイ優勝がその後の自信につながりましたか?
納見 2年生の時にウインターカップで優勝し、追われる立場になった時のメンタルはキツかったです。実は、インターハイの決勝は内容があまり良くなくて、閉会式が終わる前に先生が怒って帰ってしまって。優勝しましたけど、気を引き締める大会になりました。
ー2人は学年が1つ違いですが、高校時代に対戦したことは?
前田 何度もありますね。
納見 お互いに東北地区で一緒だったので。
前田 東北大会の準決勝でも対戦したよね。
納見 ウインターカップでも対戦しました。練習試合も何回かやりましたよね。
ー当時の印象を教えてください。
前田 世代別の日本代表で一緒にプレーしていたので、彼の得意、不得意はよくわかっていました。僕らのチームはサイズがなかったので、まずは(八村)塁(ワシントン・ウィザーズ)をどうやって止めるのか。そこで納見や三上(侑希)に決められると、手をつけられなくなってしまって。東北大会で一度競ったことはあるんですけどね。
納見 不思議なディフェンスをされて……。
前田 塁には常にダブルチームで、あとはゾーン。でも、足立(翔)選手といういぶし銀の選手にすごく決められてしまって。
納見 山南は足立選手をノーマークにしてきたんです。シューターが全く機能せず、苦しんでいた中、2ケタ取るのが珍しい彼が得点を量産してくれました。相手が想定していなかったことだと思うので、そこでなんとか狂わせることができました。
前田 粘ったんですけどね。3年生のウインターカップは3回戦で明成と対戦し、ボコボコにされて僕は引退しました。
納見 試合序盤に大量リードを許してしまって。
前田 最初はマンツーマンだったので、僕たちは一気にリードを奪うことができたんです。でも、試合展開に対して怒った(佐藤)久夫先生がゾーンに変えてきたんです。そこから全然点を取れなくなって。
ーインターハイは2人にとってどんな大会でしたか?
前田 ともに過ごしてきた一部のメンバーにとってインターハイが最後の大会だとわかっていたので、大会へ懸ける思いはすごく強かったです。3年間一緒にやってきたので、絶対に勝たなければいけないんだと。3年生の時は出場できませんでしたけど、インターハイという大会への思いはほかのチームよりも強かったと思います。
納見 明成が創部されてからインターハイで優勝したことがなかったので、前年のリベンジを果たすためにも絶対に優勝してやろうと思っていました。あとは目標にしていた3冠の1つ目を取らなければいけないんだと。そういった気持ちを持って、臨んだ大会でした。
ーインターハイに臨む選手へアドバイスをお願いします。
前田 インターハイが終わってもウインターカップがありますけど、この大会を最後に引退する選手もいるでしょう。悔いが残らないように全力でプレーしてほしいです。あまり先を考えずに、1試合、1試合を大切にして、頑張ってほしいです。
納見 ウインターカップはバスケットボールしかないですけど、インターハイは全競技が対象です。その競技の学校代表であり、都道府県代表でもあります。自信と誇りを持って、一人ひとりがプレーしてほしいです。
ー先日まで「FIBA U17バスケットボールワールドカップ スペイン2022」が開催されていました。2人も高校在学中、2014年の世界選手権(現ワールドカップ)に出場しましたが、今振り返ると、どのような大会でしたか?
前田 僕自身は初の世代別日本代表で、世界を見ること自体も初めてでした。バスケットの視野が広がったと感じています。日本でトップでも世界に出たらまだまだ下。未熟さを痛感し、もっと頑張らなければいけないと感じた大会でした。
納見 僕もU16から含めて初めての世代別日本代表で、アジア、世界という前に、日本代表の中でプレータイムを勝ち取らなければいけない立場でした。でも、あまり勝ち取れなかったので、悔しさを含めいろいろな経験をできて、今の自分につながっていると感じます。
前田 やはり世界との差を痛感しましたね。すごく大きなものだなと。アジアともレベルが全く違いましたね。初戦のオーストラリア戦は僕と彼の3ポイントシュートがよく決まったんです。最終的に大会準優勝のオーストラリア相手に対して延長戦の末に負けたので、結構いけるのかなと。けど、その後の試合ではボコボコにやられて、身体能力、技術が全然違うと感じました。
ーその初戦で前田選手は12得点、納見選手は20得点を記録しました。手応えもあったのでは?
前田 オーストラリアが日本に対して油断していたのはあると思います。あとは初戦ということで、難しかったのかなと。ただシュートが入っただけです。「やれるな」と思いましたけど、その後はそう簡単にいかなかったですね。
納見 大会開幕までにオーストラリア対策を準備していて、その試合に懸けていた部分もありました。自信はつきましたけど、負けてしまいました。やれるという手応えもあれば、「あれだけ準備したのに勝てないのか」といった気持ちもありました。2試合目以降のカナダ、フランスはサイズがあって、うまさもあった。そこに対抗できず、自分たちの弱さを見せてしまいました。日本がやるべきことはたくさんあると感じましたし、個人としてもまだまだだと感じました。
ーラウンド16ではアメリカを相手に38ー122の大敗を喫しました。
納見 なかなか経験できない衝撃的な試合でした。本当にレベルの差を痛感させられたというか、見えないところに突き落とされたイメージ。技術や体の強さ、能力の差を感じられたからこそ、やらなければいけないことが明確になりました。いろいろな心情がありますけど、あそこでアメリカと対戦できた経験は大きいです。
前田 日本代表が世界大会に出るのも久しぶりで、その中で世界のトップに立つアメリカと対戦することになりました。かなり注目されていた中、あれだけの差をつけられた。僕らだけではなく、日本中がまだまだだと思ったはずです。身体能力や身長だけでは片付けられない差がありました。先日、シーズンオフを利用して、アメリカに行ってきました。同じ体育館で小さな子どもが朝からずっと練習しているんです。そういう小さい頃からの積み重ねが日本と全然違うなと。バスケットに対する熱量も同じです。当時は塁だけしか通用していませんでしたからね。
納見 アメリカ戦の個人的なエピソードとして、疲労や温度差の影響からか、実は試合数日前に39度くらいの熱を出して、寝込んでいました。当日も朝の練習には参加せず、昼のミーティングに出てから試合に臨みました。体調が悪かったこともあり、全然声が出ずに話せなくて。プレータイムは少なかったですけど、ベンチで衝撃的なものを見ました。最初のシュートがいきなりダンクでしたからね。
ー世界を相手に7試合をこなしました。個人として通用した点、通用しなかった点を教えてください。
前田 僕はシュートが通用すると感じました。ただ、体の線が細かったので、フィジカル、技術面が全然通用しないなと。世界大会を通じて、すごく視野が広がりました。自分は小さい存在というか、まだまだレベルが低いところにいるなと。もっと頑張らなければいけないと感じました。
納見 僕はアジア予選でプレータイムが少なく、悔しい思いで日本に帰ってきて、世界大会に向けて1年間取り組んできました。初戦のオーストラリアは強い気持ちで臨んだ結果、個人としての数字を残すことができました。シュートに関しては自信がありましたけど、シュートが入らなくなった時に何をするべきなのか。フィジカルやサイズはもちろん、そこでの差をすごく痛感しました。日本では見られないを見られたというのは今後の自分のためになったと思います。
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