2023.09.17

引退表明のファジーカス「優勝する姿を見届けてほしい」日本代表の快挙につながる過去も振り返る

16日、記者会見で今季にかける思いを語ったファジーカス[写真]=川崎ブレイブサンダース
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 9月16日、川崎ブレイブサンダースニック・ファジーカスが今シーズン限りで引退することを発表した。

 開幕前最後のプレシーズンゲームが終わった直後、出陣式の最中にに場内が暗転すると、数十分前までコートで躍動していたファジーカスがスポットライトに照らされ、「みなさん、こんばんは。今年で引退します」。新シーズンの訪れを目前に控え胸を躍らせるファンにとっては、あまりに衝撃的な引退表明だった。

 出陣式後に開かれた記者会見では、「まだ“引退”を処理しきれていない方々がたくさんいらっしゃると思いますが、この決断は悲しいものじゃないと思っています」と切り出したファジーカス。「まだ感情的になりたくないと思っています。これが最後のプレシーズン、これが最後の練習、これが最後の試合だと考えたくはないので、まずは1シーズン戦い抜くこと。終わってから感情がこぼれ出てくるんじゃないかなと思っています」とも語り、ラストイヤーもチームスローガン「All-In この場所 この瞬間に すべてを懸ける」を体現して優勝を目指すことを強調した。

 今年6月に38歳の誕生日を迎え、すでに大ベテランの域に突入しているものの、リーグ屈指の巧みなシュートスキルは健在。この日コート上で対峙した日本代表の比江島慎宇都宮ブレックス)も「まだまだ現役でやれると思っている」と話すなど、現役選手からも驚きの声が漏れていたが、ファジーカスは予てから抱いていたという「トッププレーヤーのまま引退したい」という思いで決断。「今年ももしかしたら25得点10リバウンドを2試合連続で達成して、『なんで引退するの?』って思われるようなパフォーマンスをするかもしれないけど、10カ月を戦う長いシーズン、体力的にもメンタル的にも厳しくなってきている。一番高いパフォーマンスを維持できるのは今年が最後なのかなと思ったことが、引退する決め手になりました」と明かした。

 シーズン開幕前に大々的に引退の意向を表明した理由については、「子どもやファンの皆さんが『最後にニックを見たい』『もう一度ニックを見たい』、そう思ってくれるならそのチャンスを作ってあげたいという気持ちがあって、このタイミングでの発表になりました」と説明。「現実的かどうかは置いておいて、Bリーグファイナルの第2戦で60点とって優勝できれば」と、笑みを浮かべながら理想の“ラストダンス”も口にした。

出陣式で今季限りでの現役引退を表明したファジーカス[写真]=川崎ブレイブサンダース


 2012年に来日し、日本ではブレイブサンダース一筋12年。2018年には日本国籍を取得し、日本代表の一員としても国内バスケットボール界の発展に貢献してきた。

 日の丸を背負ってきたファジーカスが「最も印象的な試合」に挙げたのが、2018年6月29日の「FIBAバスケットボールワールドカップ2019 アジア地区1次予選」オーストラリア戦。日本は4連敗で迎えた格上との一戦に79-78で勝利し、ここから怒涛の8連勝。崖っぷちから這い上がり、「FIBAワールドカップ2019」の出場権を勝ち取った。

 後がない日本代表に帰化選手として合流したファジーカスは、「当時は『今日代表戦だね』と話をしたら『どうせ20点差負けだよ』みたいな感じで、誰も代表に自信を持っていなかったし、誰も代表に期待していなかった。そんな状況での代表加入だった」と語り、「日本代表に『勝てる』という自信を植え付けたかった」と回顧。

 今夏の「FIBAワールドカップ2023」で過去最高の成績を残した日本代表についても言及し、「僕が始めたことを(ジョシュ・)ホーキンソン選手が受け継いでくれていると思う。僕の帰化後に勝ち始めたことから(今の)日本代表のストーリーが始まっているんじゃないかなと思っています」と、代表選手として成し遂げてきた結果にも胸を張った。

 川崎は現在、新シーズンのスローガン「All-In(オールイン)」に加えて、レジェンドの引退に華を添えようと「The Last Dance(ラストダンス)」という合言葉で団結しているという。

 ファンの前で「最後の1年、すべてをもってチームを頂に連れていくのが僕の目標です。ぜひ日本バスケ、Bリーグ、川崎のファンのみなさんに、最後1年プレーし続ける姿と、優勝する姿を見届けてほしいと思います」と語ったファジーカス。日本バスケ界に多くのものをもたらしてきたレジェンドのラストイヤーが、まもなく始まる。

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