2020.02.07
8月9日、デトロイト・ピストンズのドウェイン・ケイシーHC(ヘッドコーチ)が来日し、白鷗大学 第一体育館(栃木県小山市)で女子バスケットボール部の選手たちへクリニックを行った。
クリニック終了後、ケイシーHCは会場に集まったメディアの質問に対応。ここでは、現在指揮を執るピストンズの現状や自身のコーチングキャリアの中で印象に残っている選手たちについて紹介していきたい。
一昨季、トロント・ラプターズをフランチャイズ史上最高成績(59勝23敗)へと導き、最優秀ヘッドコーチ賞に選ばれたケイシーHCは、昨季からピストンズの指揮官へ就任。ブレイク・グリフィンとアンドレ・ドラモンドというオールスター選出経験のある2人のビッグマンを中心とした布陣で戦い、イースタン・カンファレンス8位の41勝41敗をマーク。2016年以来初となるプレーオフの舞台へと導いた。
ミルウォーキー・バックスとのプレーオフ1回戦。ピストンズは主砲グリフィンをヒザの痛みのため2試合欠き、結果としては4戦全敗に終わってしまったものの、「我々は39勝という下馬評を打ち破りました」とケイシーHCが語ったように、開幕前の低評価を覆し、大混戦となったイースタン・カンファレンスのプレーオフ出場争いで生き残ることに成功。
就任2シーズン目となる今季について、ケイシーHCは「チャンピオンシップを勝ち取るということがゴールです。そもそも私はゴール設定というのがあまり好きではないんですが、プレーオフに出場することは最低のゴールだと思っています」と語り、2年連続でプレーオフへ進出することを最低限の合格ラインとした。
そして「ただプレーオフへ進むだけではなく、自分たちのホームでプレーオフを迎えることができるような勝率を残すこと。それが自分たちの設定すべきゴールだと思います。イーストはウエストと比べてワイドオープンだと思っています」と言及。プレーオフ1回戦でホームコートアドバンテージを手にするべく、イーストの第4シード以上に入ることを狙っていると明かしていた。
ピストンズにはグリフィンとドラモンドに加えて、レジー・ジャクソンやラングストン・ギャロウェイ、昨季プレーオフで平均15.0得点とステップアップしたルーク・ケナードがいるのだが、今夏チームが行った戦力補強についてもケイシーHCは手ごたえを感じているという。
昨季終了後、ピストンズはバックスとのトレードでスイングマンのトニー・スネル、フリーエージェント(FA)戦線ではマーキーフ・モリスとティム・フレイジャー、そしてデリック・ローズを獲得している。
特にケイシーHCが期待しているのは、シカゴ・ブルズ在籍時の2011年に史上最年少でシーズンMVPを獲得し、昨季ミネソタ・ティンバーウルブズで相次ぐ膝のケガから見事復活したローズ。
日本や中国をはじめ、アジアでも高い人気を誇るローズについて、ケイシーHCは「彼の気持ちを込めてハードにプレーする姿勢というのが、やはり多くのファンに届いているんだと思います」とコメント。そして「昨季、彼はキャリアハイとなる37.0パーセントという自己最高の3ポイント成功率を残しています。彼を獲得できたことにとても興奮しています。彼にはドライブやキックアウト、そこからのショットがあり、オフェンスの起点になることができるため、すごく期待しています」と語っていた。
ピストンズはローズ、モリス、フレイジャーを加えたことで戦力増強に成功したと言っていいだろう。今季、ケイシーHCはピストンズを昨季以上の戦績へと導くべく、9月下旬から始まるトレーニングキャンプに臨むこととなる。
これまでNBAで約10シーズンのHC経験、約15シーズンのAC(アシスタントコーチ)経験を持つケイシーHCは、クリニック中にかつてラプターズで指導していたビスマック・ビオンボ(現シャーロット・ホーネッツ)や昨季最優秀躍進選手賞(MIP)に輝いたパスカル・シアカム(ラプターズ)、デマー・デローザン(現サンアントニオ・スパーズ)の成長について語っていたのだが、これまでのコーチ経験の中で、最も印象に残っている選手は誰かと聞かれ、このように答えてくれた。
「HCとしてはケビン・ガーネット(元ウルブズほか)、デローザンとカイル・ラウリー(ラプターズ)、ピストンズのグリフィンです。そしてドラモンドがもうすぐグリフィンを追い越すのではないかと期待しています。ここ2、3年におけるドラモンドの成長はすばらしいものです」。
ケイシーHCは将来のバスケットボール殿堂入りが確実なガーネットを皮切りに、自身の指揮の下でオールスターの常連へと成長したデローザンとラウリー、複数回のオールスター選出経験を持つグリフィンとドラモンドといったリーグ有数の選手たちを指導してきた。
また、1994-95シーズンから2004-05シーズンをシアトル・スーパーソニックス、08-09シーズンから10-11シーズンまでダラス・マーベリックスでACを務めてきたケイシーHCは、96年にNBAファイナル進出、11年にはNBAチャンピオンという見事な実績を残している。AC時代に印象的だった選手について、ケイシーHCは5選手の名前を挙げた。
「シアトルではゲイリー・ペイトン、ショーン・ケンプ(共に元ソニックスほか)、ダラスではダーク・ノビツキー(元マブス)、ジェイソン・キッド(元マブスほか)。私はそういったすばらしい選手たちと関わることができました。このような選手たちをコーチすることができ、本当にうれしく思っています。もしそのリストがあるのだとしたら、私はあと1人、ラシャード・ルイス(元ソニックスほか)も挙げたいです。1人に絞ることは難しいですね」。
すでに殿堂入りしているペイトンとキッド、昨季限りで現役を引退したノビツキーはそれぞれの現役時代において、リーグ屈指の実力者として活躍したリーグ有数のレジェンド。ケンプも全盛時にはリーグのベストプレーヤーの1人と称されていたパワーフォワードで、2度のオールスター選出を誇るルイスもキャリアの中で平均20得点以上を3度記録したスコアラー。
2003年11月1日(現地時間10月31日)に行われたロサンゼルス・クリッパーズとのNBAジャパンゲームズ第2戦。約2万人が詰めかけたさいたまスーパーアリーナで、ルイスは各クォーターで2ケタ得点をたたき出し、キャリアハイとなる50得点という超絶パフォーマンスを披露。
今年は約16年ぶりにジャパンゲームズ(ラプターズ×ヒューストン・ロケッツ)が行われるのだが、ケイシーHCは「トロントとヒューストンによるジャパンゲームズは、非常に盛り上がると思います。私もトロントファンとして楽しみにしています」と口にしていた。
昨季の覇者ラプターズにはラウリーとシアカムに加えてマルク・ガソルやサージ・イバカといった役者がおり、ロケッツにはジェームズ・ハーデンとラッセル・ウェストブルックというMVP獲得経験者が所属。ケイシーHCのお墨付きをもらったことで、今年のジャパンゲームズはますます盛り上がることだろう。
文=秋山裕之
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