2026.11.05
残る出場枠は、あと1つ。ウインターカップ2026 福岡県予選の決勝リーグ、八女学院高校と東福岡高校の3位決定戦を前に、会場はざわついていた。独特の空気に包まれるなか、全国への道を切り拓いたのは八女学院の3年生ガード2人だった。
緊張からか、プレーが硬い八女学院は、試合開始から5分近く得点を奪えずにいた。9点のリードを許し、タイムアウトを取った直後、大下真優が「なんとかしないといけない」と動き出す。得意のドライブからゴール下へと切り込んで、相手のファウルを誘う。フリースローの1本目、ボールはリングの縁を何度かたたき、そのままゆっくりとネットに吸い込まれていった。苦笑いしつつ、ほっと胸をなでおろした大下は2本目をきれいに沈め、攻撃のスイッチを入れた。
大下の果敢なドライブで「いつもどおりのバスケ」を取り戻すと、第2クォーターには山城大世の3ポイントシュートが決まり始める。このクォーターだけで3本を沈め、八女学院は一気に逆転した。
ウォーミングアップでは「感触が良くなかった」と山城は言うが、試合に入ってから「1本目は外したけど、2本目でしっかり決め切れた。そこで感覚をつかめた」と流れに乗り、「もう打ったら入ると思った」と迷いなくリングを狙い続けた。
後半に入ると、山城の3ポイントシュートを警戒する東福岡の隙を突き、大下がドライブで仕掛ける。外の山城と中の大下。2人の連携で得点を重ねた八女学院が83-71で東福岡を下し、2022年以来2度目のウインターカップ出場を決めた。
試合後、山城はとびっきりの笑顔で「めちゃくちゃうれしいです! ほっとしています」と声を弾ませた。その隣で、大下は涙を流し、鼻を真っ赤にしていた。そんな相棒の姿を見た山城は、「今日、勝っても泣くんじゃね?って話していたんですよ。『絶対泣かん!』って言っていたのに、一番泣いてます」と声を出して笑う。大下は「泣かないって言ったけど、3年間本当に勝てない試合ばっかりで、ここに来て勝てたのがやっぱりうれしかった」と、込み上げる思いを抑え切れなかった。

本大会出場を決めた喜びを爆発させた [写真]=佐々木啓次
今年は福岡大学附属大濠高校がインターハイで優勝し、6月の九州ブロック大会も制したため、福岡県にはウインターカップの出場権が3枠与えられていた。枠が増えると知った山城は、「めちゃくちゃうれしくて、絶対その枠に入ってやろうと思った」という。
2人とも、出場枠に関係なく県予選まで引退せずに続けるつもりだったが、全国行きのチャンスがめぐってきたことでモチベーションは一層高まった。全体練習が終わってから、大下は「シュートを磨くために3ポイントを100本、そのあとフリースローを100本」、山城は「ゲームメイクしながら点も取れるガードになるためにシューティングを100本」と、それぞれ打ち込んできた。
そうして手にした全国の舞台。山城が「小学生の頃からずっと行きたかったので、夢が一つかなった。気持ちをもう一回引き締めてがんばっていきたい」と言えば、大下は「先輩が達成できなかった1回戦突破を絶対にやり切りたい」と早くも目標を掲げた。大下がさらに続ける。「ドライブは大濠さんや(福岡)第一さんにも通用する場面があったし、(両校と戦って)課題も得ることができた。そこをしっかり直して、全国でも通用するんだぞっていうところを見せたい」
福岡の高校にとって、福大大濠と福岡第一の牙城を崩すのは、正直なところ難しい。ただ裏を返せば、県予選の段階で全国基準をすでに体感しているということでもある。八女学院は決勝リーグで福大大濠に42-115、福岡第一に45-117で敗れた。それでも彼らは下を向くことなく、通用した部分と精度を上げるべき部分がクリアになったと、ポジティブに捉えていた。2強との対戦で得た手応えと課題は、ウインターカップを戦ううえで必ず生きてくる。大下は「この経験はデカいです」と力強くうなずいた。
3位決定戦の2日前、勝つ自信はあるかと聞くと、「あります!」と息ぴったりに声をそろえた。その言葉どおり、2人は全国への切符をつかみ取った。ウインターカップの舞台でも、息の合ったプレーを見せてくれるはずだ。

ウインターカップでの活躍を期す八女学院 [写真]=佐々木啓次
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