2025.08.20
停滞するFA市場で衝撃的なニュースが報じられた。それは、2016年のドラフト1位指名、ベン・シモンズが引退を検討しているというものだ。
『New York Post』のステファン・ボンディ記者によると、シモンズは「NBAでプレーを続けたいかどうか分からない」と周囲に漏らしているという。また、NBAに精通するマーク・スタイン記者もSNSを更新し、「代理人のバーニー・リー氏は、シモンズが今後の進退を検討しているとして、同選手の代理人を辞任したことをNBPA(全米バスケットボール選手協会)に報告した」と伝えている。
As Ben Simmons decides his next career steps, I'm told Bernie Lee has notified @TheNBPA that he has formally removed himself from the union's ledger as Simmons' agent.
— Marc Stein (@TheSteinLine) September 4, 2025
シモンズは、昨シーズンをブルックリン・ネッツとロサンゼルス・クリッパーズで過ごした。平均スタッツは5.0得点4.7リバウンド5.6アシストと、いずれもキャリア最低の数字となったが、ケガから復帰以降最多となる51試合をプレー。再起に向けた足掛かりになるかと思われていた。
現在、シモンズとの契約に関心を示している球団のひとつに、ニューヨーク・ニックスがある。ジェイレン・ブランソンを中心としたチーム作りが軌道に乗り、直近は3シーズン連続でカンファレンス準決勝進出以上、昨年はカンファレンスファイナルにも駒を進めていた。今シーズンからは2度のNBA最優秀コーチであるマイク・ブラウンを新監督に迎え、シモンズはタイトルを狙う同球団にトップレベルのサイズ、プレーメイク、ディフェンスをもたらす興味深い存在として、数週間前から獲得候補に名前が挙がっている。
しかし、シモンズ獲得は諸刃の剣でもある。ディフェンスでは全ポジションを網羅するオールディフェンシブレベルの守備力を提供する一方で、オフェンスでは致命的なシュートレンジの欠如が懸念材料に。度重なる手術と神経圧迫による背中の心配も完全に払拭されたわけではなく、世間からの厳しい目線とオールスターからの転落劇はモチベーション維持にも悪影響を与えている。
サラリーキャップが埋まっているニックスには金銭的な制約もあり、シモンズに提示できる契約はベテランミニマムのみ。また、球団は今夏にリーグでも指折りのシックスマンであるジョーダン・クラークソンや、昨シーズンにNAB復帰を果たしたガーション・ヤブセレを獲得しており、オフェンスプランに組み込みずらいシモンズの出場時間を確保できるかは不確かで、FA市場における獲得候補もシモンズのみではないとされている。
ボンディ記者は、シモンズがすでにキャリアで2億ドル(約300億円)を稼いでいること、複数回の手術を経てまで身体に負担をかけ続けたいとは思わないことを理由に、人生の第二章を歩み始める可能性を指摘している。一方で、ニックスの他にもサクラメント・キングスやゴールデンステイト・ウォリアーズもシモンズの獲得に関心を示しているようだ。
シモンズが現役続行を選ぶなら、残された道は限られている。来シーズンに与えられる最初の役割は、かつてのような中心選手ではなくロールプレイヤーであり、セカンドユニットを支える立場を受け入れるのであれば、再起の道は開けてくるだろう。一方で、これ以上の負担を強いる必要があるのかという問いも正当なもので、無理にプレーを続けるよりも、心身の健康を守り、次の人生に進む選択肢も賞賛に値する。
かつてはレブロン・ジェームズ(ロサンゼルス・レイカーズ)をつぐ存在として期待されていたシモンズは、まさに未完の才能と言える。来シーズンに待ち受けるのは、役割を受け入れる勇気か、早すぎる幕切れか。決断の行方を多くの関係者とファンが固唾を飲んで見守っている。
文=Meiji
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