2026.01.13
「あー、久々にこんなに悔しい……」
富士通レッドウェーブの前澤澪は、しばしの沈黙から声を絞り出した。
だが、すぐにまた言葉は止まり、再び涙があふれ出す。
「第92回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会」ファイナルラウンド。1月9日の準決勝に臨んだ富士通は、デンソーアイリスの前に敗れた。
試合は、両者譲らない展開の中、第1クォーター中盤には富士通が流れを引き寄せる。そのキッカケを作ったのは前澤で、自らの得点やアシストで攻撃の中心を担うと、チームもそのまま第1クォーターを19-15とリードした。
しかし第2クォーター、一時は9点のリードを奪ったものの、徐々にオフェンスが停滞してしまう。逆にデンソーの髙田真希、赤穂ひまわりらに得点を許し、前半は4点ビハインドで終えた。
後半、巻き返しを図りたい富士通だったが、重い展開は変わらず。放つシュートも枠を捉えず、アウトサイドとインサイドとがバランス良く得点を挙げるデンソーとの差は広がっていくばかりとなる。そのまま試合は進み、最後は60-81で敗戦。皇后杯連覇の夢は準決勝でついえた。
「3クォーター出だしで相手にリズムをつかまれたときにディフェンスで我慢できなかったところがあり、早めにタイムアウトを取ったけれど流れが変わらずオフェンスもバタバタしてしてしまいました」
富士通の日下光ヘッドコーチはこのように試合を振り返った。「我慢」とは両指揮官や選手たちから試合後に多く聞かれた言葉で、「苦しい時間帯もあったけれど、コートに立った全員が集中して我慢して戦えたことが最後の点数につながったと思います」と、デンソーの笠置晴菜も記者会見の場で語っている。
こうした試合の中での苦しい場面でどう我慢し、乗り切るか。「みんなの共通認識として流れが来ないときはディフェンスとリバウンドを我慢してやろうという話はずっとしているので、そこの認識はあるのですが、そこをやり切れないというのが今シーズンの課題かなと思います」と、前澤は言う。さらに「あとは自分たちのシュート。決め切れるシュートを決め切れないことも結構多いのですが、それが今日(準決勝)は顕著に出てしまったなと感じます」とも語った。
だからこそ、1月24日から再開するWリーグに向けては、「ディフェンスの強度が今のままでは全然足りないと思います。もっともっと強化していかないと今回のような負け方をしてしまうし、(シュートの)ストロングフィニッシュも徹底的にやっていきたいです。今日もオフェンスが少し重たくなり、ターンオーバーも多かった。攻め切れていない感じがあったので、そこも詰めていかないといけないです」と、前澤は今後の課題を挙げた。
今大会、前澤自身は、初戦の白鴎大学戦では15分弱の出場で13得点。続く激戦となったトヨタ紡織戦では10得点と好調を維持してきた。デンソー戦でも先に挙げたようにチームに勢いをもたらすプレーを披露している。
しかし、「試合感はだいぶつかめてきたのですが、やっぱりこういう大事な試合のときに力を発揮できないというのは全然…」と、キッパリ。そして「なんだろう…、すごく悔しいですね。まだまだ…」と発すると、冒頭で触れたように、しばし沈黙が続いた。
前澤は今シーズン、4シーズンぶりに現役復帰を果たした。復帰当初は周囲も本人もパフォーマンスがどこまで戻るのか未知数ではあったが、試合を重ねるごとに動きにキレが戻り、町田瑠唯をはじめとする仲間との合わせのプレーも随所に見せ、ここまでチームの主軸を担ってきた。その高いパフォーマンスは4シーズンぶりに復帰した選手とは思えないほどだ。
それでも、準決勝敗退に「ヘッドコーチも信頼して出してくださってるので、そこに応えたかったんですけど…」と、前澤。
不甲斐なさと悔しさ。こんな感情になったのも久しぶりのことだろう。元来、負けず嫌いの性格。そしてストイックなまでにバスケットに向き合う選手でもある。
「こういう試合の中でしっかりシュート決め切ることと、今日は前半に出てすぐ、ディフェンスのミス、自分のところで崩されてることが多かったので、そこも強化していかなくてはいけないと思っています。あと3ポイントシュート。鬼のように入らないので(笑) やることいっぱいですよ、もう寝てられないや」
涙が引いた前澤は、最後は少し笑いを誘いながらも、その言葉に強い意志をのぞかせた。
目指すはWリーグ3連覇。復帰のシーズンを最高の形で締めくくるためにも、この悔しさをバネに、前澤はまた努力を重ねていく。
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