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NBA史上屈指のスター選手たちをそろえたブルックリン・ネッツだったが、急造軍団で頂点を取れるほど、リーグの壁は低くなかった。開幕前の優勝オッズの低さとは裏腹に、プレーオフの1回戦では、イメ・ユドーカ率いるボストン・セルティックスにスイープを決められてしまった。
シーズン成績に加えて、今シーズンは経営面でも大失敗の1年となってしまった。地元『New York Post』が関係者から入手した情報によると、ネッツのオーナーを務めるジョー・ツァイは、2021-22シーズンで5000万ドル〜1億ドル(65億円〜130億円)の損失を計上し、NBA史上最悪のファイナンス記録をたたき出してしまったという。
ツァイは、2019年8月にネッツと本拠地の『バークレイズ・センター』を買収。B2Bオンライン・マーケットプレイスでその名を世界に轟かし、約2兆円の企業価値を持つ中国「アリババ」と同様、ネッツでも最先端経営の実現を目指していた。
しかし、ツァイの「アリババ」での成功は、同球団に移管されなかった。
同氏は、ケビン・デュラントおよびカイリー・アービングと巨額な契約を締結する許可を下した。しかし、その副産物として、球団はNBA史上2番目に高額な約1億ドルのラグジュアリータックスが課せられている。
今シーズンのネッツのチケット販売総額は、1試合210万ドル(約2億7000万円)でリーグ4位の売上を記録。パンデミック前の2018-19シーズンと比較すると200パーセント以上の向上が見受けられ、これはリーグでも最大の上昇率だ。1試合のチケット販売枚数も約1万5000枚となり、同期比で26パーセント増。ただし、それでもニューヨーク・ニックスがビッグアップルの覇権を握っている現状は変わらなかった。ニックスは、今シーズンも決して満足のいく成績ではなかったが、1試合につきチケット販売数約1万6000枚、チケット販売総額300万ドル(約3億9000万円)を記録しており、2018-19シーズン比で9パーセント増をマークしている。
ネッツは、放映権や視聴率でも非常に良好な数字を残している。球団は全米テレビ視聴率トップ25試合のうち7試合にその名を連ねており、ロサンゼルス・レイカーズとのクリスマスゲームではリーグ最高の580万人の視聴者を集め、セルティックスとのプレーオフ4試合は『ABC』、『ESPN』、『TNT』の合計平均480万人と、2016年以来最も視聴されたファーストラウンドとなった。
こうした球団記録は字面と響きはいいが、ネッツの財務成績はリーグトップの球団とはまだ格差がある。NBA関係者の情報によると、ネッツが収支を合わせるには、ニックスやゴールデンステイト・ウォリアーズと同等の収益をあげる必要があったという。
ウォリアーズとネッツはほぼ同額のサラリーを負担しているが、ウォリアーズの1試合あたりの入場料収入は420万ドル(約5億5000万円)で、ネッツの2倍以上の売上をたたき出している。球団は2018-19シーズン以降、全体収益を約40パーセント増加させることに成功したものの、その数字は未だリーグ最高の成績とはほど遠く、ツァイのアッバモンディ解雇の原因は、こうしたビジネス面での差が埋まらなかったことにあると関係者は語っている。
ツァイはネッツをスポーツチーム史上最高額の23億5000万ドル(約3050億円)、『バークレイズ・センター』を10億ドル(約1300億円)でそれぞれ買収しており、大きな返済リスクを背負っている。もちろん、パンデミックの懸念が完璧に払拭されていない状況下での成績ではあるが、度々経営トップが入れ替わる状況はとても芳しいとは言い難い。
果たして、ネッツは今後数年でスポーツ産業屈指のビジネスモデルを確立することができるのだろうか。山積みの課題は、コート外にも存在する。
文=Meiji
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