2023.08.23

【インタビュー】親子2代でワールドカップに挑む富永啓生「昔から大舞台は大好き。強い相手ほど燃える」

世界の強豪相手にも代名詞の「3ポイント」炸裂なるか[写真]=伊藤大允
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 8月25日に開幕を控えるFIBAワールドカップ2023。開催国の1つとして大会に臨む男子日本代表は、約2カ月にも及ぶ強化合宿を実施し、世界へ挑む準備を進めてきた。

 選手たちはどのような思いを胸に大舞台へ臨むのか。幼少期の思い出から今大会にかける思いまで、一人ひとりに話を聞いていく連載。その7人目として、親子2代でワールドカップ(世界選手権)の舞台に立つ天才シューター・富永啓生に話を聞いた。

インタビュー=入江美紀雄

■ 緊張よりもワクワク…大舞台ほど燃えるタイプ

――富永選手は父・啓之さんも1998年の世界選手権(ワールドカップ)に出場した日本代表選手でした。幼少時代から日の丸への思いを抱いたり、実際にお父さんから日本代表についてのお話を聞いたことはありましたか?
富永 お父さんが日本代表ということもあって、小さい頃から代表選手になることが一つの夢でした。日本を背負って戦うということなので、責任はありますし、それなりのプライドを持ってやっていかないといけないという話は昔から聞いています。

――桜丘高校3年時にU18日本代表としてアジア選手権に出場しましたが当時抱いた“世界”の印象は?
富永 とにかく相手選手たちにサイズやフィジカルの面で圧倒された感覚がありました。それは鮮明に覚えています。

――高校時代に体格差を感じながらも、アメリカ留学、そして日本代表活動を通して徐々に“世界に順応”できている部分もあると思います。
富永 そうですね。やっぱりアメリカに留学することによって、サイズやフィジカルの慣れだったり、そういうところは本当に年々適応できてきていると思います。(日本代表として)アジア大会やワールドカップのような大きな舞台でフィジカルなどに馴染めていることは良いことだと思います。

3人制の日本代表として東京五輪に出場した富永啓生[写真]=Getty Images


――2021年の東京オリンピックでは3x3(3人制)の代表として日の丸を背負い、翌年には5人制のA代表デビューを果たしました。
富永 オリンピックは本当に大きな舞台で、3x3でプレーできたことはすごく良い経験にもなりましたし、一生忘れられない思い出になりました。やっぱりA代表としてアジアカップに出た時は、すごくうれしかったですし、遂にこの舞台までやって来られたか、みたいな達成感も少しありました。

――A代表デビュー戦となった昨年7月のワールドカップ予選・オーストラリア戦では堂々のチーム最多18得点。当時は緊張感もあったのでしょうか?
富永 オーストラリア戦は緊張してなかったですね。緊張したのはオリンピックの最初の試合だけですかね。あまり緊張するタイプではないです。

――同じく昨年7月に開催されたアジアカップの準々決勝・オーストラリア戦では33得点をマークしましたし、高校時代もウインターカップで大活躍。なぜ大舞台に強いのでしょうか?
富永 自分でもよく分からないです(笑)。でも、昔からそういった大きな舞台でプレーすることが大好きで、相手が強くなればなるほどパフォーマンスのレベルも上がりますし、大きな舞台になればなるほど燃えるタイプですね。

■ 着実に成長…NBAへ道筋も「昨季終盤のパフォーマンスをできれば」

ネブラスカ大でも自慢の長距離砲を武器に存在感を示した2022-23シーズン[写真]=Getty Images


――2022-23シーズンはNBAドラフトへのアーリーエントリー、日本代表活動もありましたが、特に意識していたことはありましたか?
富永 そんなに意識することはなかったですが、とにかく一日一日レベルアップして、その日その日の対戦相手を意識して、集中してやっていました。

――今夏はNBAドラフトへのアーリーエントリーも検討されていたなか、インディアナ・ペイサーズのワークアウトにも参加されました。
富永 そんなに長いワークアウトだったわけではないですが、レベルの高い選手たちと一緒にプレーできたというのは、本当にすごくいい経験になりました。自分に自信もつきましたし、通用した部分もあり、課題になった部分もあったので、そこはすごくいい経験になりました。

――その後、アーリーエントリーを取り下げ、再び大学に戻る選択をされました。どういった経緯で決断されたのでしょうか?
富永 ネブラスカ大のコーチともいろいろ話をして、もう1年、大学でもっともっとレベルアップできるということで決めました。昨シーズン終盤のパフォーマンスを1シーズン通してできれば、またちょっと変わった立ち位置でドラフトにいけると思います。

――熱狂的なファンに後押しされるネブラスカ大でもう1年やれるというのも、ある意味楽しみですよね。
富永 もちろん、そうですね。やっぱり観客がすごいので、そのなかでプレーできるのは楽しみです。熱狂的な応援があると自分も乗っていけます。

――シーズンを終えて代表に合流し、一段と体が大きくなった印象があります。かなりトレーニングにも力を入れているのでしょうか?
富永 昨シーズンが終わってからはウェイトトレーニングをメインに取り組んできました。体重も増えましたし、体も大きくなったかなという感覚がありますね。ディフェンス面でもプラスになると思います。

――かつてアメリカでは相手選手が「岩のように動かない」と話した方もいました。富永選手も渡米してからそのような感覚があったのでしょうか?
富永 慣れというのもあると思います。確かに体は強いんですけど、慣れて適応できてくるとまたちょっと変わった感覚になるんじゃないかなと。自分は押すだけじゃ勝てないので、押したり引いたり、駆け引きでやっていけば何とかなります。そういった部分もアメリカにいる間に覚えています。

――フィジカル面の変化だけでなく、昨シーズンは代名詞の「3ポイントシュート」以外にもペイントタッチのドライブや、ダイブするプレーも増えたように感じます。
富永 バックカットや、カットインだったりは、日本代表でもやっていけるところはあると思うので、そこもアピールしていきたいです。

■ W杯1次ラウンド“死の組”も「楽しみです」

試合中にはプレー以外でチームを鼓舞する熱い姿も[写真]=伊藤大允


――現在の日本代表は「3ポイント」と「スピード」をテーマに掲げています。トム・ホーバスヘッドコーチのバスケットにはどういう印象を持っていますか?
富永 自分は3ポイントシューターなので、速いテンポのなかでのトランジションスリーも含め、すごく自分に向いていると思っています。

――8月25日に開幕するワールドカップ1次ラウンドではドイツ、フィンランド、オーストラリアといった格上の強豪国と対戦することが決まりました。
富永 どのグループに入ってもレベルは高いと思います。相手がどこであろうと、高いレベルでやりあえるというのは楽しみですね。

――ドイツにはデニス・シュルーダー、オーストラリアにはパティ・ミルズだったり、ポジションは違いますけど、それほどサイズがなくてもNBAで活躍している“目標にしやすい”選手もいますし、コート上でマッチアップする可能性もあります。
富永 トップレベルで戦っている選手たちと同じコートでプレーできるというのは、すごくいい経験になると思いますし、楽しみです。マッチアップした際には、本当に自分にできることをすべて出しきるだけだと思います。

――沖縄アリーナ、自国開催でのワールドカップへ向けて、最後にメッセージをお願いします。
富永 一度だけ沖縄に行ったことはありますが、まだ沖縄アリーナで試合をしたことはないです。沖縄の舞台で活躍できるように頑張ります!

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