2020.05.04
2シーズン連続のBリーグチャンピオンに輝き、3連覇を狙うアルバルク東京。今シーズンはシーズン前の「FIBAアジアチャンピオンズカップ2019」で頂点に輝き、アジアナンバーワンクラブの称号を手にしてシーズン開幕を迎えた。しかし、今までのシーズンとは全く違うスタートとなったことは事実である。主力であった馬場雄大のダラス・マーベリックスへの移籍をスタートに、バックアップメンバーの期限付き移籍、加えて主力選手のケガなど開幕2カ月にしてドラマの多すぎるチームの1つとなった。
それでも現在12勝4敗と東地区をけん引する位置でシーズンの4分の1を終えた。台風19号の影響により延期となったサンロッカーズ渋谷との今シーズン初の“東京ダービー”は壮絶な試合となった。結果的には1勝1敗の痛み分けに終わったが、両チームのインテンシティの高いゲーム内容にアリーナにいたファン・ブースターだけではなく、映像でゲームを見た多くの人々がすごかったという感想をSNS上で残した。
ここまでのシーズンの中で印象的なのはベテランの存在。特に今シーズンもキャプテンを務める正中岳城はここまで全16試合に出場し、平均出場時間16.2分とBリーグが始まって4シーズンで一番多く長くコートに立っている。11月25日の試合では相手のプレッシャーに苦しんだ格好となったが、そのゲームをこう振り返る。
「このシリーズはタフになるのが分かっている中で、渋谷さんの現状の強さの理由を見せつけられました。自分たちも用意していたけど、やり合いながら様々なことを感じた中で、シーズンをとおして成長していくための糧にこの試合をしていかないといけません。負けて学ぶというのはカッコ悪いけど、しっかりと受け止めて、再度意欲と気概を見せて明日から練習や試合をしっかりやっていきたいです。ボール運びに関しては、いい入りをさせないとプレッシャーを掛けてくるけど、自分たちが過去のシーズンと同じような試合をコントロールする中で理解していて、相手の意図する所に対して身構えずに、もっとスムーズにプレーしないといけません。これは力技とかではなく、正しいプレーや動きをチームの中で見つけて上手く相手の裏を突くなど、スマートにプレーするのも必要かと思いますね」
この一戦でシーズン4分の1が終了したことを正中に伝えると、「そうでしたか、その感覚が分かっていなかったので……」と少し驚きの表情を見せた。なぜそのような表情を見せたのか、理由がしっかりと裏にはあった。そして、彼が続けた言葉にはチームをステップアップさせないといけないという意図を感じられる。
「まだまだ始まったばかりというコメントを毎週ヒーローインタビューなどでコーチや選手が言っていたので、もうシーズンが4分の1終了とは……。そうなると始まったばかりではなく、ある程度今シーズンの自分たちのスタイルや戦い方の手応えなどを自分たちで感じながら、ファンの皆さんにもそれを理解してもらう時期に来ています。始まったばかりですという未熟なチームではなく、次のステージに向けて一つひとつ成長した姿を見せていかないといけません。そして、最初の頃よりは良くなっているんだというのもファンの皆さんに見つけてもらえるような戦いをしないといけない時期ですよね」
ここまでの16試合、過去のシーズンとは違って厳しい船出かと思われた。それでも蓋を開けてみたら東地区をけん引する状況となっており、チームとしての継続性を高めて結果を残している。
「コーチの頭の中ではマネジメントするのは難しいのかなと感じていたけど、自分たち選手に対しては厳しいとかネガティブな言葉は無く、事実を淡々と伝えてくれました。様々な状況下で『だからできない』では無くて『どうやったらできるか』ということを考えていくのが我々のチームだし、今更しんどいと思っても誰も助けてきてくれません。パーフェクトな状態かつベストなメンバーで戦えるシーズンはいいですけど、それは無くて……。ミスの無いゲームがないことと同じですね。自分たちも考えて耐えて、色々な学びを経て、大きくならないといけないので。色々なことが起きる中で次のステージに進んでいこうとしたチームが最後にリーグでベストなチームになれると思います。そして、ただ耐えるだけでは無くて自分たちのバスケットを突き詰めていかないといけないです。東地区でしっかり戦えば、Bリーグでも良い結果につながると考えています」
その中でも正中自身は、プレー面でチームに貢献し大きな力になっている。その部分に関して聞くと、責任とチャンレンジという言葉を使ってコートに立てる喜びを表現した。
「出場時間だけでは測れなくて、自分がどういう濃度で仕事を果たせたかどうかだと思っています。当初のチーム運びとは違う格好になっているかもしれないけど、自分は出場できる機会があるのはありがたいことです。3連覇を目指すシーズンの中で自分自身が責任感を持ってプレーができる、とても幸せですね。Bリーグ1シーズン目とは違い、今は色々な役割もあってそれに応えていきたいです。自分の中ではチャレンジだし、でもここに来て責任を感じながら『まだ、やらないといけない』とがんばろうと心に決めています。もう一度、自分自身を奮い立たせてプレーヤーとして少しでも存在感を出して、チームの足しになれれば最高ですね」
まだまだやれる、そしてまだまだできる。チームのために何ができるのか、やはりアルバルク東京のBリーグ3連覇という偉業のためには正中岳城は必要不可欠だ。彼の発す言葉には重みもあり、そしてストーリーさえ感じる。勝手に“正中語録”と名付けているが、今度はどのタイミングで言葉を聞けるか。今から楽しみでしかない。
写真・文=鳴神富一
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