2023.09.16
国の威信をかけて戦う「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」は、強豪国の華やかで強かなプレーが脚光を浴びる一方、国際大会らしく“新たな発見”にも満ち溢れている。
メンフィス・グリズリーズのバスケットボールオペレーション元副社長であり、現在『The Athletic』のシニア・コラムニストを担当するジョン・ホリンガー氏は、決勝トーナメントMVPや今後の展望など、ここまでの総評を投稿。その一部では“NCAA所属の有望選手”と題して、2名の若手選手に言及した。
その1人がほかでもない、日本代表(FIBAランキング36位)の富永啓生(ネブラスカ大学)だった。ホリンガー氏は富永について、以下のような見解を述べた。
「もう1人の注目すべきカレッジプレーヤーは、日本代表のシューティングガード、富永啓生です。富永はネブラスカ大学でプレーし、2024年のNBAドラフトで指名される権利を所有しています。身長は188センチしかありませんが、昨シーズンは3ポイント成功率40パーセント、フリースロー成功率86.8パーセントを記録し、ハスカーズ(ネブラスカの俗称)で平均13.1得点をマークしました」
「おそらく、NBAでオフボールの役割を果たすには身長が足りないでしょう。しかし、彼は正確で極めて思いきりのいいシューターなので、トロイ・ダニエルズのようなキャリアを築くチャンスがあるでしょう」
富永は、日本代表で最も得点効率のいい選手の1人だった。激しいマークに遭ったオーストラリア代表(同3位)戦こそ、得意の3ポイントを1本も沈めることができなかったが、フィンランド代表(同24位)戦は7本中4本、カーボベルデ代表(同64位)戦は8本中6本の長距離砲を決め、チームの勝利に大きく貢献した。5試合平均は17.9分出場で、11.4得点、3ポイント成功率37.5パーセント。選手個人がコート上にいる時の点差を示す“得失点差”のデータでは、2位の河村勇輝(横浜ビー・コルセアーズ)が記録した「+2.0」を大きく上回り、チーム断トツの「+6.2」をマークした。
コート上での印象的な活躍とエナジーは、渡邊雄太(フェニックス・サンズ)の獲得にも携わったホリンガー氏の目にも届いたのだろう。ホリンガー氏が比較対象に挙げたダニエルズは、2013年にドラフト外からヒューストン・ロケッツに加入し、7シーズンにわたってNBAでプレーしたシューティングガードだ。193センチ90キロと、フィジカル面における優位性はなかったが、3ポイント成功率はキャリア平均39.5パーセントを記録。シャーロット・ホーネッツに所属した2シーズンは1試合平均48.1パーセントと、5割に近い成功率を収めており、そのキャリアはいかにもシューターらしいものだった。
偶然にも、ダニエルズは富永と同じく、背番号「30」にこだわり続けた選手。思いきりのいい3ポイントや、それをおとりに使った2ポイントなど、プレースタイルでも共通項は少なくない。
富永はディフェンスやフィジカル面での課題を残すものの、5月にはインディアナ・ペイサーズのワークアウトに参加。ネブラスカ大学が所属するビッグ・テン・カンファレンスにもハイライトが掲載されるなど成長著しい。日本代表での経験も糧となり、夢のNBA入りへ近づいている。
文=Meiji
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