2026.02.21
昨シーズンからWKBL(韓国女子バスケットボールリーグ)で導入されたアジアクォーター制度。日本国籍の選手を各チーム2名まで受け入れが可能というものだが、昨シーズンに続いて今シーズンもこの枠でプレーしているのは3選手で、そのうちの一人がハナ銀行に所属している飯島早紀だ。
飯島は昨シーズン、BNKサムの一員としてチームの優勝に貢献。3戦先勝のチャンピオン決定戦(ファイナル)では2戦目で15得点、3戦目では14得点とオフェンスでの働きも大きかったが、シーズンを通しては特にディフェンスでの活躍が光った。
今シーズン、ドラフト1位でハナ銀行に入団した飯島は、BNKにいた昨シーズンとは役割が大きく変わった。指揮を執るイ・サンボム監督は「BNKではディフェンスがメインだったけれど、ハナ銀行ではエースとして、チームでは一番の得点のオプションとなっています」と、言う。
飯島自身も、2シーズン目の変化と心境をこのように語る。
「ボールがないところの動きを自分の長所としてやってきていたので、BNKではそれを中心にやっていたし、チームからも求められていました。でも、ハナ銀行では、ボールを持って得点を取ることを求められているので、得点にはこだわっていますし、責任を持って取り組まないといけないとシーズン前から考えていました。今は2ケタ得点をコンスタントに取るということを意識しています」
開幕からここまで24試合に出場し、1試合平均15.20得点はチームトップ。リーグ全体の得点ランキングでも5位(2月20日時点)と、新たな役割をしっかり結果で示している。
チームも昨シーズンは最下位だったものの、今シーズンは序盤から白星を重ねて首位をひた走っている。「ハナ銀行が勝っているのはサキのおかげだよ」など、WKBLの現場に行けば韓国の記者や関係者からはそういった声を掛けられるが、スタッツや試合を見れば、それが決して日本から来た記者へのリップサービスではないことは分かる。

長い間、韓国バスケをけん引したキム・ジョンウンが今季で引退(右)。「オンニがいい形で終われるように残りの時間大事に過ごしたい」と飯島 [写真]=WKBL
KBL(韓国プロバスケットボールリーグ)のチームや元韓国男子代表ヘッドコーチの経験があるイ監督が今シーズンより指揮を執るハナ銀行は、ハードなディフェンスとトランジションの速いバスケットを主体としたスタイルへ一変した。「人が動く中でスペースがあるところにドライブするというのが、自分の中ではすごくやりやすいです。2桁得点できているのは監督のバスケットスタイルと自分のスタイルが合っているのかなと思います」と、飯島にとっては現在のスタイルも自身のプレーにプラスに作用しているようだ。
ディフェンダーからスコアラーへの華やかな転身。もちろん、そこには苦労もあったはずだ。「私がオンボールピックや2対2など、ボール持って動くプレーヤーを長くやってきていないということは監督が理解してくださっているので、最初の頃はミスが出ても多めに見ていただいたというか。積極的にやるということだけを言ってくださっていました」と、飯島はシーズン前のことを振り返る。
対してイ監督も「最初は、サキにはパスをせずに全部攻めるようにと言いました。それをやりながら彼女の攻撃力もどんどん上がり、ここまで来たと思います。(相手チームの)マークが厳しいですが、自分の持っているオフェンスのポテンシャル、力を出せているので、サキ自身も楽しみを感じているのではないでしょうか。ここまで大変だったとは思うけれど、彼女が頑張って乗り越えてくれたのでありがたいです」と、語った。

飯島の可能性を見出したチョ・ソンミンコーチ(右)とイ・サンボム監督(左) [写真]=WKBL
そもそも、飯島をスコアラーに起用したキッカケは何だったのか? そんな疑問にイ監督は、ともに指導に当たるチョ・ソンミンコーチの名前を挙げた。
チョ・ソンミンコーチは、現役時代には女子韓国代表としてオリンピックをはじめとする国際大会で活躍してきたレジェンドの一人。「私は男子チームを見てきたので、女子バスケットをあまり知らなかったのですが、チョ・ソンミンコーチがサキには攻撃力もあると言いました」と、イ監督は飯島のドラフト1位指名にチョ・ソンミンコーチの助言があったことを明かしてくれた。そして「一緒に練習をやるようになってサキを見たら、本当にオフェンスのポテンシャルがあると感じました」とも語った。
「今までは、(オフェンス面で)自分よりも上手な選手がいるからと、私は自分の長所を出せる場面で頑張ろうと思っていました。だけど、(今は)やらざるを得ない状況の中で、監督が才能を引き出してくださったというか。才能と言っていいほどのものではないですが、できるんだというマインドにしてくださっています」と、飯島。さらに「それは若い選手たちも同じで、監督が『できるんだ』『自分がやるんだ』というマインド設定にしことが今こうしてチームの結果につながっていると思います」と、監督への感謝の言葉を惜しまなかった。
今やハナ銀行のエースだが、飯島本人は「エースという言葉を使うと自分の中で負担になるので、積極的に攻める、得点をするということだけを考えるようにしています。あとはディフェンスやリバンドを今まで通りやること。若い選手が多いので、厳しい時間帯や苦しい時間帯にやらなきゃいけないというのはありますが、それが自分がエースだからということではないですね」と、特別な気負いはない。
そして取材の最後には、チームの現状をしっかりと把握した上で終盤に向けた意気込みをおだやかな口調ながらも熱く語った。
「ハナは(シーズンの)スタートが良くて今の順位があります。でも、後半戦はどのチームも主力選手の復帰やチーム力も上がるので、ハナはシーズン序盤からメンバーがそろった状態だったこともあって、これから厳しい戦いが続くと思います。その中でプレーオフに向けて試合をしながら成長することを考えて一試合一試合を戦っていけたら。個人としては、点を取ることはもちろん、取れないときに得意のディフェンスやミスをゼロに近づけることやリバウンドで流れを引き寄せることを頑張りたいです。韓国は得点を見られがちなところがあるのですが、それだけではない価値があることを若い選手には感じてもらいたいし、そういうところで頑張れる選手が多くいるチームが勝ち上がると思うので、そこを自分が練習の中から表現していきたいです」
文=田島早苗
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