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「早稲田大は中国のファンを完全に魅了した」…グレッグ・ストルト氏が語るAUBL26の熱狂と、11月開幕“シーズン制”への確信

2000年代に日本でプレーしていたストルト氏[写真]=兼子愼一郎
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 2026年8月、中国・杭州。アジアのトップ大学が集った「AUBL26」は、延べ3万人以上の観客を動員し、ライブ配信視聴数は1億3900万回を記録するなど、アジアの大学バスケットボール界に新たな歴史を刻んだ。かつて新潟アルビレックスBBや松下電気で活躍し、現在はAUBL(アジア大学バスケットボールリーグ)のシニアバイスプレジデントであるグレッグ・ストルト氏を大会終了後に直撃すると、彼は「期待をはるかに超えた」と興奮気味に語り始めた。

インタビュー・文=峯嵜俊太郎(バスケットボールキング編集部)
写真=兼子愼一郎

ストルト氏の大会前インタビューはこちらから

AUBL(アジア大学バスケットボールリーグ)とは?

アジア大学スポーツ連盟公認のAUBL(アジア大学バスケットボールリーグ)は、アジア屈指の名門大学が参加する大学バスケットボールの国際リーグ。2025年8月には中華圏、日本、韓国、モンゴルから12のチームが参加するシングルトーナメントを中国・杭州で初開催。2026年8月にフィリピン、オーストラリアのチームを加えた第2回大会を開催後、11月からはホーム&アウェー方式のフルシーズンに移行する。

■フィリピンとオーストラリアがもたらした「新たなバリュー」

新たに参戦したフィリピン大学は予選ラウンドで白鷗大学を撃破[写真]=AUBL

――AUBL第2回大会(AUBL26)を終えて、まずは率直な手応えを教えてください。

グレッグ 大成功だったと思います。正直に言って、期待をはるかに超えるものでした。とりわけ上海交通大学の初優勝はドラマチックでしたね。彼らはこれまで中国国内のどの大会でもチャンピオンになった経験がなく、北京大学や清華大学といった強豪に勝利したことすら一度もありませんでした。それがこのAUBL26という舞台でそうした名門校に肩を並べ、一気に頂点まで駆け上がったことは、彼らにとってまさに歴史的な快挙です。
 さらに、OBであるヤオ・ミン氏(元NBAヒューストン・ロケッツ)が会場で見守る中での戴冠劇というストーリー性も手伝い、週末や夜間の試合はアリーナがほぼ満員になりました。1年前の第1回大会と比べても一段と素晴らしい大会になったと確信していますし、11月から始まるホーム&アウェイのシーズンに向けて、最高潮のモメンタム(勢い)を生み出すことができました。

――今大会からフィリピンとオーストラリアの大学が初参戦しました。彼らの存在は大会にどのような変化をもたらしましたか?

グレッグ 非常に大きな価値をもたらしてくれました。まずフィリピンは、アジアで最も大学バスケが成熟している市場です。フィリピン大学が見せたスピード、スキル、そして凄まじい熱量は大会のレベルを一段引き上げました。AUBLの面白さは、地域ごとに国内で「普通」とされているスタイルが、国をまたぐと全く違って見えることです。フィリピン大学はガード陣が非常にタフで速いだけでなく、意外にもインサイドで存在感のあるビッグマンを擁しており、非常に興味深いアクセントになりました。

――オーストラリアのシドニー大学についてはどう見ていますか?

グレッグ オーストラリアは毎年多くのNBA選手を輩出し、300人以上の学生がアメリカのNCAAでプレーするバスケ大国です。シドニー大学には中国や母国でプロを指揮した素晴らしいコーチがおり、非常に洗練されたバスケットを展開しました。彼らがアジアのトップチームと真剣勝負を繰り広げることは、双方のスタイルを刺激し合う素晴らしい機会となりました。彼らの参戦によって、AUBLの「バリュー」は確実に一段上のフェーズへ進んだと言えます。

■白鷗大学の敗退と、早稲田大学が起こした「サプライズ」

前回大会3位の白鷗大学は予選ラウンドで涙を飲んだ[写真]=AUBL

――日本勢についても伺います。前回3位の白鷗大学が予選ラウンドで敗退するという波乱もありました。

グレッグ 白鷗大学は非常にハイクラスなチームですが、今回は運が悪かったと言わざるを得ません。韓国の強豪・高麗大学、そしてフィリピン大学と同じ「死のグループ」に入ってしまった。加えて主要選手のケガも重なり、ベストなロスターを組めなかったことも影響しました。しかし、もし別のグループであれば、間違いなく今回も大会のトップ5には入る実力がありました。彼らの敗退は、それだけ今大会全体のレベルが底上げされたという証拠でもあります。

――一方で、初出場の早稲田大学が3位入賞を果たしました。彼らの戦いぶりはどう映りましたか?

