2024.07.01
レフェリーの判定は試合結果を大きく左右することから、コーチや選手たちがポストゲームの記者会見で彼らに苦言を呈するシーンは少なくない。一方で、審判たちが特定の選手に対して語ることは極めて稀だろう。
レギュラーシーズン1500試合以上、プレーオフ100試合以上も笛を吹き、2005年のNBAオールスターゲームでも審判を任されたキャリア30年超えを誇る元NBAレフェリーのビル・スプーナー氏は、『The Athletic』に対してNBAの名物審判であるスコット・フォスター氏に言及。インタビューにおいて、キャリアで最も手を焼く選手の名前を挙げた。
「録音されていることを承知で言いましょう。私はよく『タフな選手や悪い奴は誰ですか?』と聞かれます。そして、32年のリーグキャリアでクリス・ポール(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)はこれまで相手にした選手で最も厄介だったと伝えると、彼らはラシード・ウォーレス(元デトロイト・ピストンズほか)の名前を挙げますが、全然違います。ポールは比べものになりません。ポールをいい人に見えると言いますが、私はそれに対して『彼のイメージ作りは素晴らしいですね』と返答しています」
フォスター氏とポールはリーグでも有名な“犬猿の仲”として知られており、コート上では幾度となく口論を繰り広げてきた。両者の関係性についてはNBAのアダム・シルバーコミッショナーも触れており、「2人がどんな不仲であろうと構いません。友人になる必要はないですが、それでも仕事はきっちりとやらなければなりません」と、プロフェッショナルであるよう釘を刺した。
スプーナー氏いわく、どの時代にも“みんなが嫌う審判”がいるのだという。その一例として、バスケットボールの殿堂入りを果たしている史上最も偉大なNBAレフェリーのアール・ストローム氏のほか、ジェイク・オドネル氏、ジョーイ・クロフォード氏などの名前を挙げており、スプーナー氏はフォスター氏を彼らに匹敵する存在として擁護した。
「彼らは大きな試合を担当しています。スコットも同じです。大きな試合がある時、リーグが誰かに試合を管理してほしいと思った時、スコットがそれを受け持つのです。なぜなら、彼は非常に優れたレフェリーだからです」
ポールのフォスター氏嫌いは有名だが、意外にもドレイモンド・グリーン(ウォリアーズ)は真逆の意見を持つ。グリーンも審判と度々揉める悪名高いプレーヤーだが、ポールをゲストに招いた『Draymond Green Show』のエピソードでフォスターが好きな審判である理由を説明した。
「俺はスコットが大好きだ。スコットには多少何かを言えるが、彼は解釈してくれる。これは俺が判定のラインを決めているということではない。彼は『違う。ここがラインだ。ドレイモンド、これを越えたらテクニカルファウルを取るぞ』のように言ってくれるんだ」
ポールは過去に新人女性審判に苦言を呈して審判組合からお叱りを受けるなど、審判への悪態で何度も罰金を課せられている。勝負へ対する執着心と類稀なバスケットIQの高さは誰もが認めているからこそ、優勝に必要なのは審判たちから愛されることなのかもしれない。
文=Meiji
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