2021.04.26
NBAの“場外討論”で話題に挙がっているトピックといえば、リーグのロゴ変更についてだろう。
これは、ヘリコプターの墜落事故により命を落としたコービー・ブライアント(元ロサンゼルス・レイカーズ)への追悼の意を込めて始まったムーブメントだ。事故直後、オンライン署名サイト『Change.org』には、わずか数日で200万件を超える変更の署名が集まり(現在は320万超)、コービーのレガシーをNBA全体で継承していくべきという声は今なお後を絶たない。
最近では、カイリー・アービング(ブルックリン・ネッツ)が自身のSNSにコービーのNBAロゴを投稿。黒人がこのリーグを築いたことを強調したうえで、「彼は僕らの世代にとって皆のスタンダードだった。それは今後も変わらない。僕はそれを歴史に残る何かにしたい」とし、変更を切望した。
現在のロゴは、現役時代に10度もオールNBAファーストチームに選出されたレジェンド、ジェリー・ウェスト(元ロサンゼルス・レイカーズ)を象ったものと言われている。ウェストは引退後も長らく古巣のゼネラルマネージャーを担当し、コービーとともに優勝を経験。ブラックマンバも慕っていたとされる同氏は、この議論について「そうしたいのであれば、私はそれを支持します」と、ロゴの変更を歓迎している。
その他にも『ESPN』の名物アナリストであるケンドリック・パーキンス(元オクラホマシティ・サンダーほか)らもコービーロゴへの変更を希望しているが、必ずしもバスケットボール関係者全員が同じ意見を持っているわけではない。
例えば、フィラデルフィア・セブンティシクサーズのヘッドコーチを務めるドック・リバースは、「答えは分からない」としながら、マイケル・ジョーダン(元シカゴ・ブルズほか)を候補に挙げている。
「聞いてほしい。もし(新しい)ロゴを求めているなら、私はマイケルがいいと思う」
「我々は通常、歴史を理由に物事の変化を望み、それに適していないものを見つけ出す。だが、ジェリーはロゴにふさわしいし、私は彼がロゴであり続けても何ら問題はない」
「つまり、私が言いたいのは『10~20年ごとにロゴを変更するのか?』ということだ。私はNBAのロゴが好きだし、据え置きにするべきだと思う。この意見は少数派だろうがね」
では、実際にリーグがロゴを変更する可能性はあるのだろうか。決定権を持つリーグコミッショナーのアダム・シルバーは、オールスターゲームの直前会見で飛び出た質問に対して、こう返答している。
「現在、リーグオフィスでロゴ変更に関する議論は行われておりません。このロゴは象徴的で、世界中に認知されています」
「コービー・ブライアントはリーグで最も偉大な選手の1人なので、ロゴ変更を検討する際には彼は間違いなく候補に入ることでしょう。しかし、今は適切なタイミングではないと感じています」
リーグは、ファンの意見とは裏腹に、現状は変更に前向きではない。シルバーは将来的な変更の可能性を示唆しながらも、ロゴの変更は法律的にも骨を折る作業であることを理由のひとつとしている。それは特定の個人をロゴに起用する場合、肖像権の問題などが生じるからであり、NBAはリーグとしてウェストがロゴであることを公式には認めていない。また、“リーグの発展に貢献した偉大なプレーヤー”というくくりでロゴ選びをする場合、該当の選手は数知れず、NBAは平等性を保つことができなくなってしまう。
もちろん、リーグとしてもコービーには最大の敬意を払いたいことだろう。現に、オールスターゲームのMVPは、昨年から“コービー・ブライアント賞”に変更されている。
シルバーは、公の場でロゴ変更論を収束させるような言葉を残したわけだが、ファンや関係者はリーグからの返答に理解を示すのか、はたまたコービー論がさらに加速するのか。もしかすると、ジョーダンvsレブロンのように、今後もしばらくは個人の意見が求められることになるかもしれない。
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