グレッグ 早稲田は今大会最大のサプライズであり、中国のファンを完全に「魅了」しました。彼らのエキサイティングなプレースタイル、スピード、スキル、そして何より驚かされたのはスタミナ、コンディショニングの素晴らしさです。大会が終わって1、2週間経っても、中国のSNS『WeChat』には早稲田のハイライト動画が流れ続けていました。早稲田のグッズはあまりの人気で売り切れてしまったと聞いています。

――グレッグさんから見て、早稲田大のスタイルの魅力はどこにありますか?

グレッグ 25年前に私が日本でプレーしていた頃のスタイルを思い出しました。ガード陣はしつこくタフで、シューターたちはノーマークになれば決して外さない。そして全員でリバウンドに飛び込む。身長の低さを「ハート」と「全員の意識」で補い、自分たちの役割を完璧に遂行する彼らのユニットとしての完成度は、杭州の観客に強烈なインパクトを残しました。

■松本秦の「IQ」と、下山瑛二という「エンジン」

大会ベスト5に選ばれた早稲田大学の松本(写真左)と全試合で得点とアシストのダブルダブルを記録した下山(写真右)[写真]=AUBL

――大会ベスト5に選出された早稲田大の松本秦選手については、どのような評価をされていますか?

グレッグ 彼はとにかく「得点できる」選手です。しかし、多くの人がシュート力に目を奪われがちですが、彼にはそれ以上に素晴らしい「ゲームへの嗅覚」があります。スペーシングの取り方、タイミング、カッティング。これらはホワイトボードで教えられるものではなく、彼が培ってきた経験と賢さによるものです。非常にスマートな、偉大なプレーヤーの素養を持っています。

――そして、グレッグさんが「どうしても言及したい選手がいる」と仰っていたのが……。

グレッグ そうです、ポイントガードの下山瑛二選手です。私は、ポイントガードこそがバスケットボールで最も難しいポジションだと思っています。下山選手はまさに早稲田を動かす「エンジン」でした。168センチと小柄ですが、それを巨大なハートとエネルギーで補っている。彼がコートにいることで、周りの全選手がより良く、より上手くなる。もし私がBリーグのチームで来年のドラフトに関わっていたら、間違いなく彼を一番に指名したいと思うほど、格別な選手でした。

■11月、いよいよ「ホーム&アウェー」のフルシーズンへ

大きな盛り上がりを見せた第2回大会。AUBLはさらなる進化を目指す[写真]=AUBL

――11月からは、当初のビジョンであったホーム&アウェー方式のフルシーズンがいよいよ始まります。具体的にどのような変化を期待していますか?

グレッグ 短期トーナメントとの最大の違いは「計画と準備」の時間があることです。今回のトーナメントはいわばFIBAの国際大会形式で、タイトな日程の中でコンディションを維持することに追われます。しかし、11月から翌年4月までの長期戦になれば、試合での経験を学び、消化し、対策を練って次の試合に臨むという学習サイクルが生まれます。これは選手の成長にとって極めて重要です。また、日本にとっては「インカレ」直前にアジアのハイレベルな真剣勝負を経験できることは、チームにとって計り知れないメリットになるはずです。これを実現するための、各国の大学とのスケジュール調整は本当に大変ですけどね(笑)。

――国をまたぐ長期リーグとなると、移動や学業との両立も課題になります。

グレッグ それこそが選手たちにとって最高の教育機会になります。自分の「バブル(居心地の良い日常)」を抜け出し、海外へ行き、新しい文化に触れる。今回、フィリピン大学の選手が「他国の選手とランドリールームで交流するのが最高だ。言葉は通じなくても関係を築けるんだ」と話してくれましたが、そんなコート外の絆こそが彼らの人生の財産になります。私たちはスタッフを常時帯同させ、宿泊や食事も含め、学生たちが最高のコンディションで戦えるようプロレベルの環境を準備します。

コート内外で結ぶ絆も選手たちの財産となる[写真]=AUBL

――5年後、10年後のAUBLをどのような存在にしたいですか?

グレッグ 私が目指しているのは、AUBLを「NBAサマーリーグ」のような存在にすることです。世界中のチーム、スカウト、エージェントが一箇所に集まり、新たな才能を見出すメッカ。そこにユースクリニックやコーチングクリニックが加わり、アジアだけでなく世界中のバスケットボールコミュニティにとって欠かせない「ピース」に育て上げたいと思っています。

――最後に、11月から日本でアジアの強豪を迎え撃つホームゲームを楽しみにしているファンへメッセージをお願いします。

グレッグ 私がアメリカのNCAAで体験したような、学生と卒業生、そして地域が一体となって熱狂する環境を日本でも作りたいと考えています。日本の大学チームがホームゲームを行い、そこで韓国や中国のチームを迎え撃つ。地元のコミュニティや学生、ファンが一体となって、情熱と華やかさを持って応援する。そんな素晴らしいバスケットボールの場にぜひ参加してほしいです。確かに技術的にはNBAやBリーグが最高峰かもしれませんが、AUBLも非常に面白く、手に汗握るゲームになることは間違いありません。ぜひ大学バスケのレベルを、生で見て感じてほしいです。

[写真]=兼子愼一郎