2020.01.17
昨季のカワイ・レナード(ロサンゼルス・クリッパーズ)は、膝の問題を理由に医療スタッフとの相談の上で連戦のどちらかあるいは両方を欠場し、レギュラーシーズン出場回数を60試合に制限。これによって心身のピークが最高の状態でプレーオフに挑み、見事トロント・ラプターズを優勝へと導いたことで、“ロード・マネジメント”と呼ばれる肉体管理法を確立させた。1シーズン82試合という長期のシーズンに加え、年々ペースが加速していく現代バスケット、ロード戦や連戦といった厳しいスケジュールなどを鑑みれば、肉体を資本とする選手たちの体への負担は計り知れない。よってレナードは、新たな手法によって成功をした選手となる。
だが一方で、この方法に難色を示す現役選手やレジェンドらが存在することも事実。たとえば現在シャーロット・ホーネッツのオーナーであるマイケル・ジョーダン氏(元シカゴ・ブルズほか)は、球団の選手たちに「君たちは82試合プレーするためにお金を受け取っているんだ」と説いており、現役時代もファンのためにコートに立って戦うことをモットーとしていた。このメンタリティに賛同するかのように、コービー・ブライアント(元ロサンゼルス・レイカーズ)やレブロン・ジェームズ(レイカーズ)らも、試合に出場できるように徹底して肉体の管理を行うことが真のプロフェッショナルであり、見に来てくれるファンのために戦うことが重要であると語っている。
現時点ではこのロード・マネジメントには賛否両論があり、一概にはどちらの考えが間違いなく正しいと決定することは難しい。肉体と精神がどれだけの強度に耐えられるかは個人差があり、コンディションの整え方もそれぞれ異なるだろう。皆が食中毒を抱えてファイナルで38得点を叩き出したジョーダン氏や、多くのケガに苦しみながら戦い抜いたコービーのようになれるわけでもない。レナードのようにコンディションを懸念したり、また肉体を酷使していたデリック・ローズ(デトロイト・ピストンズ)のように、もし10年前にロード・マネジメントがあったのなら、度重なる大ケガをすることなくブルズに残留していただろうと、過去を回想する選手もいるかもしれない。
「プレーすることを愛しているなら、俺はプレーする」と、『Bleacher Report』のインタビューに応じるのはデイミアン・リラード(ポートランド・トレイルブレイザーズ)だ。彼はレナードのロード・マネジメントについて、「人々はほかのすべての試合をプレーするカワイに対して、くだらないことを多く投げかけているね。でもたとえ彼が健康体でプレーしている時も、彼は何かを対処しているように感じる」とコメント。「だから状況次第だ。彼はひょっとしたら、本来はプレーすべきではないケガを抱えているのかもしれない。そして彼はその何かを常に抱えながら戦っているのかもしれない。彼は自分の能力の最大を引き出すために、抱えている何かを対処している」とつづる。あくまでレナードのコンディションの問題に着眼点を置く姿勢を取っている。
バスケットボールの進化と時代の移り変わりによって、新たに生まれた“ロード・マネジメント”という手法。球団としては主力選手のケガのリスクの軽減や、ポストシーズンに向けて長期的な視点と政策を掲げることは当然のこと。だが一方で、優勝のためにあまりにも合理的になり、健康体でも出場しないとすれば、高いチケットを払って観戦しに来たファンは幻滅する。そしてNBAという本来人々を熱狂させ高揚させるというエンターテインメント性が損なわれることだろう。現状ロード・マネジメントに関しては、リーグ全体を見ても考え方が二極化している。議論されている問題がセンシティブである以上、一概に相手の立場や事情を非難することは正しいとは言い切れない問題だ。
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