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ウェンバンヤマがホルムグレンとのライバル関係を否定「比較にならない」その真意と両者の現在地

ライバル関係を否定した”ユニコーン”たち[写真]=Getty Images

 NBAは、いつの時代も“ライバルの物語”をもって語られてきた。過去を振り返ればマジック・ジョンソン(ロサンゼルス・レイカーズ)とラリー・バード(ボストン・セルティックス)、2010年代はレブロン・ジェームズ(ロサンゼルス・レイカーズ)とステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)がファイナルで幾度も激突し、時代の象徴として語られてきた。

 新時代の到来においては、ヴィクター・ウェンバンヤマ(サンアントニオ・スパーズ)とチェット・ホルムグレン(オクラホマシティ・サンダー)の若手センター同士の競争も注目に値する。共に“ユニコーン”としての特性を持ち、従来のビッグマン像を更新する存在であることから、両者は今後数年にわたり、比較対象としてメディアが持ち上げることだろう。

 だが、ウェンバンヤマは、ホルムグレンとのライバル関係を全く気に留めていない様子だ。仏紙『レキップ』のマキシム・オーバン記者からホルムグレンとのライバル関係について質問を投げかけられると、スパーズの背番号1はその構造を一蹴した。

「いや、そういうことは考えていません。少なくともバスケットボールの観点では、僕たちを比較することはできません」

 

 ウェンバンヤマの発言は、文字だけを切り取ると、ホルムグレンに対しての強烈なメッセージに聞こえる。しかし、エイリアンはセンターという共通項ではなく、互いの立場や役割の違いから、このような発言に至ったように思える。

 今シーズンのウェンバンヤマの平均スタッツは、23.7得点11.8リバウンド3.6アシスト0.9スティール3.1ブロック。一方のホルムグレンは18.2得点7.6リバウンド1.6アシスト0.6スティール1.4ブロック。数字で見ると、コート上での影響の差は、決して小さくない。また、ウェンバンヤマは新人王、ブロック王、オールスターとオールディフェンシブファーストチームの選出など、個人記録でもホルムグレンを圧倒している。

 加えて、ホルムグレンは昨シーズンのチャンピオンであるが、チームでの立ち位置はシェイ・ギルジャス・アレクサンダーを支える主力の一角。それに対して、ウェンバンヤマは近年は再建期にあったスパーズにおいて、ルーキーから球団の未来を託されてきた。

 それでも周囲が両者をライバル関係と見るのは、致し方ないことなのかもしれない。機動力、ハンドリング、アウトサイド、ペイントエリアでの存在感など、7フッターの両者のプレースタイルには一定の類似点がある。また、ウェンバンヤマが勝利した2024年の新人王レースは、ホルムグレンが2位にランクイン。さらに、両者はNBA入り前の2021年に「FIBA U19バスケットボール・ワールドカップ」の決勝戦でも激突しており、試合のスタッツではウェンバンヤマが上回ったものの、結果はホルムグレンを擁するアメリカの優勝で幕を閉じ、MVPもホルムグレンの手に渡っている。

[写真]=Getty Images

 だが、ライバル関係にないという意見は、ホルムグレン側も同様のようだ。『ESPN』のマリカ・アンドリュース記者との会話において、選手本人がそれに言及するのはお門違いという見解を示している。

「ライバル関係を宣言するのは、選手やチームの役目だったことは一度もないのではないでしょうか。なので、聞く相手を間違えていると思います。僕らは真っ当に会話をしたこともありません」

 両者は、NBAカップ準決勝とクリスマスゲームを含むレギュラーシーズンの連戦で三度激突。現在、ウェスタンカンファレンスで1位と2位につける上位対決となったが、直近のゲームは全てスパーズに軍配が上がっている。

 仮に選手同士が否定しても、サンダーが現在の勢いを維持し、スパーズが覇権争いに本格的に絡み始め、大舞台での激突が増えれば、2人の考えも変わってくるかもしれない。直接対決の勝敗、プレーオフでの存在感、そしてチームをどこまで押し上げたか。いつの時代もこれらの要素は、自然とライバル関係の輪郭を浮かび上がらせるリーグの性である。

 サイズとスキルを兼ね備えた対になる才能たち。この競争は、まだ序章に過ぎない。

文=Meiji

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