2018.05.27

「どこまで動けるか不安だった」田中大貴、ほぼ“ぶっつけ本番”のファイナルで本領発揮

準決勝の負傷により、ファイナルは「やってみないとわからないという状態」だったという [写真]=山口剛生
2000年より、バスケットボール専門で取材活動中

 Bリーグの2017-18シーズン総決算、「B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2017-18」ファイナルはアルバルク東京が相手のお株を奪う堅守速攻で、85-60という意外な大差で千葉ジェッツを下し、栄えある2代目王者の座についた。シーズンをとおして、特にオフェンスの起点として大きな役割を担ってきた田中大貴は、この試合も15得点5アシストと本領を発揮。試合後の表彰式ではファイナルのMVPにも選ばれた。

 田中は、シーホース三河と対戦したセミファイナル第2戦で左脚のハムストリングが肉離れを起こし、その後のチーム練習にはほとんど参加していなかったという。ファイナル前日になってようやくチーム練習に加わり、「どこまで動けるのか、どれくらいの強度で戦えるのかすごく不安だった。正直、やってみないとわからないという状態でした」(田中)という、ほぼ“ぶっつけ本番”だったのだ。

 そんな中でも傍目には違和感なくプレーした田中に対し、ルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチも「オフェンスの中心選手としてメンタル的にもフィジカル的にもしっかりと準備してくれて、チームを引っ張る姿が目立った」と称賛を惜しまなかった。

富樫とマッチアップする場面も [写真]=山口剛生

 それだけの働きを見せたにもかかわらず、ファイナルMVPの発表で自らの名前が読みあげられたその時、田中はかすかに笑みを浮かべた程度で、大きく喜ぶことはなかった。普段から派手なアクションを見せることもなく、クールな印象のある田中。今回に関しては心中複雑な思いもあったようだが、何よりもまず最良の結果を生みだせたことに、チームの中軸として満足している様子だった。

「うれしくないと言ったら語弊があるかもしれないですが、アレックス(カーク)がMVPになる活躍をしたと思ったので、申し訳ないなと思いながら……。でも、チームの勝利が自分の求めていたもので、自分がアルバルクに入ってずっと優勝していなかったので、優勝したことだけがうれしいです」

「優勝したことだけがうれしい」と話した田中 [写真]=山口剛生

 最後に、今季の振り返りを求めた際の田中のコメントを紹介しておきたい。東地区2位、リーグ全体4位から栄冠を勝ち取ったA東京は、この田中の言葉にすべてが集約されている。

「他のチームが2、3年あるいは4、5年同じメンバーでやっているのに対して、我々はコーチが代わり、新しい選手も5、6人入った。他のチームにアドバンテージがある状況でした。それでもどのチームよりも激しい練習をしてきて、徹底して準備をしてきた。それがこういう結果になって本当にいいシーズンでした」

文=吉川哲彦

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