2019.04.27
「互いにディフェンスの激しさをウリにしているチーム。他のチームとやってもそうなのでしょうけど、うちとやる時はその激しさが増している気がします。本当に激しさと激しさのぶつかり合いでした」
アルバルク東京の田中大貴は、B1リーグ第31節の秋田ノーザンハピネッツとの対戦をこのように振り返った。A東京のルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチの言葉を借りれば、「秋田は決して諦めないチーム。戦う姿勢が素晴らしいし、リスペクトもしている」という難敵。そのチームに2連勝を果たして、東地区の2位も視野に入ってきた。
田中としても2月に代表戦に決着をつけ、リーグとも“掛け持ち”は今シーズンは終了した。それもあり、チーム練習に時間を割くことができるようになり、個人としてのコンディションも上がってきているのだろう。秋田との激戦の中でも本来の動きを折り戻しつつあると思っていた。
しかし、本人は吹っ切れない部分を有してのシーズンであるという。「シュートタッチはずっと良くないし、これまでなら自分の中で『いい感じだな』とわかることもあったのに、今シーズンはそれが少ないのです」と明かしてくれた。確かにシーズンの序盤に故障やケガで全体練習に入れない時もあった。それもあり、うまく流れに乗れてないとも言えるんだろう。これまで経験したことのない感覚の中でのシーズンを過ごしている。
「それをどこかで断ち切って上げていかなければいけないのでしょうが、自分の力のなさというか、いろいろと考えてしまうシーズンになっています。しかし、その状態の中でもチームの約束事であるディフェンスの強度を高いレベルで保つことはやり切りたい。うちは誰かが大爆発をしてその得点で勝つようなチームではなく、それぞれがしっかりと役割を果たした時大きな力を発揮します」と、自らに確認するように言葉をつないだ。
しかし、田中は決してネガティブな気持ちを引きずっているわけではない。「目の前のことを一つひとつクリアするだけです」と、その先をしっかりと見据えているように思えた。
秋田戦が行われた最中、2020年東京オリンピックの開催枠が日本に付与されるというニュースが飛び込んできた。田中本人は「朝起きてSNSや多くの人たちからのメッセージで知った」という。「決定の時期もズレていたので、早く決まればいいなと思っていました。アスリートして夢の舞台であるオリンピックに出られチャンスを得られたのはすごくうれしく思います」と、正直な気持ちを語ってくれた。
しかし、それで浮かれないのが田中の持ち味だ。「(東京オリンピックが開幕する)2020年8月はすぐにやってくると思います。その前に目のことを一つひとつクリアしなければいけない。今であればリーグであり、その先には2連覇のかかったチャンピオンシップが待っている。さらにその後のワールドカップの本戦だってありますが、そうしていれば、すぐにやってくるでしょう」。だからこそ足元をしっかりと固めて、全力で準備していく構えだ。
「ただアスリートとして、オリンピックに出られるチャンスを得たのはすごく幸せなことだと思いますし、メンバーに選ばれて試合に出られればどれだけ光栄なことであるかを認識しているつもりです。やっと一つの壁を越えてオリンピックに出られたのですから、絶対に次の世代、今の小さい子につながると思うので、その一歩を記す自分たちがしっかりといいプレーを見せなければいけないと思います。責任があります」と、いかにも田中らしいコメントでこの取材を締めくくった。
男子代表は44年ぶりに出場という大仕事を達成してくれたが、本大会での内容が将来につながっていく。田中が言うように“しっかりとした一歩を記す”責任があることを忘れてはいけない。
文=入江美紀雄
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