2020.09.26
「この試合が始まる前、僕はコーチへこう言ったんだ。『コーチ、最高のプレゼントを用意しています。あなたを家に帰らせるか(シーズン終了で開催地から離脱)、カンファレンス・ファイナルへと連れていくことです』とね」。
ロサンゼルス・クリッパーズとデンバー・ナゲッツによるウェスタン・カンファレンス・セミファイナルの第7戦が行なわれた9月16日(現地時間15日、日付は以下同)は、ナゲッツのマイケル・マローンHC(ヘッドコーチ)にとって49歳の誕生日。そこでナゲッツのニコラ・ヨキッチは指揮官へこう話したと明かした。
3勝3敗で迎えたシリーズ最終戦。勝利したチームがロサンゼルス・レイカーズとのウェスト決勝へと勝ち進むという大舞台で、ナゲッツは前半に12点ビハインドを背負いながら、後半に50-33でクリッパーズを圧倒。最終スコア104-89で制し、2009年以来初のカンファレンス・ファイナル進出、そしてマローンHCへ最高のプレゼントを贈った。
この試合、ジャマール・マレーがゲームハイの40得点に4リバウンド5アシスト、第3クォーター終了時点でトリプルダブルを達成したヨキッチは試合全体で16得点22リバウンド13アシストに2スティール3ブロック。さらにギャリー・ハリスが14得点6リバウンド、ジェレミー・グラントが14得点5リバウンドを記録。
カワイ・レナード、ポール・ジョージというリーグ屈指のオールラウンダーを擁するクリッパーズは、ルー・ウィリアムズにモントレズ・ハレル、パトリック・ベバリーといった好選手も複数いたため、下馬評ではナゲッツが不利という声が大多数を占めていたのは仕方ないことだったのかもしれない。
だがユタ・ジャズとのファーストラウンドを1勝3敗からの3連勝で制したナゲッツは、このシリーズでも1勝3敗という窮地からはい上がり、またもや3連勝で下馬評を覆して見せた。
「皆を黙らせるのは楽しいね」と口にしたマレーは、前半だけで25得点を奪ったほか、試合時間残り2分24秒にとどめとなる3ポイントを放り込むなどクリッパーズに精神的ダメージを与え続けた。
「ものすごく誇りに思う。選手たち全員のことをね。彼らは決して意気消沈することはなかった。お互いのことを信じていたんだ。我々がこのシリーズを制することはノーチャンスだと見られていた。そんな中で、(1勝3敗から)非常に優秀なチーム相手に3回も勝利する方法を見つけ出したんだ。彼らには何も言うことはないよ」。
マローンHCはアンダードッグ(勝ち目がないチーム)と見られながら、優勝候補の一角を打つ負かしたことを振り返っていた。
「本当に面白いチームだ。僕らには多くのスーパースターがいないのにね」とヨキッチは振り返っていたが、ナゲッツにあってクリッパーズにないもの。それは主力が2、3シーズンを通して一緒にプレーしてきたことで培ってきたケミストリーと選手、コーチ間における信頼関係だったと言えるだろう。
一方のクリッパーズは、ハレルが20得点を挙げるも、レナードは14得点6リバウンド6アシスト、ベバリーとジャマイカル・グリーンがそれぞれ11得点、ジョージは10得点、ウィリアムズは7得点と不発。
チーム全体でフィールドゴール成功率37.8パーセント(34/90)、3ポイント成功率25.7パーセント(9/35)に終わり、肝心の第4クォーターでわずか15得点。レナードとジョージは2人合わせて11本のショットを放つも全てが空を切り、まさかの無得点に。
クリッパーズはここ2試合で2ケタ点差のリードを手にしていながらもナゲッツに逆転負けを喫しており、レナードは「言い訳はしない。俺たちは決着をつけるべきだった。この3試合はお互いに鏡を見ているかのような展開になってしまった」と悔やんだ。
「この負けで傷ついた。でも俺たちは前に進まなきゃ。共にプレーして1年目、もちろん俺たちはこの試合に勝ちたかった。だけど、俺たちはここまでとても客観的に見ている。一緒にプレーして、未来に向けて何かを作っているんだとね」。
ジョージは前向きに捉えていたものの、この敗戦でクリッパーズはフランチャイズ史上初のカンファレンス・ファイナル進出が来季以降にお預け。ドック・リバースHCにとって、プレーオフのシリーズで3勝1敗からシリーズを落とすという屈辱を味わうのはこれで3度目。
昨夏加入したレナードとジョージは3年契約を結んでいるものの、3年目はいずれもプレーヤーオプションのため、優勝するチャンスは実質あと1シーズンしかない。“ラストチャンス”にチャンピオンシップを勝ち取るべく、今季終了後にクリッパーズがどのような動きを見せるのかに注目したい。
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