2021.09.29
Bリーグ開幕までいよいよ1カ月を切った。この日を待ちわびたファン・ブースターは各クラブの状況に気をもんでいることだろう。そこで今シーズンも開幕を前にバスケットボールコメンテーター井口基史氏による各クラブのレポートをお送りしたい。
文=井口基史
昨シーズン終盤、Bリーグを熱くしてくれたのは間違いなく北関東だ。Bリーグだけでなく、アジアを代表するホームタウンから、悔しい思いはしたが横浜アリーナのファイナルを黄色く染めた宇都宮ブレックス。前人未到の33連勝でB2を制した群馬クレインサンダーズ。もし彼らがかつてのレギュレーションで天皇杯に出ていたら、アップセット祭りinさいたまスーパーアリーナが開催されていたかもしれない。
そしてかつてのクラブ存続危機を乗り越え、悲願のB1昇格を果たした茨城ロボッツ。「待ってろB1!」と掲げてはいたが「待っていたのはコッチだわ!」とツッコませていただく。あとクラブ・バーガンディ(越谷ファンクラブ名称)の皆さんがOKなら、越谷アルファーズまで北関東に含めさせていただき、栃木県と姉妹州であり、かつバスケに熱い地域というリスペクトを込めて、「北関東はニッポンのインディアナ州だ!」と勝手に呼ばせていただきましょう……。
帰化選手がいないことより、ジェフとライアンがいないブレアリに慣れるには、ファンには少し時間が必要かもしれないが、楽しみなのは安齋竜三HCと佐々AC、町田ACがどんなチームに仕上げてくるかだ。
こういう状況だからこそ、彼らが燃えていることは想像しやすく、きっと言うだろう「やるべきことは変わらない」と。また比江島慎選手を長く応援するファンからすると「そうだ! 帰化枠なんかない方が良いんだ‼」と比江島選手に必然的にスコアが求められる環境は、ある意味ポジティブととらえるべきか。
ブレックスネイションとロシターの公式戦での再会は、12月29日(水)A東京vs宇都宮(@アリーナ立川立飛)だがホームに迎えるのは4月6日(水)(会場調整中)と先になる。プロなのでマネーの選択を批判はできないが、CS争いバチバチのタイミングであり、NBAだと“Welcome back”ムービーの演出があったりするが、ブレアリがどんなメンタルでこの日を迎えるのかは、ブレックスの歴史の1ページになりそうだ。
さらには全国のB2ブースターを凍りつかせた、帰化選手マイケル・パーカー選手の再契約に成功しているにもかかわらず、秋田から野本建吾選手まで補強するという、サイズアップとケガの緊急事態想定にも万全を期すクラブの姿勢をみると、あと1年早ければフランチャイズプレイヤー小渕雅(引退)をB1で見られたのではないかと、勝手に悔やんでいる。
ひょっとすると痛かったのは平岡富士貴HC(新潟へ移籍)の流出ではないか。同じカルチャーを共有してきた時間はかけがえがなく、トーマス・ウィスマンHC(東京Zから移籍)とこのオフにどれだけ時間を共有できるかが大事になりそうだ。アーリーカップの開催はないが、コロナ禍でなければ海外遠征も可能だったはずで、結局トレイとパーカーだなんて周りに言わせない、外向きにならないケミストリーがウィスマン体制で生み出せるか、ベンチの雰囲気にも注目したい。
また運営会社ごと太田市に引越ししたこともあり、ホームタウンの成熟度はクラブのチャレンジ。チーム創設10周年目を迎えるシーズンでもあり、コート上、ファイナンスだけでなく、カルチャーの部分もB1カテゴリーに染まりたい。
気になるのはコート上のこと。他チームの例えで恐縮だが、コロナ禍で途中中止の一昨シーズンに東地区1位で終了したA東京が、昨シーズンは勝率5割強(東6位)と失速したのは、正中岳城選手の早すぎる引退だったと勝手に信じている。クラブで誰より歴史を知る存在が、ケガなどコントロールできない事態や、不運の連敗の時こそ必要になると私は思い込んでいる。
このオフ茨城はクラブの歴史を知る上原和人GM(退任)、眞庭城聖選手(山形へ移籍)を失った。B1昇格を誰よりも欲しがり、チーム事情によるポジションチェンジや体を張る役を自ら引き受けてくれていただろう眞庭選手。昇格の約束にはまだ足りないと、小寺ハミルトンゲイリー(琉球へ移籍)の緊急補強に成功した上原GM。いずれもケガやコントロールできない事態、不運な連敗の時こそ仕事をしてきた存在ではなかったのか。ともに戦ったB2の仲間は茨城の背中を見ており、B2からの期待を背負っているのは茨城だろう。
過去昇格組のうち1年で降格したのは西宮、島根、福岡の3チーム。今もB1で戦い続ける昇格組は秋田と島根(2度昇格)だけ。仙台、西宮はまだB1に帰ってこられないでいる。それだけ毎年コート上や環境などさまざまな点が、B1とB2で格差が広がっているのが現実だ。今シーズンも降格はないシーズンだが、昇格組の大きなチャレンジには目が離せず、コート内だけでなくホーム全体でB1を驚かせるアクションがチームの後押しには必要だ。コロナ禍の観客制限があることを想定すると、ブースター一人ひとりにも大きな役割がありそうなシーズンだ。
レバンガブースターの皆さんはその両巨頭が同時に北海道にいるという、なんて恵まれた環境、いや「CRAZY」な環境と言わせてもらいましょう。凄い旅路が始まるんだということに、本当に気付いていますでしょうか⁉ まだお気付きじゃない?? もうすぐ気付きますのでお待ちくださいね!!
折茂佐古共闘1年目ということで、おのずとバスケおじさん世代は力がこもるシーズンになることは間違いない。佐古HCは直前まで代表活動があったため、意中の選手を迎え入れるリクルートまで手が回せたかは不透明だが、佐古HCのリクルートがナンバー1プライオリティーだったはずで、今後は北海道のリクルートプログラムの進化が見られるでしょう。同じシーホース三河を古巣とする、橋本竜馬選手の存在はさらに大きくなりそうな予感。佐古賢一➡柏木真介➡橋本竜馬という凄い日本代表PGの系譜のことをバスケおじさんにもっと語らせてくれ!
若く躍動感あふれるウィングマン・山口颯斗選手が日の丸をつける日まで、佐古HCが導いてくれれば最高だし、可能性あふれる選手が多い環境が、今後Bリーグに入ってくる若い選手達に「成長したければ北の大地へ行け」となってほしい。開幕戦はAWAYで10月2・3日(土・日)広島vs北海道(広島サンプラザホール)と、かつて佐古HCが率いた広島との対戦となり広島ブースターがどのような形で迎えるかは楽しみだ。
気になるのは強度の高い秋田ディフェンスを維持するために、必要となる高い頻度のサブ(選手交代)。ゲームクリエイトもできる川嶋選手だが、そのキャリアで出たり入ったりしている試合を見た記憶はなく、自分のリズムを持っている選手なので、サブの連続のなかでも同じリズムを秋田にもたらせるのかは見てみたい。
また秋田のインサイドを献身的に支えていた、カディーム・コールビー選手の復帰のタイミングは気になるし、その時をスタンディングオベーションで迎えてあげたいが「んなことは分かってるよ!」と、わざわざそんなことを言うこと自体が秋田ブースターには野暮なコメントか…あらためてロスターを見てみて、このメンバー相手にフロントコートまでボールを運ぶ対戦相手のガード陣は嫌だろうなと思いました。
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