2020.04.12
第4クォーター残り1分21秒で82-72の10点リード。B1リーグ第7節第1戦で、ライジングゼファー福岡がB1初勝利を手にするのは目前だった。だが、そこからまさかの11失点。83-83で40分間を終えると、5分間のオーバータイムでは力尽き、3点差で敗れた。
この日の福岡は第1クォーター終了時点で11点ビハインドと出だしでつまずくも、次の10分間では息を吹き返して京都ハンナリーズと互角に渡り合った。その原動力となったのは、ベテランポイントガードの山下泰弘だ。第1クォーター残り4分4秒からコートに立つと、そのまま出ずっぱりの状況で約32分間プレー。攻撃のリズムを生みだし両チーム最多となる11アシストの活躍を見せ、チームを初勝利目前まで導いた。しかし、前述した最終クォーター残り1分21秒に交代を告げられた。奇しくもチームはそれと同時に崩れ、延長戦に入っても山下がコートに戻ってくることはなかった。
「後半の勝負所、10点リードしたところで勝ち急いだというか、みんな油断をしてしまって最後まくられてしまった。本当にもったいない試合になってしまった」
試合を終えた山下はそう振り返って肩を落とした。結果論ではあるが、山下が再びコートに戻っていれば勝てたのではないか――。
しかし、本人の口からは「最後、自分のコンディションの部分で体がプレーできない状態になってしまった」という言葉が返ってきた。これは試合を指揮したボブ・ナッシュアソシエイトコーチも、同じような言葉を口にしている。山下は京都と対戦した第5節、接触プレーで額にケガを負い、その影響で体調も崩して前節を欠場。3試合ぶりの出場は「コンディションの調整がうまくできなかった」という。つまりは交代した時点で限界だったのである。
最後の局面をベンチで見守るしかできなかった32歳は、「津山(尚大)選手や石谷(聡)選手が『任してくれ』と言っていたので、本人たちに託した」。しかし、あと一歩及ばず。また、「1クォーターの途中から自分がずっとコートにいて、2人のプレータイムが少なくなってしまった。そのせいもあり最後の場面でいきなり(試合に)出させてしまって、ちょっと申し訳ないという気持ちはあります」と自分を責めた。
それでも、チームの主将は「途中から自分たちのペースで試合を進められたのはよかった」、「コーチも代わって方向性が1つになりました」とも話し、「1日でも早く初勝利を挙げることが目標。明日しっかり切り替えてがんばっていきたい」と前を向く。
福岡はこれで開幕から11連敗。以前厳しい状況が続いているが、前節から2試合は名古屋ダイヤモンドドルフィンズと京都相手に3点差の好ゲームを演じており、徐々に勝利の匂いを漂わせている。3日に行われる第2戦、「慣れ親しんだ福岡市民体育館」で待望の白星を獲得するには、再び山下のゲームメークがカギとなるだろう。
文=小沼克年
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