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「女子U25世界車いすバスケットボール選手権大会」(タイ)は大会5日目の27日、準決勝が行われ、日本はアメリカと対戦した。アメリカは、今大会では他国を圧倒し、抜きんでた存在として優勝候補の筆頭に挙げられている強豪。そのアメリカに対し、日本は果敢に挑み続けたが、力及ばずに24-78と完敗を喫した。最終日の3位決定戦では史上初のメダル獲得を目指す。
昨年、ドイツで開催されたA代表の世界選手権。そのトップレベルのステージに出場したメンバー9人を擁するU25アメリカ代表。翻って、U25日本代表は今大会が国際大会デビューというメンバーがほとんど。昨年の世界選手権に関していえば、日本女子は出場権を獲得することさえできず、すでにA代表でも活躍している柳本あまね、財満いずみも世界トップの舞台を経験してはいない。
しかし、山﨑沢香ヘッドコーチはアメリカに対して「打つ手がないわけでない」と考えていた。日本の武器であるトランジションバスケを遂行すれば、必ず勝機はある。そう踏んでいた。
ところが、「勝てば決勝」という大舞台に、緊張のあまりにいつも通りのプレーができず、アメリカのプレスディフェンスに苦戦を強いられた。第1クォーターはターンオーバーを繰り返し、シュートシーンにもっていくことさえできなかった。
一方、アメリカは昨年の世界選手権でチーム最多得点をたたき出したエースのローズ・ホラーマンが、次々とゴール下からボールをネットにねじこむ。フィールドゴール成功率83%という高確率で21得点を叩き出した。
日本は柳本あまねのミドルシュート1本にとどまり、いきなり2-31と大差をつけられた。
落ち着きを取り戻した第2クォーターはターンオーバーこそ2と激減したものの、日本のシュートの確率は上がらず、エースを中心に得点を伸ばすアメリカとの差はさらに広がり、9-51で試合を折り返した。
後半に入ると、アメリカはメンバーを替え、ディフェンスもプレスからハーフコートへとシフトした。すると日本のシュートシーンが増え、相手のファウルを受けてフリースローを得るなど、得点のチャンスが生まれた。しかし、フィニッシュを決めきることができず、思うように得点を積み重ねることができなかった。
24-78。まさに”完敗”だった。
しかし、最後までチームの士気は下がらなかった。どれだけ点差が離れても、意気消沈する雰囲気はなかった。
それが顕著に表れていたのが、ハーフタイムだ。控室からコートへと戻ってきた選手たちには明るい笑顔があり、活気に満ち溢れていた。そのことについて、山﨑HCはこう説明する。
「今大会、海外のチームを見ていて、真剣勝負の中でもゲームを楽しめるチームこそが強くなっていくんだろうなと感じたんです。日本に足りないのは、そこなのかもしれないなと」
そんな指揮官の思いは、選手たちにしっかりと伝わっていた。コート上で何度も笑顔でチームメイトに声をかけていた財満は、アメリカ戦の感想をこう語る。
「もちろん自分たちも勝ちに行った試合でしたが、アメリカは本当に強かった。でも、今大会で一番強いであろうアメリカと対戦することができたのは嬉しかったし、楽しかった。ボコボコにはされてしまいましたが、楽しい40分でした」
そして、こう続けた。
「でも、明日は今日以上に勝ちにこだわっていきたいと思っています」
明日の3位決定戦に勝てば、女子U25としては史上初。A代表を含めても、世界選手権というステージでの日本女子のメダル獲得は初の快挙となる。
その相手は、予選プール初戦で敗れたイギリスだ。「選手たちには『世界選手権で自分たちはアメリカにしか負けていないと言って帰ろう!』と伝えました。イギリスともう一度対戦して、勝って日本に帰りたいと思います」と山﨑HC。財満も「自分たちは失うものは何もない。ただ自分たちのバスケをするだけ。必ず銅メダルを獲得して、歴史を変えたいと思います」と意気込んだ。
過去2大会では届かなかったメダルゲームへの挑戦権を得て、U25の歴史を塗り替えた。次はイギリスへの雪辱を果たし、メダルを獲得して日本女子の新たな歴史に名を刻む。
文・写真=斎藤寿子
試合の模様は「女子U25世界選手権公式HP」でライブ配信されています。
https://www.youtube.com/user/iwbforg/featured