2019.05.26

車いすバスケ女子U25日本代表が快進撃!ドイツに逆転勝ちし初のベスト4進出!!

試合終了間際、キャプテンの山﨑佳菜子の値千金の3Pプレーで日本は同点に追いついて [写真]=斎藤寿子
新潟県出身。大学卒業後、業界紙、編集プロダクションを経て、2006年よりスポーツ専門ウェブサイトで記事を執筆。車いすバスケットボールの取材は11年より国内外で精力的に活動を開始。パラリンピックは12年ロンドンから3大会連続、世界選手権は14年仁川、18年ハンブルク、アジアパラ競技大会も14年仁川、18年ジャカルタの各大会をカバーした。

「女子U25世界車いすバスケットボール選手権大会」(タイ)は大会4日目の26日、準々決勝が行われ、日本はドイツと対戦した。主導権を握りつつも、シュートがことごとリングに嫌われ、リードを許した日本。しかし、第4クォーターの中盤以降に猛追し、残り1分半で同点に追いつくと、逆転に成功。最後は逃げ切る形で42-37でドイツを破り、準決勝進出を決めた。4強入りは、女子U25では初の快挙となる。

コートのメンバーを鼓舞した”一体感”

「本当の意味で”チーム”になることができました」と山﨑沢香HCは手ごたえを感じている [写真]=斎藤寿子

「本当の意味で”チーム”になることができました。コートに出ていたメンバーだけでなく、ベンチにいる選手たちも含めて、心一つになって戦えました」

 そう語る山﨑沢香ヘッドコーチの表情からは、沸き上がる感情を抑えつつも、勝利の喜びを噛みしめている様子が見てとれた。それほど苦しい時間帯が長く続く、タフな試合だった。

 実力は明らかに日本の方が勝っていた。攻守にわたって、チェアスキルもスピードも日本が上回っていた。それは数字を見ても明らかだった。

 前半終了時のスタッツを見ると、フィールドゴールのアタック数は日本が38本に対し、ドイツは22本。さらにターンオーバーは日本がわずか5であるのに対し、ドイツは17にものぼっていた。日本の素早く粘り強いプレスディフェンスが完全に機能し、主導権を握っていた。

 しかし、ただ一つ日本に不足していたのは勝つために最も大事なシュートを決める力だった。それがこの試合に限ってはドイツの方が上回っていたのだ。

 この時、責任を最も感じていたのはキャプテン山﨑佳菜子だったに違いない。スタメンに抜擢された山﨑だったが、シュートはことごとくリングに嫌われ続けた。それでも山﨑HCは前半20分間、彼女をベンチに下げることはなかった。

「しつこく粘り強く、最後まであきらめずにやり続けることが大事。そのことをみんなに伝えたかった。本人は辛かったと思いますが、でもみんながサポートしてくれていました」

 指揮官の言葉通り、コートの中では、A代表でも活躍し国際大会の経験を積んでいる柳本あまねや財満いずみが「どんどんシュート打っていいよ!」と声をかけていた。そしてベンチからも常に大きな声がコート上に送られ、チームは一体となっていた。

 山﨑自身もまた、どれだけリングに嫌われても、諦めずに何度もゴールに向かっていった。

「これほど厳しい試合になっているのは絶対に自分のせいなのに、それでもそういう雰囲気がチームには全くなかった。そのおかげで、私も心折れることなく、最後まで自分のやるべきことをやろうと思うことができました」

 このチームと山﨑の思いが、最後の最後に大きな実りをもたらすことになる――。

キャプテン山﨑、苦しみ抜いた末に決めた値千金のシュート

柳本あまねがフリースローを2本決めて、日本はリードを奪った [写真]=斎藤寿子

 試合は、日本が主導権を握りながらも、スコアでリードし続けたのはドイツの方だった。第1クォーターは6-12とダブルスコアに。第2クォーターで巻き返し、16-17と1点ビハインドとしたものの、第3クォーターで再び24-29と引き離された。

 そして迎えた第4クォーター、一時はこの試合最大となる7点差をつけられてしまう。 だが、日本は集中を切らすことなく、勝利することだけを信じ続けていた。「負ける気がまったくしていなかった」と柳本。意気消沈する者は誰一人いなかったという。

 すると、中盤から柳本と碓井琴音が立て続けにシュートを決め、残り4分で34-35と1点差に詰め寄った。だが、1点は遠く、なかなか同点に追いつくことができずにいると、ドイツがシュートを決め、3点差とされてしまう。再びドイツに流れがいきかけたその時、チームを救ったのはキャプテンだった。

 第3クォーターで一度ベンチに下がった山﨑だったが、第4クォーターの後半に再びコートへと送り込まれた。「余計なことを考えずに、ボールを持ったらゴールに入れることだけを考えていた」という山﨑は、残り1分半、彼女らしいキレのある動きでゴールに近づき、バンクショットを決めてみせた。さらに相手ファウルを受けバスケットカウントに。山﨑はフリースローも決め、3Pに値するプレーで同点にしてみせた。

 苦しみ続けてきたキャプテンの気迫のこもったこのプレーで、チームは一気に勢いづいた。得意のプレスディフェンスでドイツの攻撃をほぼ完璧に封じると、残り1分、柳本が相手ファウルを受け、フリースローを得た。実はこのわずか2分前、1点差に詰め寄っていた場面で柳本はフリースローを2本ともに落としていた。

 しかし、チームメイトから「リラックス! リバウンドは必ず取るから!!」と声をかけてもらったことで肩の力が抜けたという柳本は、1本目を見事に決め、日本は逆転に成功。その後、追加点を挙げ、42-37でドイツを破った。

「ここにくるまで選手たちは、悩んで、泣いて、苦しんできたはずです。その成果が、この試合で出たのだと思います」と山﨑HC。過去2大会では5位、6位といずれもメダル争いに加わることができなかった日本だが、今回はついに初のベスト4進出を決めた。

 明日の準決勝では、強豪アメリカと対戦する。A代表メンバーが数多く揃い、今大会では優勝候補の筆頭に挙げられている。だが、その強豪相手にも決してひるむつもりはない。最大の武器である”チーム力”で、最後まで戦い抜く。

文・写真=斎藤寿子

試合の模様は「女子U25世界選手権公式HP」でライブ配信されています。
https://www.youtube.com/user/iwbforg/featured

BASKETBALLKING VIDEO