2022.09.05
Bリーグ王者を決める戦い「B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2021-22」が13日に幕を開ける。熱を帯びたレギュラーシーズン以上に激しい戦いが予想される中、バスケットボールキングでは歴代のチャンピオンシップMVPへのインタビューを実施。2017-18シーズンのMVPに輝いた田中大貴(アルバルク東京)に話を聞いた。
取材・文=峯嵜俊太郎
ーー何人かのベテラン選手が移籍し、小島元基選手や安藤誓哉選手、馬場雄大選手と若手のメンバーも増えたシーズンでした。チームをけん引する責任感もより大きくなっていったかと思います。
田中 責任感はもちろん持っていました。いつまでも若手のような立場でいるのはどうかとも思っていましたし、当時一緒に戦っていたベテランの選手たちがいなくなったこともあって、その思いは強くなっていきました。
ーーそして東地区2位の立場で迎えたCSでは、クォーターファイナルの京都ハンナリーズ戦、セミファイナルのシーホース三河戦をともに2連勝で突破。しかしながらもいずれも接戦で、特に三河戦はどちらもオーバータイムにもつれ込んだ試合でした。
田中 京都との試合もそうですけど、タフな試合ばかりだったという印象です。その中でもやはりアウェーの三河戦は、自分たちとしても大きな山場だと思っていました。その試合をうまく勝ったことで、チームが勢いに乗ったところはあったと思います。
ーー田中選手個人としては三河との第2戦で左足を痛めてしまい、練習ができない中でファイナルを迎えることとなりました。
田中 試合中に足を滑らせて痛めました。プレー中はあまり気にならなかったんですけど、終わって新幹線で帰る時にはだんだん痛みが出てきて、正直これ大丈夫なのかなという不安があったのはすごく覚えています。翌日の検査で軽い肉離れと診断され、そこからすぐにチームが動いてくれて、いわゆる酸素カプセルみたいものに入ったりもしました。とはいえ、ファイナルまでは本当にほぼ練習できませんでした。
ーーご自身にとってプロ初タイトルがかかる状況で、ほぼ練習できずに試合を迎えることになったと。
田中 「このタイミングか」という思いはありました。ただ、シーズン最後の1試合でしたし、その後にゆっくりと休めばいいとも思っていたので、本当にすべてを出し尽くすつもりで臨みました。
ーーそうして迎えた2017-18シーズンのファイナル。会場の横浜アリーナには12000人を超えるファン・ブースターが集結しました。
田中 もともと緊張するタイプなので、前日練習で人が入る前の会場の雰囲気を見て、当時はすごく緊張していました。ただ、試合が始まってしまえば吹っ切れて、「もう、やるだけだ」という気持ちになりました。
ーー負傷明けという状況でしたが、試合が始まれば鋭いドライブからチーム初得点をマークされています。
田中 1週間しっかり休んでから前日の練習に少し参加して、思っていたより大丈夫そうだという感覚はありました。「これならいける」と。そこで気持ちの余裕ができたのは大きくて、試合が始まればケガのことは正直何も気にならなかったです。
ーー試合はA東京がじりじりと千葉を引き離していくような展開となりました。有利に試合を運べたポイントはどこにあるのでしょうか?
田中 やはり、自分たちが今までやってきたことを大舞台でどれだけ出せるかというところがCSやファイナルで勝つカギになると思います。もちろん普段とは違う状況ですし、気持ちが高揚していつもはやれることがやれなかったり、逆にいつもはできないビッグプレーが出たりすることもあると思うんですけど、僕たちがずっと追求してきたのはそういうところではない。追求してきたのは、自分たちが本当にやってきたことを、どれだけコントロールして出せるかというところ。普段からの練習やレギュラーシーズンの試合で、厳しくそこを求められてきたからこそ、ファイナルで自分たちのパフォーマンスが出せたのだと思います。試合を終えた時、改めてルカHCのそうした“徹底具合”の凄まじさを感じました。
ーーその後、A東京は翌シーズンもファイナルに進出し、リーグ2連覇を果たします。その経験を踏まえて、大舞台で普段通りのプレーを出すためにはどのようなことが大事だと思いますか?
田中 先ほど言った通り、そうした舞台では誰もが「ああしなければいけない」「こうしなければいけない」といつもとは違うことをいろいろ考えると思います。けれどそうではなくて、今まで自分たちが積み上げてきたことが、最後の舞台にも出ると思うので、いかにそれまでの過程をちゃんと大事にしてきたかが重要だと思います。それを信じて、あとは自分の持っている力を出すだけです。もちろん調子の良し悪しはあると思いますが、そこは各々のメンタル的な強さでカバーできます。今思うと、当時は(安藤)誓哉や(馬場)雄大といった気持ちが強い、大舞台に強い選手がそろっていたと思います。
ーーそれでは最後に、今シーズンのCSにかける意気込みをお願いします。
田中 ここからは優勝したいという思いが強い方がどんどん上に行く舞台ですし、やはりタフなチームが生き残っていくと思います。自分たちは日頃からそういうトレーニングをしていますし、生き残るだけの力はあると思うので、チーム全員で強い気持ちを持って臨みたいです。
ーー優勝当時のチームには強い気持ちを持った選手がそろっていたとおっしゃいましたが、今シーズンのチームについてはいかがですか?
田中 自分たちもチームとして昨シーズンの結果に対する悔しさがありますし、新しく入ったライアン(ロシター)も昨年のファイナルで負けた悔しさを忘れていないはずです。そうしたチームの思い、個人としての思いをすべて結集して、CSの戦いにぶつけられればいい戦いができるのではないかと思っています。
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